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18「奴隷剣闘士という存在について」


 往来でずっと立ち話してるのもアレなので、とりあえず中央自治区一番の名所であるところの闘技場にやってきた。


 入場料はなんと無料。


 円錐台をした外観の内側はまあ思っていたとおりすり鉢状になっていて、中央で闘技者たちが戦っている。客席の埋まり具合は半分ちょいといったところ。あんまり盛り上がってないように見える。


「どうやって運営成立してんだココ」

「タクシは賭け事はやらんクチかの?」

「あー、まあお遊びとしてはやったことあるけど、金を賭けたことはないなあ」


 そんなに余裕のある生活してたわけじゃなかったしな。


「賭け事には控除率というのがあっての。賭けられた金の総額からある程度の割合を胴元が抜くのじゃ。残った額を賭けに勝った者たちに分配するのよ。そのようにして賭場は運営されておる。闘技場(ココ)も同じじゃの」

「勉強になるわー。さすが全知」

「くふふ。誉められて悪い気はせんがの、主殿が無知なだけじゃろ」

「ぐぬぬ」

「ま、己が無知に自覚的なだけ上等よの」


 無知の知ってヤツね。


「んでさ、この闘技場の控除率って奴はどんなもんなの?」

「おおよそ四割じゃな」

「おお、思ったよりガッツリ持っていくのな」

「普通の賭場ならば二割から二割五分といったところじゃがの」

「ここはなんで四割も取るわけ?」


 俺の問いにムニスはすぅ、と目を細めた。闘技場を見下ろしながら、言った。


「奴隷剣闘士を養っておるから、かの」

「奴隷剣闘士」


 俺はその単語を舌の上で転がした。

 奴隷制度あんのかよ、この異世界は……。


「ほれ、今戦っておる二人も奴隷剣闘士よ」


 ムニスが指差す先は闘技場中央、土が踏み固められた戦場だった。

 髪の毛の間から猫耳を生やした男が二人、剣を交えていた。


「獣人か?」

「そうじゃな。人間か魔族に捕まり売られたか、他に生きる術がなく自ら奴隷落ちしたか、そこまでは分からんがの。あの二人は奴隷剣闘士よ。彼らはこの闘技場に所属しているという体裁で飼われておるのよ」


 飼われてる、か。


「それで、見世物の殺し合いをさせられてるのか……?」

「義憤にかられるタクシを見るのははじめてかの。まあ落ち着くがよい。死ぬまではやらせんよ。剣の刃は潰してあるじゃろ」


 いや、こっからじゃわからねーけど。ムニスが言うならそうなんだろう。


「組織委員会の連中も己の()()をそう簡単に使い潰したりはせん。どちらかが戦闘不能になるまではやるから骨が折れたりはするじゃろうがの」

「ガチの斬り合いはやらねえの?」

「真剣を使った闘技会は不定期じゃが開催されとるぞ。腕自慢が大陸中から集まって技を競いあう。場合によっては命の取り合いも発生するのう。この闘技場の座席も全て埋まるし、賭け金も莫大な額になる」

「要するに普段は手持ちの奴隷で繋いで、稼ぎ時は闘技会ってわけかい……」


 以下、次回! 何にしろ胸糞悪いな……。

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