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魔道師館 ①



 今。そう、現在。

 俺の目の前には、白と黒の大きな二つの塔が目印となっている館が(そび)え立っていた。



 この館の名前は『魔道師館』だ。



 俺がなぜここに来ているかは、数時間前に遡ることとなる。




 ******




 酒屋にて



 俺は最近、依頼以外にも、たまに酒屋の厨房でバイトをさせてもらえることになった。今日も俺はバイトをしていて、ちょうどモーニングの時間が終わり洗い物をこなしていた。


「おーい、シンター!今日はちょっとこれから、依頼を頼んでもいいかー?」


 ホールから厨房にいる俺に向かって、マスターが大声で呼びかけた。


「はーい!いいっすよ!ちょっとお待ちくださいねー!」


 俺はそう言って、キリのいいところまで洗い物を終わらせてから、ホールへと出ていった。俺がホールに出ると、マスターは「おう!すまねぇな」と言って、何やら白い包みを持ちながら俺に近づいてきた。


「実はよ、この間シンタたちが採ってきてくれた薬草があっただろ?その薬草を『魔道師館』ってとこに届けてほしいんだよ」


 マスターはそう言って、手に持っていた白い包みを俺に手渡した。


「これを……『魔道師館』、にですか?」


 あ〜そういえば、チュートリアルでそんな依頼あった気がする。つっても、俺、このゲームでは『魔道師』の役職やった事なかったから、『魔道師館』とか魔道師の仕事とかあんまし分かんないんだよなぁ。


 俺がそんな事を考えていると、マスターは更に話を続けた。


「あぁ。その『魔導師館』にはマリーっていう館長がいてなぁ。実はいつも俺が定期的に薬草を届けに行ってんだが、今日は他にもやることがあってな。だから代わりに届けてほしいんだよ。シンタは旅人だから、まだ『魔導師館』には行ったことがなかっただろ?ついでに見学もさせてもらうといいさ」


 マスターはそう言って、引き出しから地図を取り出し、『魔道師館』の場所に大きく丸印をつけてくれた。


「っと……ここが『魔道師館』だ。白と黒の大きな塔が目印になってるぞ」


 あ〜、あのなんとも斬新なデザインの。


「えっと、斬新なデザインですね」


「ハハッ、魔道師の色になってるのさ。魔道師には白魔道師、黒魔道師がいるからな。あ、もしもマリーがなかなか見つからなかったら、奴らが館内にいるから聞いてみるといい。すぐに見つかるぞ?」


 そう言ってマスターは、先ほど丸をつけてくれた地図を俺に手渡した。


「あ……一つ忠告しておくが……あんま、魔道師の女はナンパするんじゃねーぞ?魔道師の女はおっかねえからな~?ハッハッハッハッハー!」


 マスターは大袈裟に笑い飛ばしながら、そう俺に忠告した。ん?それは経験談かな?安心してください。俺にそんな度胸はありません。……ちくしょう!!


 俺はハハ……と苦笑いをしながら、地図と薬草の入った包みを受け取り、酒屋をあとにした。



 *****



 そして今に至る。


『魔道師館』はゲームで感じていたときよりも、予想以上の大きさだった。俺は正面にある大きな扉のドアノブに手を掛け、ゆっくりと扉を押し開いていった。


 中に入ると目の前には、赤い絨毯が敷かれている大きなホールが広がっていた。ふと、天井を見上げると大きなシャンデリアが飾ってある。奥の方には、なんだかハリウッド女優が歩きそうなデカい大理石の階段と、それぞれ左右に螺旋階段もあるようだ。


「さってと、どこから探せばいいんだ。どこかのお城みたいだな」


 今、このホール内には誰もいないようだ。うーん、思い出せぇ俺。チュートリアルで一回くらいは来たことあるはずだぞ〜?確か、館長室かなんかがあった気がするんだけど……どーこだっけかな〜?


 そうこうしている内に、右奥にある扉が静かに開き、黒魔導師の黒いローブを羽織った男が出てきた。


 少し赤毛がかった癖毛の髪に、ルビーのような真っ赤な瞳をしている。……え、なんか、このゲームの顔面偏差値高くね?おかしくない?不平等じゃない?いやいやいや、そんなことを考えている場合じゃない。俺は慌てて、その男の前に駆け寄り声を掛けた。


「あ、あの、すみません。ちょっとお伺いしたいことが……」


「あ"ぁ"?」


 その黒魔道師は突然、ドスの効いた声を出しながら俺にガンを飛ばしてきた。そんな態度に俺は思わず、怯んでしまい言葉を詰まらせた。


「っ……えっと……」


「おい、てめぇ。男が俺に話しかけに来んじゃねえ。今、すんげえ、イライラしてんだわ。くそ……可愛い子チャンならまだしも……とにかく、他をあたってくれ」


「あ、はい。すんません」


 俺が速攻で謝ると、男はそのまま魔道師館を出ていった。


 ……………


 え~~~?理不尽じゃな~い!?

 てか可愛い子チャンならいいのかよ!悪かったな!ブサメン系男子で!!


 俺は小さく溜め息を漏らした。仕方ない。少し腹は立つけど、また気を取り直して違う人に声をかけよう。そう思っていると、反対側の扉がガチャっと開いた。その扉からは白いローブを羽織った、白魔道師が出てきた。茶色の瞳に茶髪のおさげで、顔に少しそばかすがついている女だった。


 次こそは!と思い、俺は声をかけようとした。しかしふとその時、マスターに言われた言葉が頭を過った。


「魔導師の女はおっかねえぞ?」


 ……いや、いやいやいや、これはナンパじゃない。そうナンパではない。……うん、よし、聞こう。


 俺はそう自分に言い聞かせて、白魔道師のもとへ駆け寄った。


「あの!す、すみません!お聞きしたいことがあるんですけど、少しだけよろしいですか!?」


 俺は緊張して、少し早口になった。


「あ、はい。なんでしょう?」


 白魔道師はそう言って、少し首を横に倒しながら俺に訊ねた。よ、よかった~!普通の反応だ~!


「あっと、マリーさんって人に届け物があるんですけど、マリーさんの居場所ってご存知ですか?」


「あ、マリーさんですね。この時間なら館長室にいると思います。よければ、ご案内しましょうか?」


「え!ほんとですか!そうして貰えると有難いです」


「はい。それでは、こちらにどうぞ」


 そうして、俺は白魔道師の女に案内をされながら館長室へと向かった。



「こちらが館長室です」


 館長室の前に辿り着くと、白魔道師はそう言ってドアを三回叩いてから「マリーさん、お客様です」と声をかけた。


 すると、中から「どーぞー?」と女の人の声が返ってきた。その返事を聞いた白魔道師は「失礼します」と、また声をかけ扉を開いて中へと入っていった。


 白魔道師につづき、俺も「失礼します」と一声かけて部屋の中へと入った。


 部屋の中に入ると、そこには眼鏡を掛けて後ろで髪を纏めた長身の女の人……それと黒魔道師の女と、白魔道師の男がこちらに視線を向け立っていた。






 


ヤンキーこわいガクブルガクブル。


読んでいただき、ありがとうございました。

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