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キッチン

作者: ヒデオ

やっとの思いで彼女から逃れられた。

男はホッとした面持ちであった。


付き合って10年になるが、束縛の激しい女だった。

最初は、会社で仕事をしている時にかかってくる女の電話であった。

「ねぇ、今日は何時に帰る?

何食べる。」

付き合って5年してからマンションで同棲を始めたが、それから1年くらいしてからそんな電話がかかってくるようになった。

最初は軽く受け流していたが、大事な会議の最中にかかってきた時にはさすがに出られないので、後から電話すると、

「誰か、他の女とでも話していたの?」

と段々と疑うようになってきだしたのだ。

その内、女は男の会社の前にずっといるようになってきた。

男は段々と怖くなってきた。

別れ話しを持ちかけてみたが、女は別れるぐらいなら死ぬと言い出した。

男はさすがにそれ以上のことは言えず、ずるずると付き合っていたが、ある日会社の前にいつも待っていた女が、男を見つけるなり、そばにたまたまいた同僚の女性に

「この泥棒猫!」

と叫んで、掴みかかってきたのだった。

男はさすがにキレた。

「彼女はただの会社の同僚だ。君こそいつも会社の前で俺を待っているから、俺は会社で立場が悪くなっているのがわからないのか!」

その途端、女は、ハッとしたように

「ごめんなさい!」

と言って去っていった。

同僚の女性も

「いくらなんでもいい過ぎじゃない。

あなたのことが心配だったのよ。

追いかけた方がいいわよ。」

と言い、俺もいい過ぎたと思い、急いで二人の住むマンションに駆けつけたが、人だかりができていて、飛び降りた彼女の姿があった。


結婚もしないままではあったが、彼女の為に葬儀を済ませ、彼女のご両親にも深く詫びたが、その時のご両親の言葉がひどく気になった。

「あの子は昔から、執着すると怖い子だった。」


葬儀が済んで1年の後に、新しい彼女ができた。

前の彼女と違いあっけらかんとした女ってだった。

そんな彼女が初めて俺のマンションを訪ねてきた。

「何か作るわね。」

「あー頼むよ」

彼女はキッチンに立って料理を作り始めた。

彼女は何の迷いも無く、冷蔵庫の中から材料を出し、調理を始めた。

出された料理を見て驚いた。

「君…君に俺が何を好きか話したことあったかな?」

「あら、聞いたことはなかったけどキッチンに立ったら勝手に体が動いてしまったのよ。」

出された料理は、1年前に死んだ彼女の得意料理だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーが面白かったです♪ 最後、ぞっと感があって良いですね! 「勝手に体が動いてしまった」の部分がご両親の台詞に繋がってくる感じがして、とても楽しかったです。 [気になる点] 冒頭の二…
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