50「甘い考え事」
俺たちに用意された客間は立派なものだった。ただベッドがひとつしか用意されていないことを除いては、だが。やたらデカいベッドなのでギリ許せるが、これはわざとだな。
とまあ、それはさておき。
「アベルに恩赦を与える見返りかあ」
天蓋付きの阿保みたいに豪華なベッドに寝転がりその天蓋をぼんやり眺めながら考えていると、
「まだ考えておったんじゃの、主殿」
ベッドの隅にちょこんと座っているムニスの呆れ声が聞こえる。
「んー。なんかいい手はないかなあ、とね」
「考える必要もあるまいよ。あの不埒者は死刑。以上じゃ」
「ムニスは魔王サマの判断を支持するわけか」
「当然じゃの。信賞必罰は組織維持の根幹じゃからして。しかも親殺しとなれば未遂とはいえ酌量の余地はあるまい」
正論オブ正論。返す言葉もありません。
「そもそも」
ムニスがベッドに上がってきた。
こら、馬乗りになろうとするな。
妨害する俺と微妙な攻防をしながらムニスは俺に問う。
「タクシがアレをそこまで気にする理由はなんじゃ? 義理があるのはわかるがそこまで拘るのは何故か?」
「例えばだな、俺が錯乱してワケワカランことをはじめたとしたら、オマエはどうする?」
「ふむ……。前提が曖昧じゃが、そうじゃの。諫言はする。が、最終的にはおぬしの判断に沿うじゃろうの。道を外すというなら共に行こうではないか」
「恥ずかしいこと言うやつだな」
「言わせたのは誰じゃ」
ムニスは唇を尖らせた。くそ、可愛いなこいつ。
「悪い悪い。茶化すとこじゃないよな。まあつまりそういうことだ」
「む?」
「今ムニスが言ったことと同じことをレンドルフたちも考えてると思うんだよな」
ムニスは俺の顔をまじまじ見据えて、それはそれは深く溜息をついた。
「甘い。甘いが、それが主殿じゃものな」
ムニスは全て諦めたように頭をポスっと俺の胸に乗せてきた。
「せいぜいよく考えてみるがよかろ」
「おう」
「主の剣として、どこまでも付き合ってやるからの」
はい、ありがとうございます。
以下、次回!
次から第四章です。引き続きよろしくお願いいたします!




