12「技術は見て盗め、という昭和の職人修業的なアレ」
反省会は続く。
「それで、タクシ自身戦ってみて振り返るべき点はないのかの?」
「あー、それなー、ムニスのおかげでアイツの動きに目はついていくし体も反応するんだけどさ、根本的に筋力と体力が足りなくて段々思うように動けなくなる。その辺の強化が最初の課題だな」
「ほう」
よろしい、とばかりにムニスは頷いた。
「あと、剣術を覚えたい。神剣がいてくれても、使い手が俺じゃ宝の持ち腐れだ」
「くふふ。嬉しいことを言うてくれるのぅ。ご機嫌取りのつもりかの?」
「いや、ほんとに。俺のへっぴり腰見ただろ」
「確かにあれは無様よな」
笑顔でザックリ斬ってくるなムニス。さすが神剣。
「この世界の剣術でいいから、全知の力で俺に習得させてくれないか?」
これくらいのズルは許してほしい。
「ふーむ。傭兵に人気があるのはドラコノース三刀流、騎士の評価が高いのはクロノスリッド流じゃな」
今、三刀流って言った? 一本はやっぱり口に咥えるのか?
「ドラコノースは変幻自在の小剣二刀を基礎に置き、最後の一振りである長剣を切札として用いる流派よ」
「あ、三本いっぺんに使うわけじゃないのね」
「おぬしに腕が三本あればできるじゃろうがの。それからクロノスリッド流じゃが、時間すらも切り裂くと言われる超高速の斬撃が売りの流派よ。時を切り裂くは誇大広告じゃがの」
「なるほど」
「じゃが、全知の力でそれを習得するのは無理じゃな」
「えっ」
ムニスの全知で剣術を習得できない、ってのはどういう了見なんだ。
「ムニスー、オマエさては全知じゃないな?」
「失礼な発言も大概にの、主殿」
「ひっ」
幼女の目がギラリンと光り、怯える俺。
全知の矜持を傷つけてはいかん。今後は気を付けよう。
「無論、我の中には、先ほど言うた二流派の剣術に関する知識はある。じゃがタクシよ、絵図や文にて書かれたものを頭に入れただけでそれを使えると思うかの?」
ははあ、なるほど。そーゆーことね。
「実際の動きを見ないと確かに図解や説明書きだけじゃわからんわな」
「しかも秘伝の類は殆ど暗号のような書きぶりじゃからの」
「わぁお」
徹底してんなあ。
「じゃ、俺はどうやって覚えたらいいんだ?」
「ふむ。この大陸の中央地帯に闘技場があっての。そこでならあらゆる流派の剣技、闘技を見ることができよう。その気になれば腕試しもできるのぅ」
「腕試しはさておき実際に見れるのはいいな」
「技術は見て盗め、ということじゃな」
「うーん、昭和感。ところでムニス」
「なんじゃ」
「その大陸中央の闘技場って、東西どっちの領域になるんだ? 東側だとヤバいんでない?」
「心配いらぬ。中央地帯はどちらの領土でもないのでな」
「あれ? そうなの?」
以下、次回! 地理の講義の時間です!




