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46「道中色々ありましたが、魔王直轄領に到着しました」


 コーネリアの操る馬車はこれまでよりもしっかりと整備された街道を往く。


「流石に中央諸侯領じゃの。しっかりと手入れされておる」


 んー。また知らん言葉が出てきたぞ。


「ムニス先生ぇー、中央諸侯領ってなんすか?」


「おぬし、教えを請う時はそれなりの態度を取らんか」

「アッハイサーセン」

「……まあよい。中央諸侯領とは、大陸西部の真ん中あたりを分割統治している爵位持ちの魔族の支配領域の通称じゃの。小娘のルッヘンバッハ家は中央諸侯領のそのまた東、大陸中央の中央自治区に隣接する辺境領を守護しておるわけじゃ」

「守護、ねえ。何から守ってるんだ?」

「人間の脅威からに決まってますわ!」


 と鼻息荒く割って入ってきたのはコーネリアだった。


「中央自治区はともかく東の小国連合は大聖宮の言いなりじゃからの。いつ攻めてきてもいいように警戒線を引いておるのよ」

「よく、知ってやがりますわね」

「我に知らぬことなどないと知れ、小娘」


 ドヤ顔のムニスに対して、コーネリアは意地の悪い笑みを浮かべ、


「ではこの先はどなたの所領か――」


 問題を出そうとするのだが、


「道なりに行けば最西端の魔王直轄領まではみっつの所領を通過するのぅ。順にヴィーラー男爵領、シュミット伯爵領、キースベルト大公領かの」


 食い気味に正解されて肩を落とすのだった。相手全知だからしゃーない。


「や、やりやがりますわね」

「ふふん。我を試そうなど百年早いわ、小娘」

「コーネリアですわ! 小娘呼ばわりはやめやがれですわ!」

「オマエら仲良くしてください」


 ほんとにお願いします。いやマジで。





 ――ルッヘンバッハ家を発って数週間。

 えー、中央諸侯領は無事通過しました。


 嘘です。


 各所領でトラブル続出でした。

 コーネリアのおかげでここまで来れたけど、コーネリアのおかげで何度か酷い目にも遭った。


「ここが魔王様の直轄領ですわ!」

「やれやれ、ようやっと着いたのぅ」


 南北にどこまでも続く城壁のおそらく真ん中。


 でっかい門がある。


 門は開かれているが、衛兵がぱっと見で十人以上いる。


「大歓迎だなオイ」

「主殿も随分肝が据わってきたの」

「ここまで色々ありましたんで」

「ではいきますわ!」


 コーネリアが馬車を門の前まで進めると、衛兵たちがずらりと並んで道を塞いだ。


「魔王様の直轄領に何用でしょうか、お嬢さん」


 衛兵長らしきオッサンが前に出てくる。

 こちらは対応をコーネリアに一任してある。魔族の領域だしな。


「私はルッヘンバッハ家当主名代、コーネリアですわ! 魔王様に面会したく参上したんですわ! これが当家当主の書状、それからキースベルト大公閣下から頂いた許可証ですわ。まだ他に何か必要なら言ってみやがれですわ!」

「お連れ様は人間のようですが? 人間を魔王様の直轄領に招き入れる、と?」

「……ああ、これですわね。タクシ様が仰っていたのは」


 と、うんざり顔になるコーネリア。

 そうそう。やっとわかってくれたか。経験に勝る教育無し、だな。


「よろしくて? 魔族だろうと人間だろうと通過に必要な書類は揃えています。いいからとっととどきやがれですわ!」


 コーネリアの剣幕に驚いたわけではないだろうが、衛兵長は一定の理解は示してくれた。にこり、と渋い笑みを浮かべ、


「威勢のいいお嬢さんだ。一度確認を取りますから、しばしお待ちいただきたい」

「わかりました。できるだけ急いでくださいですわ」

 

 以下、次回! えらい、コーネリア。よくがんばった! 感動した!


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