バゲッドの本陣
今回はバゲッドの視点になっております。
そして、いつも以上に短いです。
本日、もう一話、投稿する予定です
まだだ。
私はまだ負けてない…………
奴らは補給部隊を壊滅させたが、本陣の強襲は失敗した。
私が直接指揮を取ったのだから、当然だ。
それなりの被害は出ているはずだ。
それにファイターズの土の魔導士部隊の前線を突破すれば、持久戦になどならない。
「風の魔導士部隊を突撃させろ…………」
私が命令を出したのに、それを聞いた参謀たちは即答しなかった。
「聞こえなかったか? 風の魔導士部隊を突撃させるんだ」
「お言葉ですが、敵にはあの超火力の火の魔導士がいます。風の魔導士部隊単体での突撃は危険です。敵の遠距離攻撃の的になります」
「敵に『レオン&ウィッチーズ』のように精密な遠距離攻撃を行える火の魔導士部隊が編成できるはずがない。奴らはこの試合で一度も遠距離攻撃を行っていないだ。出来ないのだよ。だから、火の魔導士をこちらの土の魔導士の近くで使うなんて暴挙に出たんだ! 至近でしか戦えない火の魔導士部隊など恐れる必要はない。『ヒーローホークス』の風の魔導士部隊は最強だ。負けるはずがない」
「そ、それはミュセルとシークがいたからです」
その名前を聞いて私は血が熱くなった。
ミュセルだけでも聞けば、不快なのにシークだと!?
記者の前で私のことを「机上空論者」と言い放った生意気な小娘め。
思い出しただけでも忌々しい!
「二度とその名前を口にするな! 風の魔導士部隊、突撃だ! 疲れ果てた敵の前線を打ち破れ!」
私が怒鳴るとやっと伝令役が「はい」と答えて、風の魔導士部隊に出撃を命じる。
そうだ、黙って従っていればいいんだ!
大丈夫だ。
うちの風の魔導士部隊は〝疾風〟と言われるほど速く、突破力がある。
ファイターズの土の魔導士には、突進するこちらの風の魔導士部隊を狙える力量はない。
「んっ? なんだ? 敵のあの陣形は?」
三、四人で小集団に分かれただと?
それに各隊の隙間が広い。
愚かなことをしたな、ウエン!
あれなら、わざわざ打ち破らなくても、間隙を縫って突破が出来るぞ!
そうすれば、消耗する無く本陣に迫れる。
一体、何を血迷ったか。
いや、結局、今までは偶然、変な作戦が上手く言っていただけだ。
調子に乗って、奇をてらって、いよいよボロが出たな、ウエン・ヤング!
私の予想は当たった。
風の魔導士部隊は敵の前線をすり抜けていくぞ!
あんな隙間だらけの陣形を作って負けたとなれば、笑い者だな!
前線を突破した風の魔導士部隊の姿は見えなくなってしまったが、もうじき、試合終了の角笛が鳴り響くことだろう。
「ウエン・ヤング君、君にしては頑張ったよ。どうせ、今日の醜態でまたギルドをクビになるんだろうな」
そうしたら、さすがにもうプロリーグには復帰できないだろう。
後は勝利の報告を待つだけで…………
ドゴーン!
「な、なんだ、今のはまるで火山が噴火したような音がしたぞ、まさか…………」
聞き覚えのある音だ。
あの非常識な火の魔導士が暴れていた時と同じだ。
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