99「長い階段の途中、その先にあるもの」
俺とムニスはフェイと騎士鎧の男が戦闘をはじめると同時に先へと進んだ。
呑気に見てるわけにもいかない。
それにしても、
「仲間、ねえ。まあ部下とか下僕とか言われるよりはずっといいよな」
と俺が言うと、ムニスが仏頂面で、
「そんなことより第一のとか言っておらんかったかの!」
「そこー!?」
ええー、怒るとこそこー!?
「名乗るのは勝手じゃが、いささか気に食わんの!」
あー、もう。神剣様がぐずりだしたじゃんか。フェイのバカタレが。
「まあまあ、フェイも頑張ってくれてるわけだし」
「そうは言うがの」
駄目だ。ちょっとやそっとじゃ納得しないぞコレは。
仕方ない。
「それにムニスは俺の無二の相棒だろ? 順番なんか関係ないじゃん」
我ながら歯が浮くようなセリフである。あー、恥ずかしい。
「ふむ」
考えてる考えてる。正確には考えるフリをしている。
「ま、タクシがそこまで言うなら勘弁してやろうかの」
ちょろい!
つーか、こんなことやってる場合じゃねえんだってば!
さっさと行こう。
しかし階段が長い!
半分くらいは来た感じだろうか。
これは足に来ますなあ。
鍛え方が足りんかったか……。
なお、ムニスは平気でひょいひょいついてきています。
更に階段を上がって、ムニスが「そろそろ最上階じゃの」と言った時だった。
「お姉様ー! 御主人様ー!」
オースが単身で追い付いてきた。
これは僥倖。ラスボス戦が少し楽になる。
「おう、オースじゃん。早かったな」
「全開で走りましたから!」
「全開で殴ってないよな?」
念のため尋ねると、オースは心底不思議そうな顔をして「やあねえ」とばかりに右手をひょいひょい振ってみせた。
「やだなあ御主人様。そんなことしたら殺しちゃうじゃないですかあ。私は武器ですよー。傷つけるための道具ですが、命を奪うかどうかは使い手に委ねられるべきものです。それくらいの分別はあるんですから馬鹿にしないでください」
アホの子が急に真面目な長ゼリフを!
ちょっと感心したわ!
「でも戦うのは好きですけどね! ここまで来るときに見かけた人はとりあえず殴って昏倒させときましたよ!」
完全に通り魔の犯行やんけ。
さっきの名言は一体なんだったのか。俺の感心した分を返せ。
「あ! それと、下でフェイさんが強そうな人と戦ってました!」
「どんな感じだった?」
「互角っぽいですねー。どっちも本気じゃなさそうでしたけど」
「まだ様子見、ってことか? オースは加勢しなかったのか?」
「……御主人様はご飯食べている時に好きなおかずを横から取られたらどんな気持ちになりますか?」
「嫌だなソレは」
「そういうことです。ホントーにわかってないですね、御主人様は」
うわ、なんか腹立つ。
「それにフェイさんに先に行けって言われたんで! だから全開で追いかけてこっち来ました!」
「それでいい。この後がラスボスだからな」
「楽しみですね!」
「おっ、おう」
楽しみかー。そうかー。
以下、次回! 俺は全然楽しみじゃない。義務感? いや、ただの復讐だ。




