進撃
ホークスの風の魔導士部隊を壊滅させ、進軍する俺たちにバゲッドが何かを仕掛けてこないかと警戒をした。
しかし、ホークスに動きはない。
俺たちは何の妨害もなく、丘に接近することに成功する。
ホークスの火の魔導士部隊の射程圏内に入り、攻撃が飛んでくる。
「水の魔導士部隊、飛んでくる攻撃を防いでくれ。土の魔導士はそのまま前進だ。慌てることはない。敵にはもう風の魔導士の大規模部隊はいない。ゆっくり整然と進めばいい」
遠距離攻撃は飛んでくるが、その全てを防ぐ。
ホークスは火の魔導士部隊を守る為に、消耗している土の魔導士部隊も出てきていた。
今では数も戦力もこちらが有利だ。
じりじりと前進を続ける。
『オルフィン、聞こえるかい?』
『聞こえるぞ』
『敵の土の魔導士部隊は消耗している上、数も少ない。火の魔導士部隊を守れるだけの戦力は残っていない。君たちは右側面から突撃して、敵の火の魔導士部隊を攻めてくれ』
『了解した』とオルフィンは返答し、出撃する。
壁になるはずの土の魔導士部隊が少なければ、前線は弱くなる。
そうなれば、機動力のある風の魔導士部隊の突撃を止めるすべはない。
案の定、ホークスの土の魔導士部隊は味方の火の魔導士部隊を守ることが出来なかった。
オルフィンの突撃に蹂躙され、ホークスの火の魔導士部隊は壊滅した。
僅かに残った土の魔導士部隊は完全に孤立する。
突撃っていうのはこうやってするんだよ、バゲッド。
さてと…………
『ヒューちゃん、聞こえるかい?』
『は、はい!』
『もう少しで丘上のホークスの本陣が射程圏内に入る。そうしたら、最後にド派手な一発をお願いするよ』
『分かりました!』
通信を切って、フレアを見ると少し物足りなさそうな顔をしていた。
「ごめんね、君が驚くような奇策じゃなくて」
俺にそう言われたフレアはハッとし、表情を引き締める。
「い、いえ、そんなことは…………ちょっと思っていましたけど…………」
フレアはバツが悪そうに言う。
「先に言っておくけど、バゲッドが俺の驚くような奇策を用意していない限り、もう普通に勝つだけだからね。このまま、ホークスの本陣に接近する。バゲッドが動かないならヒューちゃんの遠距離攻撃、攻めてくるならヘテロが迎撃、逃げるようならオルフィンの追撃。こっちに残っているのその三択だね」
「凄い贅沢な三択ですね」
「おっと、もう一つ、選択肢があった」
俺が楽しそうに言うとフレアは首を傾げた。
「バゲッドから降伏、投了の宣言が入ることだね。俺はぜひ、バゲッド司令官にその英断をしてほしいな」
投了する場合は運営と敵ギルドの司令官、つまり俺に連絡をしないといけない。
その時、バゲッドがどんな声で俺に連絡を取るのかを想像すると自然と笑いが込み上げてくる。
「ウエンさん、今、とっても悪い顔をしていますよ」
フレアはジト目で俺を見ていた。
「ウエンさんって、見た目は人が良さそうなのに結構性格が悪いですよね。腹黒というか…………」
「君も結構、言うようになってきたじゃないか。仲良くなれてきたみたいで嬉しいよ。さてと、バゲッドには何か策があるのかな?」
ここまで来て、負けるのでは全てが台無しだ。
焦らずに、慌てず、確実に進軍していく。
伏兵の可能性を考えて、索敵を行うが、その様子はない。
そして、ついにヒューちゃんの攻撃が届く距離まで近づくことが出来た。
もう一度、ヒューちゃんに通信を繋ぐ。
『敵が出てくるかもしれないけど、君は敵の動きを気にせず、地図上に示した本陣の場所へ攻撃を仕掛けてくれ。ゆっくりと、慌てずに、正確にね』
『分かりました』と言い、ヒューちゃんは通信を切る。
さて、ヒューちゃんの遠距離攻撃には時間がかかるだろう。
未だにホークスの本陣に動きはない。
結局、バゲッドは戦わないつもりなのか?
いいや、何かあるかもしれない。
司令官の俺が気を抜いたら、駄目だ。
追い込まれた人間は何をするか分からない。
「でも最後、ちょっと見どころに欠けるかな」
ヒューちゃんが攻撃を開始する。
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