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23「神剣ムニスの『誰が強いか当ててみようゲーム!』」


 あのあと。

 すぐに闘技会の予選第一組がはじまった。


「ほれ、タクシよ。誰が残るか当ててみよ。これも修業のひとつと思うての」


 俺の気を紛らわせるようにムニスが言った。

 俺はありがたくそれに乗っかることにする。


「二十人くらいいるぞ」

「強者には強者の雰囲気があるものよ。主殿にわかるかの?」

「あのデカい斧使いのオッサンは?」

「あれは駄目じゃ。見掛け倒しよ」

「ムニスにはわかんのかよ」

「くふふ、あの真ん中に立っておる騎士鎧の男がおるじゃろ」

「ああ」

「他はよいから、あの男の動きから一瞬たりとも目を離すな」

「あの騎士鎧の男に何があるってんだ?」

「そろそろはじまるようじゃの。くふふ、アレはクロノスリッド流の使い手よ」

「!」


 開始の合図の銅鑼が鳴る。


 俺の頭の中にはクロノスリッド流の動きや技についての知識がある。

 初撃に特化した流派だな、と思った。

 実際に騎士鎧の動きを目の当たりにし、俺の感想は確信に変わる。


 予想よりも遥か遠い間合いからの瞬間移動のような踏み込み。勢いのままに上段から振り下ろされる斬撃。鮮血。仰向けに倒れていく一人目の被害者は何をされたかもわからなかったのではないだろうか。


 一人目が倒れるより、いや、そいつが血を吹き出すより先に騎士鎧の男は次の行動に転じていた。


 振り下ろした斬撃から足を踏み変える。(はや)い。構えを取り始めていた剣士の眼前にまたも瞬間移動。下段からの逆袈裟に斬って落とした。


 その後も騎士鎧の男は超高速の歩法と強烈な斬撃を以て周囲を圧倒した。

 自身を除く十九人のうち十五人は彼が斬り伏せていた。


「どうじゃの」

「すげえ」


 技も威力もだが、

「一切の躊躇がねえところが特に」


戦場(いくさば)で躊躇するのは素人かお人好しだけじゃの。主殿は両方じゃな。これは困ったの」

「うっさいわ」




 続いて予選二組。

 結論から言うと、第二組は一瞬で終わった。

 魔法使いの男の放った大爆発が全員吹っ飛ばしたのだ。


「大した技量じゃな。客席に被害が及ばぬように、ただし対戦者を確実に殲滅できるように魔力を調節しておる」

「とんでもねえな」


 ムニスが予選で即死と言っていたのを思い出した。


「あの男、魔族のようじゃの。フードで顔を隠しておるが間違いなかろ」


 そうか。東西いずれの権力にも属さないから魔族もこの自治区に出入りしてるのか。


「タクシよ、先程の騎士鎧の男とこの魔族が相対したらどちらが勝つと思うかの?」

「えっ」

「課題というやつじゃの。明日まで考えておくがよかろ」

「アッハイ」


 予選第三組にはドラコノース三刀流の男が出場していた。

 両手の双剣と背中の直剣を見れば俺でもわかる。


「あれもかなりの使い手じゃの」

「そうなのか」

「全知じゃもの。それくらいは見抜けるの」

「じゃあ、賭けたら丸儲けじゃないのか」

「結果の知れたことで稼ぐのも気が引けるし第一つまらぬ」

「そっか。全知も大変だな」

「くっふっふ」

「なんだよ」


 たまに急に笑い出すよなこの神剣()


「結果が分からぬことがこれほど面白いことだとは我も知らなんだ」

「だからなんの話だよ」

「我が主の話よの。おぬしの行く末は我にも分からん」

「だから抜かれたのか?」

「抜かれる気はなかったんじゃが、折られるとは思わなんだの」

「そうしないと奴隷労働だったからな。俺も必死だったんだよ」

「結局のところ聖剣泥棒の汚名を着せられたわけじゃがな」

「どうしたもんかね」

「さての。決めるのはおぬしじゃ」

「……わかってる。わかってるよ」



 そうこうしているうちに、予選第三組の開戦の銅鑼が鳴った。


 第二組のような開幕ブッパは無かった。

 互いに牽制して動きの無い展開に観客からは怒涛のブーイング。

 触発されてあちこちではじまる小競り合い。


 そのうちのひとつを俺はずっと視ていた。

 小剣二振りを構え、背に長剣を背負った男。

 ドラコノース三刀流。

 彼はふたりを相手に一歩も引かず渡り合っていた。変幻自在に動く両の双剣は時に蛇のように絡みつき、時に竜の(あぎと)のように振り下ろされた。

 その動きは一見して不規則。

 だが、彼の流派の指南書が頭に入っている俺にはわかる。


 全て基本の型だ、と。

 基本の運足。

 基本の体捌き。

 基本の斬撃。

 基本の防御。


 それらを組み合わせている。

 ただし、即興で。そしてとんでもない速度で。

 どれだけ修練を積めばあの領域に辿り着くのか。

 気が付けば二人を斬り伏せ次の獲物へとするすると向かっていく。


 第一組の騎士鎧の男の瞬間移動のような動きとは異なる、速さを全く感じさせない動き。なのに気付けばもうそこにいる。


 これも基本の歩法だ。それを繰り返しているだけ。


 彼が進んだ後ろには斃された闘技者たちの血だまりができていく。

 彼は闘技場をぐるりと一周して、全てを終わらせた。

 ついに背中の長剣を抜くことはなかった。そこまでの相手はいなかったってことだ。


「どうじゃな?」

「すげえ」

「見えたかの?」

「ギリギリ、辛うじて、なんとか」

「再現できるかの?」

「あの域にはそうそう辿り着けねえと思う。けど、参考にはなった。ムニスのおかげでな」

「くふ。主殿は素直でよいの」



 以下、次回! 次は予選四組目だ。


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