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17「彼女から前の彼氏のコトを聞くような気分(ではない)」

「あの者はな、本気で世界を救おうとする愚か者じゃった」


 ムニスはぽつぽつと当時のことを語りはじめた。


「そいつも異世界からきたのか?」

「いや、この世界の者じゃったよ。真摯な男での。つい抜かれてしもうた。ヒトの感情で言うならうっかりほだされた、というところかの」


 ふうん。なんかもやっとするな。

 いやいや、これは嫉妬なんかじゃあない。昔語りを聞いてるだけなんだから。


「あやつはいわゆる人間(ヒト)ではなかった」

「エルフとか、そーゆーやつ?」

「うむ。人間が『亜人』と蔑む種族のひとつ、獣人じゃったの。猫のな」


 なるほど。獣人種もいるのね、この世界。亜人は蔑称。コレ重要。覚えとこ。


「当時獣人種は人間と魔族の双方から虐げられておっての。その状態を憂いておった。クソ真面目な大馬鹿者じゃったの」


 どこか懐かしむようなそれでいて悲しげな目で遠くの空を見る神剣(ムニス)に俺は尋ねた。


「そんで、聞いていいのかわからんけど、その獣人の彼はどうなったんだ?」

「うむ」


 一度頷いてムニスは簡潔に答えをくれた。


「死んだ」


「……」

「世界を救うどころか、その遥か手前で死んでしまったのう」

「そっか。悪かったな。嫌なこと思い出させて」


 過去にそんなことがあったから、ムニスは大聖宮の台座から抜かれたくなかったのかもしれない。知らんけど。


「構わぬ。昔のことじゃもの。もうなんとも思っとらん。それに」

「それに?」

「今は世界を救う気などこれっぽっちもない主殿がおるからの。淋しくないどころか楽しいばかりじゃ。嫉妬もしてくれるしの。くっふっふ」

「このっ!」

「くふふ」


 以下、次回! 嫉妬とかしてませんからぁ!


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