完全勝利へ
ホークスの風の魔導士部隊を壊滅させて、勝利をほぼ確定させた。
その上で進軍か、防衛か、を各指揮官に聞く。
まず初めに連絡を取ったのは…………
『ヒューちゃん、聞こえるか?』
『は、はい! 聞こえます!』
『俺たちは圧倒的有利な立場にある。その上でこの後、どうしたい? 守っていれば、こっちの勝ちは固い。でも、攻めれば、圧倒的な勝利が手に入るかもしれない』
『え、えっと、攻めれば、もっと『火炎弾』を撃ち込めますか?』
『今度はホークスの本陣に打ち込んでもらうことになるかな』
俺がそう説明すると、通信の向こうから『ヒヒヒ…………』とちょっとヤバい奴みたいな笑い声が聞こえて来た。
『ヒューちゃん?』
その笑い声を聞いたフレアが心配そうに言った。
『えっ? あっ! フレアさんもいたんですね。私はまだ戦いたいです。今まで迷惑をかけた分、皆さんの役に立ちたいです! あと、もっとたくさんの人を…………じゃなくて、スコアを稼ぎたいです』
『分かった。もう一度連絡をするから、それまでに補給を終わらせておいてくれ』
ヒューちゃんは『はい!』と答えて、通信を切った。
「今、ヒューちゃん、絶対にたくさんの人を倒したいって言いそうになりましたよね?」
フレアは頭を抱えていた。
「もしかしたら、殺したいって言おうとしたのかもよ?」
「ヒューちゃんはそんなことを言いません! それにリーグ戦の魔法で人は殺せません! 今の時代、殺傷能力のある魔法は全て禁止です!」
ちょっとした冗談のつもりだったのに、フレアは必死に否定してきた。
「とにかく、ヒューちゃんはやる気だね。次は…………」
俺はヘテロに通信を繋いだ。
『やぁ、ほぼずっと戦いっぱなしで悪いね』
『それは心配ないさ。私はただ敵を受け流しているだけだからね。さっきの変わった陣形はやってみて面白かったよ。敵を防ぐわけでも、倒すわけでもない。風の魔導士部隊の突撃をあんな風に受ける方法があったなんて、いい勉強になった。…………で、用件は何かな?』
俺はヒューちゃんと同じ内容の説明をした。
『私はどっちでも構わない。司令官の指示に従う』
その回答にフレアが『えっ!?』と漏らした。
『どうしたんだい? フレアちゃん?』とヘテロが尋ねる。
『い、いえ、ヘテロさんが素直に指示を聞くっていうなんて…………実は熱があったり、疲れていたりしませんか?』
『君は私を手の付けられない猛禽類と勘違いしていないか?』
ヘテロの声は少し不機嫌になった。
フレアは慌てて謝る。
『まったく…………フレアちゃん、後でお仕置き、しないといけないな』
ヘテロは少し艶のある声で囁くように言った。
『さ、さて、後はオルフィンさんに連絡ですね! ウエンさん、早く通信を切って、早く!」
フレアは身の危険を感じたらしく、通信を切ることを懇願する。
『オルフィンに連絡したら、また指示を出すよ。どっちにでも動けるように部隊を再編しておいてくれ』
『仰せのままに司令官殿』
通信の向こうで大袈裟なお辞儀をしているような言い方だった。
最後のオルフィンと連絡を取った。
『それ、聞くの、私が最後だろ? ヘテロさんの所も、ヒューちゃんの所もなんだか動き始めているからな』
『正解だよ。君はどうしたい?』
『あんたは……ウエンさんは負けてもしょうがないと思っていた私たち焚きつけて、ここまでやってくれた。勝つことを思い出させてくれた。…………それに私たちはプロだ。民衆にあと三時間弱、ダラダラとした試合を見せるのは申し訳ない。最後まで見どころを作りたい』
『分かったよ。実は俺もフレアも戦いたいと思っていたんだ』
『フレアが? …………まさか、フレアもヒューちゃんみたいになっていないだろうな?』
『なっていません!』
「うわっ! いたのか、びっくりした』
『若者たちは元気だね。…………それじゃ、部隊の再編を行う』
俺は『ブレイブファイターズ』の全軍に指示を送る。
最後は何の変哲もない部隊編成だ。
最前列に土の魔導士、両翼に風の魔導士、前列の後ろに火の魔術師。
さらにその後ろに遠距離攻撃の対策と補給として、水の魔導士。
「これから丘を攻めるのにこんな普通の陣形で良いんですか?」
フレアが言う。
「今、有利なのは俺たちだ。だったら、堂々と真正面から攻めればいい。奇策奇策で、最後に王道っていうのもいいじゃないか。俺だって、好きで奇策をやっているわけじゃない。戦力で劣るから仕方なく、奇策を使っているのさ」
「それにしては楽しそうでしたけどね」
フレアはいい意味で俺に遠慮が無くなってきた。
各指揮官から再編完了の連絡が入る。
「さて、最後の仕上げだ…………」
俺は全軍に進撃を指示する。
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