ウエンの元仲間たち
一人称視点がウエンの元ギルドメンバーのミュセルになっております。
ご了承ください。
「『ブレイブファイターズ』側の観戦席入り口はこちらになりまーす!」
私が受付の人に入場チケットを渡すと彼女は警戒していた。
気付かれたかと思ったが、そんなことはなかったようだ。
私は問題なく入場できた。
「観客として入ったのは初めてだ。えっと、どっちに行けばいいんだ?」
私がウロウロしていると肩を叩かれた。
私はビクッと反応する。
「不審過ぎ。キョドリ過ぎ。怪しすぎ」
その声には聞き覚えがあった。
「シーク!」
私は知り合いに会えて、頬を緩ませる。
赤毛の彼女は元『ヒーローホークス』のメンバーだ。
バゲッドに逆らったせいで今はどこにも所属していない。
「久しぶりね。…………あなた、なんて格好しているの?」
シークはなぜか私の格好を見て、呆れていた。
「変装だ。バレて騒ぎになるのはごめんだからな」
「強盗にでも行くつもり? そんなマスクして、帽子を深々と被っていたら、逆に怪しい。服のセンスが相変わらず壊滅しているのはまぁ、しょうがないとして…………」
「久しぶりに会って、そんな酷いことばかり言うな!」
「ちょっと来て…………」
私はシークに手を引っ張られて、お手洗いの個室に連れて行かれた。
「そんなマスク要らない。帽子はもっと軽いやつにしなさい。それに変装ならこれぐらいで十分」
シークは私から変装道具を没収するとバックから帽子と眼鏡を取り出した。
「でも、こんなんじゃ、バレないか?」
「堂々としている方がバレにくいものよ。それに戦いが始めれば、みんな、試合に夢中」
「そうだ試合!」
面白いことになった。
私は自然と笑っていた。
「ミュセル、自分のギルドがヤバいことになっているのに楽しそう」
シークは微笑んだ。
「ウエンがいなくなってから、初めてギルドリーグが楽しいと思えたよ、シーク」
「ミュセルも苦労しているみたいね」
私とシーク。同級、同性、同属性のコンビは『ヒーローホークス』の強力な攻撃の切り札だった。
ウエンとシークの離脱は『ヒーローホークス』を平凡なギルドに変貌させてしまった。
「まぁ、私がいたところでウエンがいなかったら、同じでしょうね。あの馬鹿で愚かな司令官はギルドの頭を斬り落としたのよ。そんなことをすれば、どうなるかも分からずにね」
シークは愉快そうに話す。
「で、その斬り落とされた頭が新しい胴体を見つけて、死に体の『ヒーローホークス』に止めを刺しに来た、と」
「これは点差の話じゃない。もし、『ヒーローホークス』が負ければ、これだけ有利な条件で最弱のギルドに負けたって言われる。そしたら、おしまい。ウエンはそれが分かって、勝負を吹っ掛けた。まったく恐ろしい男だ」
シークは私に新聞の記事を見せる。
見出しは『バゲッド司令官、負ければ引責辞任か!?』というものだった。
「でも、実際、どうやって勝つつもりなのかしら? いくら、私やミュセルがいなくても自力なら『ヒーローホークス』の方が上よ」
「それでも私はウエンが勝つことを確信している。ウエンは『ヒーローホークス』時代に参謀という役職全うしていた。司令官に自分の作戦案を破棄された時は素直に別の定石を提案していた。だが、ウエンの作戦はいつも私をドキドキさせてくれる。そんなウエンが縛りの無い司令官という地位に就いたんだ。これは楽しみじゃないか!」
私が興奮気味に話していると、シークは笑った。
「そんなこと言って、また噂になるよ?」
シークは依然あった私とウエンの熱愛報道をいじる。
「あんなもの、記者の妄想だ」
「そうね、記者の妄想ね。でも、記者が妄想したくなるくらい試合後のインタビューで毎回、ウエンを褒めたのは誰かしら?」
あ~~、その言い方はズルい!
「と、とにかく何もなかった」
「そうね、何もなかった。けど、例えば、ウエンがミュセルに『好きだ。付き合ってほしい』って言ったら、あなたはどうするかしら?」
「ゲフッ!?」
飲んでいたコーヒーを吹き出してしまった。
「ちょっと汚いわね。はい、これで拭きなさい」とシークはハンカチを渡す。
「い、今のはシークが悪いだろ!」
「で、どうなの? ウエンが付き合ってほしいって言ってきたら?」
「そ、それは…………秘密だ」
それを聞くとシークは少し呆れる。
「あなた、今の流れで秘密はほぼ答えを言っているようなものじゃないかしら?」
「う、うるさい! そんなことより試合だ! 試合!」
どうも昔からシークとの口喧嘩は分が悪い。
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