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07「服を買いに行くための服が無い、という話」


「まず前提として言っておくがの、我は聖剣ではない」

「は?」


 なんて?


「全知なる神剣よ。聖なる剣ではなくての」

「なんでソレが今は聖剣扱いになってるんだ?」

「大聖宮の愚者共が聖剣の方が箔が付くとかくだらん理由での」

「そりゃまたなんとも」


 ひどい話があったものである。


「まあよい。それより質問の答えじゃな。我の主たるおぬしが成長し、魔王を斃すこと自体は時間がかかるが不可能ではなかろ。じゃが次の魔王が後を継ぐがの」


 超意味ねえな。


「魔王を斃さずに、巫女長とかを納得させるのは?」

「不可能じゃ。あれらは己が正義を(たの)みとしておるゆえ」


 どおりで話の通じないわけである。


「おぬしにかかった手配書も撤回されまいよ」

「ふーん。困ったね」

「言うほど困ってなさそうじゃが?」

「ムニスがいてくれるんだ。大抵のことはどうにかなるだろ?」

「むう。照れるではないか」


 あら可愛い。神剣も照れるんだな。

 けど照れてるとこをじっと見てるのもなんか悪い気がして、俺は天井に視線を向けた。


「そのうえで、世界を救う気はない俺はこの世界でどう生きたものかなあ、と」


 俺のぼやきを聞いてムニスは笑う。 


「くふふ。面白いのう」

「なにがだよ?」


 なんか変なこと言ったかね。


「タクシが、じゃ。おぬしは賢いのか馬鹿なのかさっぱり分からぬ。ゆえに面白い」

「ほめてねえな。ま、今日は疲れたし寝よ。ベッドはひとつで俺らはふたりか……。ベッドはムニスが使えよ。俺は床でいいから」

「我は添い寝でも構わんぞ」


 そんなことをのたまうムニスの表情は幼女の癖に妙に色っぽかった。


「俺が構うの! 神剣だろうと全裸幼女と同衾できるか!」

「変な所で真面目な奴じゃの。今日のところはまあよかろう。ところで明日、我の服を買いに行かんかの?」

「それは大賛成」


 全裸の幼女を連れまわす趣味は無い。あと俺ももうちょいマシな服が欲しい。割と切実に。





 で、朝。

 寝て起きて気が付いたことがある。


「なあムニス。オマエの服買いに行きたいんだけどさ」

「うむ。昨日も言うたが我も服は欲しいのう」

「それがだな?」

「うむ」

「お前が服を買いに行くために着ていく服が無い!」

「これは盲点!」


 俺がそう言うとムニスは楽しそうに笑った。

 いや、笑っている場合じゃないぞ。


「それに、タクシの服もかなりひどいものだしの。そんな恰好でで大金持って全裸の幼女連れて服を買ってたら目立って仕方なかろうな」

「いや、目立つというか逮捕だろ、即逮捕」

「では、どうするのだ?」


 どうしようか?


「全知ならなんかいいアイデアあるかな、って」

「タクシよ。全知とは全てを知るものであって全ての問題に対処するものではないのだ。全知は全てを知るがゆえに選択をせぬ」


 持って回った言い方をする神剣である。


「つまりどういうこと?」

「自分でなんとかせい、ということだ」

「そういうことね。完璧に理解した」



 というわけでちょっと作戦を考えてみた。

 作戦1 ムニスには聖剣状態になってもらって、俺が二人分の服を見繕う。

 作戦2 ムニスが俺の服を着て二人分の服を見繕う。その間、俺は宿で全裸待機。

 作戦3 宿にあるシーツとかを買い取って、この場で繕う。


「作戦2が一番マシかなー。でも、それなりに悪目立ちしそうだよな」


 うーん。こーゆー困った時によくあるのは――


「魔獣が出たぞー!」


 宿の外から悲鳴と怒号。


「お! きたきた! これだよこれ。こういうのでいいんだよ。お約束的ご都合主義万歳だ!」

「タクシ、何を言うておる?」

「サクッと魔獣を狩って謝礼を貰おうって言ってるんだよ!」

「……おぬし、本当にすごいのう」

「お、俺ってもしや全知越えちゃってる?」

「褒めてなどおらんわ。愚か者ほどすぐに調子に乗るものじゃ。少し慎め。行くのじゃろ」


 お小言をくれつつ神剣モードに変化したムニスを手に取り俺は宿を飛び出した。

 


 以下、次回! 魔物退治の御礼は服でひとつどうぞ!


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