観戦組③
今回はミュセルの視点になっております。
そして、短いです。
ご了承ください。
試合が終わった時はいつも歓声を起きるものだ。
しかし、今日は違った。
伝説を目撃した民衆は声を上げることが出来なかった。
会場は沈黙する。
「あなた、あの魔法を使えた人を知っている?」
シークが聞いてくる。
当然、知っている。
「あの魔法を使えたのは二人だけ。一人はプロギルドリーグ創設メンバーの一人で現在まで使われている戦術の基礎を作った『百計の魔術師〝リン・ローウル〟』そして、もう一人はファイターズの黄金期を作った『時の魔術師〝アッシュ・ハートラック〟』。二人ともギルドリーグ史に名前を刻んでいる伝説の人物だ」
少し時間が経過し、話し声が聞こえるようになるが、歓声はない。
こんなに静かな試合終了は初めてだった。
「何よ、あれ。酔いも完全に冷めちゃったわ」
さすがにシークも驚いていた。
私たちは三人目の魔術師を目撃したのだ。
「ウエン。君は凄いと思っていたが、まさかこんなことになるなんて…………」
今日の試合は伝説になるだろう。
「それにしてもあんな凄い魔法があるなら、私たちと一緒にいる時はなんで使わなかったのかしら?」
「使える機会がなかった、ということだろ」
あの魔法『集束砲』は発動条件が難しい。
魔力が空間に充満している終盤でしか使いない。
それに過去の記録では、敵にある程度は接近しないと『集束砲』を撃てない。
ホークス時代のウエンは前衛の戦力が豊富だったから、いつも最後後衛にいた。
それにウエンには指揮権がなかったので、発動条件を揃える動きが出来なかった。
何より『集束砲』を使わなくても勝てるほど、『ヒーローホークス』は強かった。
「今の環境とバゲッドの愚行が眠れる獅子を目覚めさせた、ということか」
「だとしたら、バゲッドには感謝すべきかしらね。ウエンの真価を発揮させたのは、バゲッドよ。…………それじゃ、そんな素晴らしい功績を立てたバゲッドに素敵な宣告をしに行こうかしらね」
シークは立ち上がった。
「おい、どうするつもりだ?」
「運営にお父様の知り合いがいるわ。だから、お願いをして中に入れてもらうのよ」
「それは職権乱用…………だけど、今回は目を瞑る。私も連れて行ってくれ」
「もちろん、そのつもりよ」
私たちは試合の終わった戦場に向かった。
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