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63「突撃! となりの暗殺者ギルド!」


 中央自治区の町はずれのとある建物の地下階層。

 蜂の巣をつついたような大騒ぎになっている。

 無論、俺たちのせいで。


「おい、何がどうなってる!」

「商工ギルド会の依頼のために半数が出張っており標的の護衛と交戦中。それとは別に我が本部への襲撃者の迎撃に追われています! 一階は既に突破されました!」

「襲撃者はどこの馬鹿だ! うちは暗殺者ギルドだぞ!」

「何者かは分かりませ――」

「ていっ!」


 音もなく背後に立ったオースの手刀が首筋を打ち、報告していた男が失神する。


「誰だ貴様っ!」

 部屋の最奥、立派な執務机に居た男――おそらくギルド(マスター)――が誰何の声を上げるが、

「こんばんはー」


 手刀を構えたままひらひらと振って挨拶するオースに対して、


「死ねっ!」


 男はナイフを投擲した。

 オースはナイフを素手で難なく受け止めるが、


「馬鹿め! そのナイフには麻痺毒が」


 塗布してあるんだろうね。だってナイフぬらぬらしてるもん。

 だが相手が悪かった。


「私に毒は効かないですよ~」


 元々剣の切っ先だもんなあ。効かないわなあ。

 つまらなそうに投げナイフを捨てたオースがいつもの「雑」な動きで男に迫る。

 神速の掌打が顎を穿った。


「っ!?」


 その一撃でギルド長らしき男は脳震盪を起こし気絶した。

 のを、俺は後ろで見ていただけ。うーん、らくちんである。






 暗殺者ギルドにあった拷問部屋。

 椅子にギルド長らしき男を座らせ、手足は備え付けのベルトで固定している。

 ついでに目隠しも。便利な椅子だなオイ。


「おーい、起きろ」


 ギルドマスターの頬を強めにペチペチと張る。


「ぐっ」

「見たこともない道具がいっぱいですねお姉様ー」

「悪趣味極まりないの」

「二人ともちょっと静かにしててくれ」


 俺は拷問道具で遊んでいる二人に声をかけてから、ギルド長に向きなおる。


「なあ、ギルド長さん。誰に頼まれて宿屋を襲撃した?」

「言うと思うのか?」


 うん、まあ、そうだよな。プロ意識ってやつね。


「アンタらがやってきたことと同じことをするだけだよ、俺は。体に聞くだけだ」


 そう言ってやるのと同時、小枝を折るような音。

 ギルド長の悲鳴。


「うるせえな。まだ言わない?」

「……ふ、ふざけやがって! 殺すぞ!」

「まだまだ元気だな。じゃあ次行ってみようか」


 俺は隣の薬指に手をかけた。

 また上がる苦悶の声。


 だからうるせえって。

 その辺に転がっていた布を丸めて口に突っ込んでやる。


「話す気になったらアピールしてくれ。朝まで時間はたっぷりある。指もまだたくさんあるしな。ま、気長にやろうか」


 俺は酷薄な笑みを浮かべ中指に手をかけた。



 以下、次回! さて、いつまでもつかね。

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