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第60話 精霊祭③

正午も近づく頃には徐々に人が増え、王宮内は賑やかになってきた。

庭園を散歩する者、大広間で立食形式で軽食と会話を楽しむ者、集まった貴族達は皆思い思いの時を過ごしている。


「エリザベータ様に妹君がいらっしゃると伺った事はあったのですが、こんなに可愛らしい方だったのですね!」

「よろしくお願い致します、プライセル様」


金髪縦ロールを揺らしながら微笑むロジーネ様に、フィーがはにかみながら答えた。


「もちろんですわ。今こうしてフリッツと一緒にいられるのもエリザベータ様のおかげですもの。フィオナ様も、困り事がありましたら言って下さいませ。わたくしに出来る事でしたら何でもさせていただきますわよ」

「ちょっと縦ロ……ロジーネ様。大袈裟ですわよ」

「やだ、エリザベータ様!『縦ロール』で構いませんのよ!」

「流石に、ゼッフェルン子爵令息の前では……」


縦ロールは薄茶色の髪をした大柄な青年と仲睦まじく腕を組んで寄り添っている。

彼女の婚約者であるゼッフェルン子爵令息だ。


「その説は大変お世話になりました、エリザベータ嬢。ロージィは『エリザベータ嬢が愛称で呼んで下さる』と、大変喜んでいるのですよ」

「恋人が『縦ロール』などと呼ばれているのですから、怒った方が良いのではなくて?」


呼んでいる張本人のわたくしが言うのも何ですけれど。


「それは、ロージィの受け取り方次第です、エリザベータ嬢。しかし『お似合いの恋人』だなんて、照れるなぁ!」


「ハハッ!」と爽やかな笑顔を浮かべるゼッフェルン子爵令息の口元から白い歯がキラーッと光る。


「やだ、フリッツったら!」


キャッキャと照れる縦ロール。


わたくし「お似合い」なんて言いましたかしら。

まぁ、おさまる所におさまったという事で、良かったのではないのかしら。


縦ロールは、これから取り巻き子爵令嬢達と合流する予定らしい。


「"霊風花(たまかざはな)"を見るのには絶好の場所らしいのですよ!」


取り巻き子爵令嬢3人もそれぞれ婚約者と一緒。トリプルデートならぬクアドラプルデートだ。人数が、すごい。


教会で洗礼や祝福の際には『精霊の恵み』という聖水が使用されるのだが、『精霊の恵み』はヴァールブルク領にある霊峰で採水された清らかな泉水に魔力を込める事で出来上がる。

それを行うのが精霊祭だ。


その時に溢れた魔力は光の粒子となって王都に降り注ぎ、その壮大で幻想的な光景は、"霊風花(たまかざはな)"と呼ばれる精霊祭のメインイベントでもある。


『精霊の恵み』に魔力を注ぐのは王太子―――つまりクラウス様の役目だ。


縦ロールとゼッフェルン子爵令息は「"霊風花(たまかざはな)を庭園の中でも見晴らしの良い人気スポットで見る」と言い、わたくし達とは別れて他の貴族達に挨拶をしに行った。

取り巻き令嬢3人衆が来るまで、わたくし達同様この大広間で時間を潰すらしい。


「王太子殿下の"霊風花(たまかざはな)"は近年では類を見ない程の規模らしいですね」


まだ少し慣れない様子で給仕から配られたレモネードを手に取り、フィーが言った。


「ふふん。クラウス様ほどの魔力があれば当然ですわ。……フィー、ごめんなさいね。今年はゆっくり見せてあげられなくて」

「いいんです。それよりも、兄さんの事でこんなにも心を砕いてくれて感謝してるんです。リーゼ姉様、ありがとう」


フィーが花の様に可愛らしい笑みを零す。妖精かしら?


「でも、来年は一緒に見ましょうね」

「勿論よ」

「絶対ですよ!」


ぐうっ!一生懸命に言い募る妹が可愛い。


結局、フィーの実の兄であり『エバラバ』の隠し攻略対象でもあるテオバルト・マイヤーの足取りを掴む事は出来なかったが、彼がどこに現れるのか、今日に限ってはわたくしには分かる。


精霊祭当日、つまり今日。

『エバラバ』のテオバルトルートで、クラウス様の暗殺を命じられたテオバルトが心の中で葛藤するシーンがある。

ゲームの文章や背景から、わたくしは場所やおおよその時間を割り出した。ふふふ。わたくしの廃人度合いを甘く見ないでいただきたいわね。


テオバルトが現れるのは大広間(ここ)からほど近く、精霊祭の為に王宮を訪れた貴族達には立ち入りを許されていない区域だが、行って行けないことはない。


これがテオバルトを、クラウス様暗殺に動き出す前に確保する事が出来る最後のチャンスだ。





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