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47「魔王様はなんだかご機嫌が麗しい」


 魔王サマの住む宮殿はまあ大層立派なものだった。

 宮殿までは複雑な道を辿り、馬車じゃなかったら途中で休憩が必要だっただろう。


 宮殿内は一転、すっきりした造りで正面の入り口からまっすぐに伸びた廊下を進み、二階に上がったその先が謁見の間だった。

 俺、ムニス、コーネリアの三人は謁見の間の前の衛兵にとおせんぼされていた。


「タクシ・ワララセ様ですね。陛下への謁見に際して武器をお預け頂きたく」

「はいよ。後で返してね」


 シェイル謹製の小剣を鞘ごと預ける。

 だが、衛兵は謁見の間の扉を開けてはくれない。


「まだ何かある?」

「お連れ様は別室でお待ちいただけますか?」


 まあ、そりゃランドルフを含め諸侯からムニスについての報告は上がってるわな。そうじゃなきゃザル過ぎる。


 だが、


「ムニスを武器扱いしないで欲しいんだけど、駄目?」

「陛下の安全確保が私の任務ですので」

「いいからどきやがれですわ!」

「小娘、黙っておれ。タクシよ。我は構わんぞ」

「俺が構うんだなあコレが」


 などとぎゃあぎゃやっていると、


「皆一緒で構わん。通せ」


 扉の向こうから()()()()()がした。

 衛兵は扉の方に身体を向けて姿勢を正し、


「陛下! しかしながら! 御身のご安全を――」

「――余が赦すと言ったのだ。通せ」

「はっ!」

「迷惑かけたね。申し訳ない!」


 ごめん! と衛兵の彼に両手を合わせた。


「いえ、お帰りの際にはこちらの小剣は必ずお返ししますので」

「ありがとう。よろしく」


 ようやく入った謁見の間、くっそ広い。

 一番奥の高い位置にある玉座にいるのが魔王サマか。えらい若いな。


「よお。久しぶり。前の時は失礼したな」

「二度目だな、聖剣の勇者よ」

「だから勇者じゃねえって!」


 銀髪紅眼、純潔の魔族。

 その王に対して俺はまず最初に名乗った。


「俺は勇者じゃないし、こいつも聖剣じゃない。俺は渡良瀬卓志。タクシでいい」

「我は全知。全知の神剣ムニスじゃ」

「ほう。聖剣ではない、か。余が魔王、名をサターニアという」


 えらい若い魔王だな。

 しかも女の子だ。

 歳はコーネリアくらいか、と思ってたら、


「コーネリアも、元気そうだな」

「陛下、お久しぶりですわ」

「幼年学校の頃のようにタニアと呼んではくれぬか」

「お戯れを」

「臣下の礼、か」


 つまらなそうに魔王サマ――サターニアは言う。

 なんだ、同世代なのね。昔と今では立場が違い過ぎる、か。コーネリアもその辺はわきまえるんだな。


「まあよい。さて、聖剣の勇者ならぬ神剣の主タクシよ。余に何用か? 以前は余に仕える気はない、と言っておったと記憶しているが?」

「今も仕える気はないよ。今日は魔王サマと話がしたくて来たんだ」

「話? 余が聞くだけの価値がある話か?」

「どうかな。それは話をしてみないとなんとも。俺の大事なものと魔王サマの大事なものが似てたら嬉しいんだけどな」

「今日の余は機嫌が良い。聞こう」


以下、次回! 魔王サマの器がデカそうなところは大変好ましい。

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