魔導士ギルド戦
魔導士には五つの属性、五つの基本値が存在する。
火の魔導士=近接攻撃力Z 遠距離攻撃力A 防御力C 機動力D 持続力B 特技B
土の魔導士=近接攻撃力B 遠距離攻撃力Z 防御力A 機動力D 持続力A 特技C
風の魔導士=近接攻撃力A 遠距離攻撃力C 防御力D 機動力A 持続力D 特技B
水の魔導士=近接攻撃力Z 遠距離攻撃力C 防御力B 機動力C 持続力A 特技A
雷の魔導士=近接攻撃力Z 遠距離攻撃力Z 防御力D 機動力D 持続力A 特技A
一部の特異存在と多属性持ちを除き、魔導士の能力はこのような基準がある。
もちろん自身の努力で土の魔導士が遠距離攻撃を会得したり、風の魔導士が防御力をあげることは出来るが、不得手の能力上昇率は低いのでやる人はほとんどいない。
ギルドリーグは、火・風・土の三つの属性がどうしても目立ってしまう。
なぜなら…………
圧倒的な防御力で前線を支える土の魔導士。
圧倒的な火力で敵に打撃を与える火の魔導士。
そして、圧倒的なスピードで敵陣を突破するギルドリーグの花形の風の魔導士。
それに比べて水と雷の魔導士の役割は地味だ。
水の魔導士は味方の回復、補給役。
雷の魔導士は情報・伝達役で戦闘能力はほとんどない。
毎年の人気投票でも上位は攻撃役の三属性の魔導士が大半を占めている。
俺のような雷の単属性になるとその役割は本当に地味だ。
だが、裏方だったからこそ、『ヒーローホークス』の内情は良く知っている。
「『ヒーローホークス』の勝利のパターンは二つ。風の魔導士で速攻を仕掛けての一歩的な勝利。もしくは土の魔導士と火の魔導士で、敵の攻勢を凌ぎ、相手が行動の限界点に達した時、風の魔導士が反転攻勢を仕掛けての勝利だ」
「それだけですか?」とフレアが難しい顔をする。
「元参謀の言うことが信用できないのかい?」
「いえ、だって、『ヒーローホークス』の作戦は百計と言われるほど複雑で、多彩でしたから」
「それは俺が多少の変化を付けていたから、そう見えただけだよ。基本的には速攻か、カウンターが『ヒーローホークス』の戦い方だよ。…………にしても、バゲッドさんの作戦は酷いな。相変わらずの『机上空論者』だ」
「机上空論者?」
「まだ俺がプロリーグに属していなかった時、アマチュア選抜対プロギルド選抜の試合があったんだよ。まぁ、選抜と言ってもプロの方に一線級の魔導士は一人もいなかったけどね」
「あっ、それ、聞いたことあります。アマチュアがギルドに勝った有名な戦いですよね」
「その時のアマチュア選抜の司令官が俺で、ギルド選抜の司令官がバゲッドさんだったんだ」
「えっ、でもアマチュア側の司令官の名前が記録では違った気が……」
「バゲッドがアマチュアに、しかも二十歳そこそこの小僧に負けた、ってことを隠したかったんじゃないかな? あの人はどうもギルドリーグにコネがあるみたいなんだよ。だから、いきなり『ヒーローホークス』の司令官になれたんだ」
「それって酷くないですか? ウエンさんはなんで引き下がったんですか?」
「交換条件でプロギルドリーグに加入させてもらったからね。俺は雷の魔法しか使えない。正規の試験でギルドに入るのは難しかった。俺はどうしてもギルドリーグに入ってみたかったんだよ」
「じゃあ何で簡単にやめちゃったんですか?」
「やり切ったと思ったからかな、中堅チームだった『ヒーローホークス』は俺が加入してから強豪ギルドになった。近年は三連覇しかもここ二年は圧倒的すぎて、面白く思えなくなった」
「だから私のお願いを聞いてくれたんですか?」
「んっ? あ~~、そうかもしれないね。勝負は劣勢の時が一番面白い。そして、勝ち誇っている相手の確信が崩れ、絶望する時が一番心が躍るね」
「意外とサドなんですね」
「かもしれないね。だから明日からの試合、俺がやろうとしていることを考えると敵味方、みんなの表情が楽しみだ」
「私は今から胃が痛いですよ…………」
フレアは胃を押さえる。
それでも彼女は俺を止めない。
言い方は酷いが、ここまで好き勝手に出来るのは楽しい。
今までは一応、優等生のふりをしていた。
それでも司令官の評価は低かった。
さて、今度の採点者は民衆かな?
俺はどんな評価を貰えるかな?
それが今から楽しみでしょうがない。
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