苦戦
今回は『ヒーローホークス』の司令官バゲッドの視点になっております。
ご了承ください。
丘の上、『ヒーローホークス』本陣。
なぜだ?
何が起こっている!?
有利な場所を押さえて、相手より優秀な戦力を揃えている。
なのに、なんだ、この様は!?
「第一、第二部隊被害甚大です」
「なら、さっさと次の部隊を送れ!」
そんなことをわざわざ言わせるな。
所詮、奴らは奇襲でこちらが驚いて、浮足立つのを狙っているだ。
「ですが、残りの部隊だけでは数で不利です。本陣の戦力を回してもよろしいですか?」
「馬鹿なことを言うな! 万が一、敵が風の魔導士部隊で本陣を狙ってきたらどうする? そんなことも分からないのか!」
まったくどいつもこいつも使えない!
よくこんなギルドが三連覇なんて出来たものだな。
これなら私は別のギルドで司令官をしたかったよ。
そうすれば、この名ばかりの『ヒーローホークス』を負かした名将と言われていただろう!
「で、では、どの部隊を前線に回せばいいのですか?」
「頭の回らない奴だな。まだ分からないのか! 補給部隊の護衛を回せ!」
「ですが、ウエンさんは補給部隊を重要だと考えていました。長期戦になった時、補給部隊がいないと…………」
「ウエンだと!? 今、その名前を出すな! 雑魚相手に長期戦なんてみっともないことが出来るか! 早く補給部隊の警護に当たっている部隊を前線に回せ!」
ファイターズがこっちの補給部隊を狙うだと馬鹿馬鹿しい。
こっちだって索敵を行っている。
もし、敵がこちらの方法を狙うような動きをすれば、すぐに分かるはずだ。
自力ではこちらが上なんだ。
それなのに相手の前線が変な陣形を使ったせいで調子が狂った。
それにあの無茶苦茶な火の魔導士部隊の運用はなんだ!?
火の魔導士というのは、前線を盾にして後方からの砲撃を定石だろ。
それなのにあんな戦場のど真ん中で、至近から四方に打ち尽くすなど…………
もし、これが全てウエンの指示なら、やはり追い出して正解だったな。
こんな戦い方でプロを名乗るなど、恥さらしだ!
見てみろ。
ファイターズの火の魔導士たちが撤退していくぞ。
あんな滅茶苦茶な攻撃をするから、行動の限界点が来たのだ。
やがて、前線に援軍が到着すれば、戦局は一気にひっくり返るぞ。
あいつらは結局、弱小だ。
初めに調子よく勝って、押し切ろうとしたが、そんな戦力は初めからなかったのだ!
補給部隊を守っていた戦力を前線に回してから少し時間が経過して、
「報告します。敵の前線を押し始めました」
当然の報告が届いた。
それを聞いて、私は笑った。
「敵は後退しているんだな?」
「はい」という答えが返ってきた。
後退だって?
ウエン、貴様は戦場の最後方に陣取っているんだぞ。
どこに逃げる気だ?
逃げ場などない!
所詮、ファイターズなどこの程度なんだ!
「まったく不愉快な戦いだったが、これで奴らは…………」
「た、大変です!」
一人のギルドメンバーが走ってきた。
なんだ、そんなに慌てるな。
ホークスのメンバーならもっと冷静でいろ。
「て、敵の風の魔導士部隊が現れました!」
なんだ、そんなことか。
要するに敵は前線を担う土の魔導士部隊が劣勢になり、馬鹿な攻撃を仕掛けた火の魔導士部隊は行動不能。
で、戦況の打開を温存していた風の魔導士に託したのか。
「そんなことで慌てるな。前線を厚くし、後方から火の魔導師の一斉掃射で仕留める。所詮は弱小、勢いがあったのは初めだけだったな」
これで勝った。
こんな勝って当然の試合に勝ったところで、私は何とも思わないが、ギルドメンバーはこれを機に少しでも戦いを理解できれば、私の領域に僅かでも近づけるだろうな。
「そ、それは無理です」
なんだと?
こいつは今なんて言った?
「貴様、私の命令が聞けないというのか!?」
胸倉を掴んで怒鳴ってやった。
何を血迷ったことを…………
「ち、違うのです! 敵、風の魔導士部隊が現れたのは後方です」
「なんだと…………?」
そんなわけがないだろ!
どうして、そんなところに…………
索敵の奴らは何をしていた!?
「そんなはずはないだろ。一体何の間違いでそんな報告を…………」
本陣付近が急に騒がしくなった。
「報告します。補給部隊を壊滅させた敵の風の魔導士部隊が突撃してきます!」
本陣強襲だと!?
「ふざけるなよ! 後背をついて調子に乗ったか! 本陣には精鋭が残っている。敵を殲滅しろ!」
蠢動することしかできない落ちこぼれ共が不愉快だ。
いいだろう。
ここで風の魔導士部隊を失えば、奴らは完全に攻め手を失う。
「迎撃しろ! 火の魔導士部隊もこちらの回せ! まずは目障りな奴らから殲滅してやる!」
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