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また会えたら結婚しよう、と約束した元カノに一週間でバッタリ再会しちゃった件  作者: 永菜葉一


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第21話 ネコミミ優愛にゃんは甘えたい

 あ、ありのまま今起こったことを話す……!


 俺と優愛(ゆあ)は浮かれポンチMAXなことを生徒会室で如月(きさらぎ)先輩に相談した。


 するとなぜか先輩がネコ耳グッズを出してきて、優愛に装備するように命じてきた……!


 正直、ワケが分からない。

 助けて三上(みかみ)会長……!


「なんでこんなことに……っ」


 俺は窓際で外を見ながら後悔に苛まれている。

 背後では優愛が絶賛、ネコ耳グッズを装備中……らしい。


 如月先輩から『まーきゅんはまだ見ちゃダメだからねー?』と言われ、窓際に追いやられてしまったので確認できない。


「ここをこうして……こうやって付けるんだよっ。はい、しっぽも装備完了!」


「ゆ、唯花(ゆいか)さん、わたし本当にこんな格好しなきゃダメですか? っていうか、なんでコスプレ? すっごい恥ずかしいんですけど……っ」


「ちっちっちっ。いい? ゆーちゃん。これが勝利の鍵なんだよ?」

「なにがどう勝利なんです? どっちかって言うと、思いきり敗北……」


「言ったでしょう? 逆に考えるの。『イチャイチャしちゃえばいいさ!』って」


 なんか如月先輩が優愛を言い含めてる声がする……。


「今のゆーちゃんとまーきゅんは『イチャイチャしちゃ駄目』って思ってるでしょ? だから我慢できなくなっちゃうの。だったら思いっきりイチャイチャしちゃえば、ほら解決」


「い、言いたいことは分かりますけど……っ」

「恥ずかしい? でもだいじょーぶっ。ここに爆誕せしはゆーちゃんじゃなく、ネコ耳グッズをつけた、『優愛にゃん』なのです!」


 ゆ、優愛にゃん……!?


 如月先輩の不思議ワードはいつも奇想天外だけど、今日のは極めつけだった。


 優愛にゃん。

 優愛がネコ耳グッズをつけて、優愛にゃん。


 ……くっ。


「正直悪くないかもしれない……っ」

「こらっ、真広(まひろ)! なにボソッと言ってんのよ!?」


「ほらねー? この世のあまねく男子たちはみーんな、好きな子のネコ耳モードな肉球ぱんちが大好きなんだよー? ね、だから……」


 コソコソと如月先輩が優愛に何か耳打ちしてる声が聞こえた。


「……で……を……して……そこでデデンッと……!」

「えっ!? ムリですムリです! わたし、そんなキャラじゃないですし……っ」


「でもぜったい、まーきゅん喜ぶよー? イチコロでころっころだよー?」

「うぅ……っ」


 一体、何を教えてるんですか、先輩っ!?


 優愛にゃんの響きにはついトキめいてしまったけど、この先、何が起こるかについては不安しかない。


 やっぱり助けて三上会長ーっ!


 するとその祈りが通じたのか、突然、生徒会室の扉が開く音がした。

 そして聞こえるのは、待ち望んだ三上会長の声。


「おーい、唯花ー、戻ったぞー。まったく、いきなり揚げパン買ってきてだなんて、どういうことだってば……よぉ!?」


「はーい、奏太(そうた)はカットイン! 若い二人のお邪魔しちゃいけないから、あたしたちは出てくよー」


 ……そんなぁっ!?


 会話から察するに、三上会長が扉を開けた途端、如月先輩が廊下に押し出したようだ。待ちに待ったヒーローをカットインされ、俺は愕然と振り返る。


「三上会長ーっ!」


 しかし俺の声は無念にも届かなかった。

 三上会長はグイグイと如月先輩に押し出されていく。


「いやワケ分からんて!? 俺まだ生徒会長の仕事があるんじゃが!?」

「良いから良いから! お砂糖たっぷりの揚げパンを『あーん』してあげるから中庭で休憩するよっ。……じゃあね、あとは頑張って!」


 俺の視界に映ったのは、最後に肩越しに優愛へ魅力的なウィンクをする、如月先輩の姿。


 そして、バタンッと扉が閉じた。


 ……行ってしまった。

 三上会長も如月先輩も行ってしまった。


 ということは今、この生徒会室には俺と優愛だけなわけで……。


 ずっと背中を向けてたから未確認だけど、たぶん今の優愛の格好は……。


「ま、真広?」

「はいっ!」


 名前を呼ばれ、思わず背筋が伸びた。


 正直、振り向いた時から視界の端には見えていた。

 でも直視していいのか分からなくて、気づいていないフリをしていた。


 だけど、呼びかけられたということは、見ても良いということ。


 俺はおっかなびっくり、視線を向ける。

 すると、


「おお……っ!?」


 そこに――優愛にゃんがいた。


 明るい髪にネコ耳をつけて。

 細い首に大きな鈴のチョーカーを巻いて。


 どういう構造なのか分からないけど、スカートからはくるんっとしたネコしっぽが生えていて。


 両手には大きな肉球の手袋をはめていて。


 優愛にゃんだった。

 これはもう完膚なきまでに優愛にゃんだった。


「な、なによ? なんとか言いなさいよっ?」


 恥ずかしそうに頬を染め、照れた顔で見つめてくる。

 しかし俺は動揺してしまって、上手く口がまわらない。


「やっ、その……っ」


 ぜんぜん思考がまとまらず、見当違いな言葉が出てしまう。


「は、恥ずかしくないの?」

「恥ずかしいわよぅ!?」


 全力の叫び声が返ってきた。


 うん、そりゃそうだ。文化祭でもないのにコスプレだなんて、まともな理性があったら恥ずかしいに決まってる。


「今この瞬間も現在進行形でめちゃくちゃ恥ずかしいわよ!? でも唯花さんのアドバイスだし、ひょっとしたら真広も喜んでくれるかもって思って着てあげてるのーっ!」


「あっ、うん、嬉しい! すごい嬉しい! こんな可愛い優愛が見られて最高だよ!」

「なんか無理やり言ってる気がするーっ!」


 いや無理やりなんて言ってない。

 本当に可愛いと思ってるし、最高に嬉しいに決まってる。

 

 でもまだ頭が現実に追いついていないんだ。

 それぐらい優愛にゃんは不思議すぎる存在なんだ。


「もう頭きたっ。こうなったら死なば諸共よ……っ」

「え、なに!? なんか怖いこと言ってない!?」


「真広が悪いのよ! こうなったら……唯花さんのアドバイスをそのまま実行してやるんだからっ」


「へっ!? それってコソコソ言ってた、デデンッがどうのってやつ!? 待った、優愛! なんか嫌な予感がする! 早まっちゃいけない……っ!」


「もう遅ーいっ!」


 首の鈴をチリンチリンッ鳴らして、優愛にゃんが突撃してきた。


 そして小ジャンプからデデンッという感じで目の前に着地し、大きな肉球で俺の顔を挟んだかと思うと、首元に頬をすり寄せて囁いた。


「……ゆ、優愛にゃんのこと、ナデナデしてにゃんっ♡」

「――っ!?」


 稲妻のような衝撃。

 脳が破壊された。いや逆だ。脳が活性化した。


 体が自然に動き、俺は大きく広げると、優愛にゃんの細い体を思いっきり抱き締める。


「きゃっ!? ちょ……真広?」

「……持って帰ります」


「へ?」

「優愛にゃんを持って帰って、今日から我が家で飼います」


「何言ってるのーっ!?」


 目を白黒させて叫ばれたけど、俺の耳には届かない。

 それぐらい脳がやられてしまった。


 とりあえず優愛にゃんを抱き締めたまま、いそいそと家路に着く。


「ちょ、ちょちょちょっと!? どこいく気なの!?」

「我が家。優愛にゃんを持って帰るので」


「待って待って! こんな格好で外に出たら、わたし人生終わっちゃうから!?」


「大丈夫。俺が責任持って一生面倒みる」

「そういう意味じゃない! ああもう……っ」


 優愛にゃんがわたわたしながら叫ぶ。


「助けて、唯花さーん! これ真広に効果ありすぎーっ!」


 その後、SOSを聞いて駆けつけた如月先輩に止められて、俺はどうにか正気に戻ったのでした。



 ………………。

 …………。

 ……。



「まったく……危なくパーフェクトなわたしの人生を台無しにされるところだったわ」

「面目ないです……」


 生徒会室をお暇し、俺と優愛は中庭にやってきた。

 花壇の前のベンチに座り、俺は気持ちを落ち着ける。


 や、本当にさっきは取り乱してしまった……反省である。


「まさか真広がああいうのが好きだったなんてね」

「俺も自分で驚いてる……」


 実際、優愛のネコさんモードには心を揺さぶられた。

 というか、正気を失ってしまった。


 如月先輩が伝説の装備というのも納得である。


 ちなみに当然ながらもうネコグッズを外し、優愛は人間に戻っている。

 ちょっと残念……とは口が裂けても言えないけれど。


「なーにちょっと残念そうな顔してるのよ?」

「えっ!? し、してないよ!?」

「本当かしらー?」


 じぃーっと顔を見つめられる。

 さっきの今なので誤魔化せる気がせず、俺は観念して白状する。


「……正直、また優愛にゃんが見たいです」


「変態」

「ぐはっ!?」


 バッサリ言われ、心が吐血した。

 物理的にも血を吐くかと思った。


 俺はこの世の終わりのような気持ちで肩を落とす。


 するとその肩に――ふわっと優愛が寄り掛かってきた。


「そのうちまた見せてあげる。でも次はお持ち帰りじゃなくて……」


 そして、ナイショ話のようにぽつりと。


「……その場で押し倒しちゃってもいいよ?」

「――っ!?」


 鼓動が跳ね上がった。

 どういう意味、なんて聞く必要もない。そういう意味だ。


 だって俺たちは、もう恋人同士どころか婚約者なんだから。


 顔が熱い。

 どうにも照れてしまって、俺は一言返すのが精いっぱいだった。


「……あ、ありがとうございます」

「ん」


 余裕のない俺とは対照的な、ちょっと満足そうな余裕のうなづき。


 やっぱり俺は……このお嬢様にはかなわない。




次回更新:土曜日

次話タイトル:『第22話 休日、部屋でこっそり膝枕をしてもらう話』

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