48「知らないうちに空前の偉業を達成していたらしい」
謁見を求めたのはこっちなんで、とりあえず聞きたいことを聞いてみる。
「まず確認なんだけど、魔族はこの大陸をどうしたいんだ?」
「先代は大陸制覇を掲げていた。余は違うがな」
魔王が代替わりすると政策も変わるのか。どれくらい変わってるのか、さて。
「でも俺が召喚? された時にすぐにワイバーンの大群送ってきたじゃん。アレについては侵攻じゃないのか?」
アレのおかげでムニスをへし折ったことを有耶無耶にしつつ逃走できたので、感謝しかないといえばないのだけど。まあ、気になったので確認したい俺である。
「聖剣の勇者が人間側に付けば東西のパワーバランスは一気に傾く。威力偵察と勧誘を兼ねて行った。侵攻と言うほどではない。人間も辺境領の警戒線をしばしば越えているからな。お互い様だ」
なるほどね。まあ一応納得できなくはない。
「警戒線を越えるどころか殆ど手ぶらでここまで到達した人間は貴様だけだ」
「おお、空前の偉業達成だったか」
実績解除の報酬はないのかね。
「褒めてはおらん」
ソウデスカ。
まあいい、話の続きだ。
「先代とは違う今の魔王サマは大陸制覇じゃないなら、何を望んでる?」
俺の問いに対し、魔王サマは気怠げに首を傾げてみせた。
「余の望みを言えば貴様が叶えてくれるとでも?」
「いやいや。そこまでの力は持っちゃいない。聞きたいだけだよ」
「ここに至るまでに立ち寄った諸侯たちは皆、貴様のことを評価していたぞ」
「そいつは光栄。デモ過大評価デスヨ?」
いやほんと。ムニスとコーネリアがいなかったら何度死んでたか分からん。
「つかみどころのない男だな、貴様は」
「でへへ」
「主殿、褒められておらんからの」
全知にまで言われなくてもわかってますぅ!
魔王サマは視線を宙に彷徨わせて、そうだな、と呟いた。
「余の望みはな、魔族が平穏に暮らせる世界よ。辺境領の警戒線などなくても何の問題もないくらいに平穏な世を望んでおる」
「領土的野心は無い? 最初話した時、俺に人間の領域の半分の支配権がどうの、って言ってたじゃん」
「東が攻めてくるなら迎撃する。その結果として領土拡張がなれば、だな」
「うーん戦国時代的だな」
「基本的には領土的な野心はない。余は平穏を愛し、望んでおる。なのでタカ派の魔族には疎まれておるのだがな」
外部の、しかも人間の俺に対してやれやれとばかりに溜息をついて見せる余裕はあるんだな。でも実際大変なんだろうな、魔王サマも。
以下、次回! いやはや、魔王稼業も気苦労が多そうである。




