ギルド『ヒーローホークス』
一人称視点がウエンの元ギルドメンバーのミュセルになっております。
ご了承ください。
あの人がいなくなって、このチームは滅茶苦茶だ。
それもこれも…………
「まったく私の采配がなかったら、今日も負けるところだったな。君たちはもう少しちゃんと戦ったらどうだ?」
こいつはまたふざけたことを…………
私たちは必死に戦っている!
今日戦った『レオン&ウィッチーズ』は強力な火の魔導士と風の魔導士を有した超攻撃型のギルドだ。
なのに、馬鹿正直に土の魔導士を最前線に並べれば、蹂躙されるのがなぜ分からない!?
今日、勝ったのはこいつの指揮じゃない。
私が機転を利かせて、『レオン&ウィッチーズ』の本陣を奇襲したからだ。
本陣を落とせたから勝てたが、内容は完全に負けている。
理屈だけはご立派だが、相手を見て作戦を変えることが出来ない。
あの人ならこうはならなかった。
「おい、ミュセル!」
バゲッドが私を呼んだ。
一秒だって一緒にいたくない気持ちを押さえて、こいつの声に反応する。
「なんだ、あの命令違反は!?」
「ああしないと負けていました」
「なぜそう思う? 私の作戦は完璧だった。土の魔導士が敵の突撃を止め、華麗な反撃攻勢を行う予定だったのに、お前の独断のせいでそれが出来なかった」
お前は机上しか見ていないのか!?
前線は突破される寸前だった。
『レオン&ウィッチーズ』の攻撃力を正面から受け止めるなんて馬鹿だ。
「あまり命令違反を繰り返すとお前も追放するぞ。それとも君はあの男のように戦力外になりたいのかな。確か一時期は恋人だった、なんて噂もあったようだが?」
バゲッドは意地の悪い笑みを浮かべる。
私は顔が怒りで熱くなった。
「噂は噂です!」
バゲッドは自分に対して、反抗的な言動を口にしたメンバーを次々に追放していった。
結果、ギルドは常勝集団と言われていた頃の強さを失ってしまった。
「ウエン、あなたさえいてくれれば、こんなことにならなかったのに…………」
ギルドはボロボロ。指揮官は無能。
それでも私は戦うことを止めない。
私たちの戦いを見て、応援してくれるファンがいる。
ファンを裏切れない。
しかし、こんな男の元で戦っていることに我慢の限界は近かった。
その悔しさを押し殺し、私は俯く。
「そういえば、次はあの最弱ギルド『ブレイブファイターズ』だが、そこにウエン・ヤングの名前があったな」
「えっ?」
その情報に私は顔を上げた。
「雷魔法しか使えない男にはお似合いに最弱ギルドだ。今季のポイントはもうほとんど残っていないだろう。象が蟻を潰すようなものだが、私が引導を渡してやる」
バゲッドの言葉なんてほとんど入って来なかった。
ウエンがギルドリーグに戻ってきた?
しかも次の対戦相手だって!?
不覚にも心がワクワクしてしまった。
ウエン、あなたとチームメイトだったことは私の誇りだ。
しかし、時々、思っていたのだ。
君と全力で戦ってみたい、と。
チーム状況も、司令官も最悪なのに私の心は踊る。
「あっ、そうそう、ミュセル、次の試合、君は出場しなくていい」
バゲッドは私の膨らんだ感情を無情にも砕いた。
「なぜですか!?」
私は気付くと怒鳴っていた。
バゲッドはそれが気に食わなかったらしく、さらに不機嫌になる。
「今日の命令違反の懲罰だよ。エースだとか言われて思いあがった小娘にはお仕置きが必要だ。それにウェンと君は恋仲だったのだろ? 恋人の為に『ヒーローホークス』を裏切るような真似をされた少しは苦戦するかもしれないからな」
「だから、それは噂です! それに相手がウエンでも、敵である以上、全力で戦います」
もっと言うなら、ウエンだからこそ、本気で戦いたい。
成長した私を見てもらいたい。
「真実はどうだったのかな? とにかく、君は次の試合、出なくていい」
それでもバゲッドは決定を変えなかった。
本当にこいつは最悪だ…………!
読んで頂き、ありがとうございます。
もし宜しければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品への率直な評価とブックマークをお願い致します!
執筆の励みになります。
また異世界転生モノ『カードゲーム世界王者の異世界攻略物語』も投稿していますので、宜しければ、それらもよろしくお願いします!




