31「魔結晶について語ってみようか」
握手も済んだところで早速質問タイム。
「んで、レンドルフさん。どーしてこんな有様になったんだ?」
「呼び捨てでいいぞ、タクシ。私もそうする」
距離の詰め方が一足飛びだな。握手する前までの警戒感はどこいったんだ一体。
その方が俺も気楽でいいんだけどさ。
「了解。んで、理由は?」
「不注意……だな」
おいおい。
「よそ見運転?」
俺の問い掛けに対し、明後日の方向を見ながらレンドルフはこうのたまった。
「いや、居眠り……だな。ちょっと疲労でウトウトとな」
「おいおい、この魔族のにーさん、ムニスよりポンコツだぞ」
「誰がポンコツだ!」/「誰がポンコツじゃ!」
「おお、ハモッた」
仲良いなオマエら。
それはそれとして。
「この馬車で何してたんだ? つーか、これ行き? 帰り?」
「帰り道だ。魔結晶を売りに中央自治区に来ていてな。その帰りにこのザマだ」
また知らん言葉だな。
「魔結晶ってなんぞ?」
素直に質問すると、レンドルフは信じられないとでも言うような顔で、
「知らんのか?」
え? この世界だと常識的なアレ?
ちら、とムニスを見ると真顔。口元がむにむにしてるので笑うのを我慢しているのがバレバレなんだが? オマエ、そういうのちゃんと教えとけよ。全知なんだからさあ!
「田舎者なもんで」
というか異世界人なもんで! 言わないけど!
「……知らないなら簡単に説明してやろう」
「サーセン! オナシャース!」
レンドルフからのありがたい申し出に俺は平身低頭する。
ありがたいんだけど、その馬鹿を見るような目やめてくれませんかね。
ついでにいつまでも笑い堪えてんじゃねえぞ全知。
「魔力の無いものでも魔法を使えるようにするための触媒だ。魔力を固体化、結晶化して作成するのだ」
あー、ソシャゲとかでよく配布されたり課金したりして買う的なヤツね。
「なるほど。それを中央自治区まで遠路遥々売りに来た、と?」
「そうだ」
「地元で売ればいいじゃん」
わざわざ転落事故起こすような距離を移動して売りに来なくても、と思うんだが。
「魔族に魔結晶は売れん。魔族には魔力などあって当然。生まれつき備わっているからな。必要なら自分で作れるものを買う者はおるまい」
「あー」
そっか。言われてみればごもっともな話ではある。
「くふふ、相変わらず足りん頭じゃの」
「うっせ」
「その点、人間は魔力の素養の無い者が多いからな。貴公も魔法は使えんだろう?」
「あー、うん。ムニス、俺って魔法使えるようになる?」
「ほぼ無理じゃの。才能が無いからの」
ホンマそのバッサリ斬ってくるのやめないか? 俺も傷つくんだぞ?
「俺の才能云々はまあいいわ。んで、完売した?」
「九割がた売れた。時期が良かったのでな」
「逆に言うと一割は残ってんのね」
「うむ」
「なあムニえもん」
「さっきからなんなのじゃその呼び方は」
「あ、ごめん。不愉快ならやめる。愛称というか困った時の頼り方というか」
「む。ならばよいがの」
ちょろいなあムニス。
「でさ、残ってる魔結晶でなんとかならんかね、この状況」
「本当に主殿は我頼みじゃの」
「分をわきまえてると言ってくれ」
「物は言いようじゃの」
「でへへ」
「照れるな。誉めとらん」
以下、次回! ムニスのファンタスティックテクニックが炸裂します!(たぶん)




