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05「ゆうしゃはにげだした! しかし、てはいをかけられてしまった!」


「勇者よ! 私は信じておりました!」

「えーっと」

「魔王の誘惑を跳ね除け退けるとはさすが伝説の勇者です」

「単に雇用条件聞いて合わなかっただけなんすけどね。そんで、聞きたいんですけど巫女長、いいっすか?」


「はい?」


「こっち側に着いた場合の報酬っていかほど? 魔王討伐した場合とか」

「魔王を討伐した暁には貴方の名は未来永劫歴史に刻まれることでしょう」

「ええと、栄誉とか名誉とかはいいんで。なるべく具体的金銭的なヤツでオナシャス」

「勇者が金でなびくというのですか!?」

「勇者もメシ食わないと死んじゃうし、さすがにこのカッコで勇者です、ってワケにもいかんでしょう。もうちょいマシな服がまず欲しいです」

「むむ」


 むむじゃねーよ。


 まあ、別に魔王とやりあうつもりは元々ないんだ。最低限の路銀らしきものは女神から得ているし、最悪、褒賞の約束無しでもココから出してもらえればそれでオッケーだ。


「わかりました!」

「えっ、何が?」

「勇者が魔王を斃した暁には、大聖宮の巫女を一人差し出しましょう! 勇者の好きにして構いません! 売り払おうが手籠めにしようが目をつむりましょう!」


 無茶苦茶言い出したぞこのオバハン。現物支給(しかも巫女さん)とか!


「生贄みたいに言わない! 俺が魔王みたいにになってるじゃん!」

「もちろん、選択する際は私でも構いません」


 いや、オバサンは結構です。頬染めてないでさ。

 どうしよう、話通じねえぞこのBBAもとい巫女長。





 よし、逃げよう。

 決めた。


 価値観が違い過ぎて話が通じないのだから仕方ない。

 俺はダラダラ生きていきたいのであって、魔王討伐がしたいわけじゃない。

 となるとこの聖剣なんだが、置いていくべきか?


「あれ?」


 なんか手に吸い付いて離れねえ。握った時もそうだったけど。

 付いてくるなら、まあいいけど。どうなっても知らんぞ。

 俺は一度折れた聖剣をひゅん、と振った。


 ざわめく巫女さんたちをよそにてくてく歩いて聖剣で斬り裂い――てしまっ――た壁際までたどり着く。

 おお、結構高いなここ。

 一応挨拶くらいはしておこうか。

 くるり、と背を向けて、


「ほんじゃま。俺はこれでオサラバです」


 そのまま体を九十度後ろに傾け、切り裂いた壁の隙間から落下開始。


 この世界の物理法則がどうなってるかは知らんが、聖剣があるんだから死にはせんだろ。上から、巫女長の金切り声が聞こえるが、風の音が邪魔をしていて何を言ってるかまでは不明。まあ、ろくなことじゃあるまい。


 ここは逃げの一手だ。

 さっさと大聖宮とかいう激ヤバエリアから脱出しよう。




 結論から言うと、脱出して正解だった。

 後で知ったがソッコーで聖剣強奪の下手人として手配かけられてたみたいだ。

 強奪って。

 ちゃんと自力で抜いた(折った)じゃん。

 抜いたら勇者って言ったのはそっちじゃん。

 それが下手人。

 ひどい話もあったもんである。


 さて、これからどうしようか。



 以下、次回! 聖剣と俺の逃避行がはじまる!


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