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33「ナンチャラ物語 ~旅の仲間~」


 うーん。御礼ねえ。

 あ、そうだ。


「確か帰り道って言ってたよな」

「ああ、そうだが」

「じゃ、レンドルフの家まででいいから俺とムニスを乗せてってくれ。俺たち、西に行きたいんだ」


 俺が言うと、魔族の男は「正気か!?」と叫んだ。


「あー、びっくりした。急にデカい声だすなよな」


 心臓に悪い。


「驚いているのはこちらだ。西が魔族の領域だとわかって言っているのか?」

「知ってるよ」

「貴公、馬鹿か?」

「言い方ぁ」


 なんかみんな俺に対して口が悪くない? 気のせい?


「魔族の領域に人間が入り込んで命があると思うのか?」

「俺、今、魔族と話してるけど全然元気に生きておりますけど」

「……頭が痛くなってきた」

「おお、大丈夫か? 疲れが出たんだな。一旦休むか?」

「誰のせいだと思っているのだ。――ムニス嬢!」


 馬と戯れていたムニスが首だけこちらに向けた。


「なんじゃの?」

「このタクシという男は……、一体何なのだ」


 苦虫を噛み潰したような顔のレンドルフに、ムニスはただ笑うだけだった。


「理解不能かの。それがタクシよ。我にもよう分からん」

「変人扱いやめてもらえます? 目の前でやられると若干傷つくんですけど」

「くっふっふ」

「……わかった。乗せて行こう。我が家までになるが、それでいいか? 目的地はどこなのだ?」

「魔王サマの居城だな」

「なん……だと……!?」


 いちいちリアクションのデカい男である。

 絶句しているレンドルフの目の前で俺は深呼吸の仕草をしてやる。

 しばらく口をパクパクさせたあと俺に合わせて深呼吸をしたレンドルフは、


「……念のため聞いておくが何をしに行くのだ? まさか魔王様を討伐」

「できると思う? 俺なんかに? そんなに魔王サマって弱いか? ただ茶でも飲みながら話をしてみたくなっただけだよ」

「面識があるのか? 魔王様と?」

「一回ちょろっとだけ喋っただけだけどな。悪い魔王サマじゃなさそうだったし。なんとか話くらいはしてくれんかな、と」


 俺の実にいい加減な説明を真面目くさった顔で聞いた後、レンドルフはひとしきり悩んでから頷いた。


「……わかった。貴公は恩人だ。私にできる限りの手助けを約束しよう」

「やったぜ! よろしくな!」


 俺が右手を差し出すと、レンドルフはがっちりと握り返してくれた。これよこれ。

 馬遊びに飽きたのか、こちらに戻ってきたムニスは馬の涎でベトベトになった手を俺の服で拭きながら、


「レンドルフ殿」

「ムニス嬢、何か?」


 ひどく真面目な表情から一転、ニヤニヤ笑いでこう言った。


「魔晶石は全て使い尽くしたので、馬車を落とすともう回収できんからの」

「う、うむ。そうだな。以後、十分気を付けよう」


 顔真っ赤。レンドルフもムニスには形無しだな。


 以下、次回! レンドルフwith馬車が仲間になった! やったぜ!

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