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22「前座特別試合という名の惨劇」


 くそったれ。何が特別試合だ。


「ふざけんな!」 


 蹴とばすように席を立ちかけた俺は、


「落ち着け」


 とムニスに制された。柔らかい掌が俺の手首を掴んで離さない。


「胸糞悪いのは断然同意するがの、ここでおぬしが乱入しても何も解決せんぞ」

「でも!」

「今のおぬしの力量では何もできんと言うておる。当初の目的を見失うでないわ」

「ぐっ」


 俺は席に腰を落とした。くそが。


「おぬしは何のためにこの場におるんだったかの。言うてみよ」

「実際に、剣の達人の動きを見て、覚えるためだ……」

「そうじゃの。だから今は堪えよ」

「……」

「まあ、とは言ったものの選択するのはおぬしじゃからの。どうしても渦中に飛び込んでいくというなら止めはせんし、我はおぬしの剣となろう」


 正論だ。これ以上ないくらいの。

 その上最後の最後に俺の気持ちを汲んでくれるムニスは優しい神剣だ。

 俺なんかにはもったいないくらいの。


 俺は俺の無力が悔しかった。

 こんな気持ちになるなんて思わなかった。


「わかった。今は、何もしない」


 ……今は、な。


 そして、前座試合開始の銅鑼が鳴った。

 俺は目を閉じ、耳を塞いだが、超満員の観客の熱狂は容易く耳に入ってくる。

 客席からの怒号と歓声。

 繰り返される剣戟。

 悲鳴のような咆哮。

 殺せ、殺せ、という声。

 俺は薄目を開けた。

 謝罪混じりの絶叫。

 最後に、断末魔。

 断末魔の悲鳴を掻き消す更なる歓声。

 くそったれだな。

 俺は今日のことを絶対に忘れない。絶対にだ。



 以下、次回! 

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