02「目指せも何も、転生したら既に目的地でしたが全裸です」
えー、タイトル通りです。
到着してます。異世界。そして目的地。
異世界転生? 転移? まあどっちでもいいや。それになんか不具合があったのかしらんが、某シュワちゃん演じる某サイボーグ役の某登場シーンのように全裸ですどうしよう。
腰紐に布袋がぶら下げられて、じゃらじゃらいってる。おそらくこの世界の通貨が入っているはずだ。これが「多め」に自称女神が容易した金子だろう。
このままサムズアップして魔法陣に沈んで元の世界に帰れたら最高なんだが。
自称女神の言っていた聖剣の間らしき場所に俺は居た。
剣が一本ぶっ刺さった台座と、大勢の巫女だか女官だか。
ずらりと並んだ彼女らは、きゃー! とか喚いている。いや、喚きたいのはこっちである。
まずは服をくれ服を。せめて布を。
「全裸降臨とはまさしく伝承通りです、勇者よ」
唯一近づいてきた、位階の高そうな、歳の割には随分と露出度高めのオバさんもといご婦人がそんなことを言った。大丈夫かそのどうかしてる伝承。あとその恰好も。
「さあ、選ばれし者のみが抜くことを許された聖剣を抜くのです、勇者よ」
「いや、その前に俺のエクスカリバーが抜き身のままなんで服ください。服」
「きゃー! なんで勃ててるんですか!」
「自然現象だからしょうがねえだろ! いいからとりあえず服ちょうだい!」
「ふう、やれやれだぜ」
与えられたのは貫頭衣ってやつだろうか。歴史の教科書に載ってそうなアレ。布の真ん中に穴が空いてて、そこに頭を通してあとは腰ひもで止める、みたいな原始的なやつ。服のご先祖様みたいなシロモノだなこりゃ。下着はくれなかったのでスースーする。蒸れなくていいが現代人には少々心許ない。
「あなたのモノも収まりましたか?」
「巫女長、言い方! 言い方が!!」
と周りの巫女さんがツッコミ入れてる。
「ほんとにな」
薄着の若い巫女さんをなるべく見ないようにしつつ(また勃つとアレなので)、
「で、聖剣は?」
「あちらです」
「ああ、やっぱり。あの台座の」
「全裸降臨の勇者様であれば当然御存じかと思いますが、聖剣を抜く機会はひとりにつき一度のみですので、心して挑んでくださいませ」
えーと、初耳なんだが?
「一応確認だ」
「なんなりと」
「抜けなかった場合、どうなるんだ?」
「勇者を騙る犯罪者として、強制労働三百年の刑に処されます。具体的には地下で巨大な柱に取り付けられた棒を延々回し続けることになります」
「昔漫画で見た絵面だなあ」
ワンチャンスで勇者か犯罪者か。
このギャンブル、分が悪すぎない? 近代麻雀の漫画でももうちょい条件緩いわ。
「え、今まで挑戦した奴等ってバカなの?」
「誰もが各地で名を馳せた勇士だったのですが……」
その勇士を犯罪者扱いしてやんなよな。
だいぶやべえぞこの巫女長。
以下、次回! 抜くや、抜かざるや……!(聖剣を)