21「闘技会、開催!」
俺はシェイルにこれまでの経緯をざっくり説明した。
「――とまあ、そのようなわけで」
「そもそも折られたことなど我は気にしとらんからの」
「ムニス様がそう仰るのでしたら。この小僧、異世界人でしたか……」
とか言いつつシェイルはものすごい目付きで俺を睨んでいる。
ムニスが取りなしてくれなかったらひどいことになってたに違いない。
「時にシェイルよ、次の闘技会はいつかの? 街に人も多い。そろそろじゃと見当をつけておるのじゃが」
「ムニス様の慧眼、感服いたしました。開催は五日後です。予選会で一日、代表者勝ち抜き戦に一日の二日間開催となっております」
「ふむ。タクシの小剣二本、間に合うかの?」
「お任せを。ムニス様のご依頼とあらば」
「シェイルさん」
「なんだ小僧」
うわー、やっぱり対応の格差がすげえ。
「とりあえず剣の練習したいんで、何か貸してくれない?」
「……図々しい小僧だ。まあいい。そこらに転がっている剣は売り物にならん失敗作だ。好きに使え」
「ありがとう! 助かるよ!」
「別に、大したことではない」
俺は早速小剣二本借り受けた。
「じゃあ俺は表で練習してるから」
「型は頭に入っておるかの?」
「ばっちりだ! ありがとなムニス」
「よいよい」
外に出ていく俺の後ろで、ムニスとシェイルの声が少しだけ聞こえた。
「どうじゃな、我の主は? なかなかであろう?」
「態度は悪いですが、仁と礼の心は見受けられますな」
「もうちょっと素直に褒められんものかの」
「なまくらでないかはまだわかりませんので」
誰がなまくらだ! 聞こえてるぞ!!
――それから五日後。
闘技場は満員御礼。立ち見も出るほどの盛況ぶりだ。
組織委員会らしきオッサンがVIP席らしきところに姿を現した。
でっぷりと肥えたハゲオヤジの声が響く。
『ようこそ中央自治区名物の闘技場へ!』
騒がしい観客の声を上書きする大声。
「ムニス、これって」
「声量拡張の魔法じゃの。あの男の隣におるじゃろ、魔法使いが」
「やっぱり魔法なのか。この世界で最初に体験する魔法がアレかー」
もっと派手な攻撃魔法とか見たかったな。
『今回の闘技会は第九百九十九回目の開催となります!』
年四回開催したとして三百年近くやってんのかよ。
そりゃああのハゲも私腹をブクブク肥やすわけだわ。
『形式は通常通りです。一日目に予選として八組に分けた集団戦闘にて勝者を選出し、各組の勝者二日目の勝ち抜き戦へ出場していただきます』
聞いてた通りの内容だな。
『今回は予選の前座として特別試合をご用意しました。禁じ手無しの真剣勝負を存分にお楽しみいただき、また存分にお賭けいただきますようお願いいたします!』
前座?
中央の円形闘技場には二人の獣人が既に姿を現していた。
似たような体格。食い物が悪いのか痩せ細っている。
似たような表情。どちらも顔面蒼白だ。
片手に剣、片手に楯。
ボロボロの貫頭衣の上から簡素な革鎧を身に着けている。
どう見ても奴隷剣闘士だ。
「ムニス、あの剣。刃が潰してなくないか」
「そうじゃの」
『それでは! 我が闘技場が所有する奴隷剣闘士の生死を賭けた戦いをご照覧荒れ!』
なんだと!?
以下、次回! 悪趣味にもほどがあるぞオイ。




