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第6話 悪役令嬢の企み

イドニア王国は精霊信仰の国だ。


精霊の加護は魔力として現れると信じられており、魔術が使えるか否かは別として、大なり小なり誰もが魔力を持って産まれてくる。

魔力が高い者は即ち精霊の加護を多く受ける者。

政教一致のこの国では身分に影響を及ぼす事も多々ある。


〈火〉〈土〉〈水〉〈風〉〈光〉〈闇〉の6種があり、

例えば〈火〉の魔術に適性があるわたくしエリザベータ・フォン・アルヴァハイムは〈火〉の精霊の加護を受けているという事で〈火〉の魔力を持っている。

クラウス様は〈光〉。〈光〉といってもペカーッと光る魔術を使える訳ではなく、いや使えるのかもしれないが、

肉体や物質に影響を与える魔術は〈光〉、精神や魔力に影響を与える魔術は〈闇〉に大きく分類されているのだ。

だから、クラウス様は魔術を使えばスッゴイ速さで走れたりすると思う。見たことはないが。


ふたつ以上の魔術の適性を持つ者は貴重な存在だ。

申請を義務付けられている代わりに王国から支援を受ける事ができる。

それは平民であっても同様で、学院で魔術を学ぶ権利も、本人が望めば爵位も与えられる。

アリスが正にそれだ。


そして彼女の魔術の適性は、()()()()


流石は乙女ゲームの主人公(ヒロイン)。設定が盛りに盛られている。


今の所は〈火〉を除いた5種と考えられている様だが、それでもこの国の常識で考えるととんでもない事だ。

発現したばかりで安定しない5種もの魔術の制御を、王太子と侯爵令息が特別指導する理由もそこにある。


『エバラバ』のクラウス様ルートでは、最後の〈火〉の魔術を発現させたアリスが、全ての精霊から加護を受ける者―――『精霊王』になる。


『精霊王』というのは凄い。

どれだけ凄いのかというと、

この王国で一番偉い。

王様より、ひとつ上の位が『精霊王』。

そう正に権力の中の権力と言えよう。


ただ、全ての魔術の適性を持つ者は存在する事自体が奇跡の様なもの。

『精霊王』は300年以上空位となっていて、『精霊王』が即位している間は精霊の寵愛を深く受けた時代であると言われる為、その時代を統治する王室にとっても非常に名誉ある事だ。


クラウス様ルートのハッピーエンドは、

『精霊王』となったアリスがクラウス様と結ばれ、その後イドニア国王となったクラウス様と末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。で幕を下ろす。

わたくしが狙うのはこれだ。


クラウス様に、勝利と栄光と、顔が可愛くて性格も良い嫁を!


アリスをクラウス様ルートに誘導しつつ、『エリザベータ』としての役割をきちんと果たせばいける筈。


わたくしエリザベータの役割は簡単なものだ。


一、アリスに会うたび嫌味を言う。

一、アリスの前でクラウス様にまとわりつく。

一、…えーとえーと、後は……


………以上!!


これだけだ。


悪役令嬢エリザベータは『エバラバ』に於いて重要なキャラクターでは全くない。

クラウス様ルート以外ではほぼ現れないし、

派手ないやがらせや巧妙な画策をするでもなく、

攻略対象の婚約者という立場をチラつかせてヒロインを一喜一憂させる為だけに存在し、

好感度が上がりゲームが進むとクラウス様ルートですらいつの間にかフェードアウトしているという、

最早ライバルと名乗るにはおこがましい、完全なる『当て馬』キャラなのだ。


しかし、しかしだ。


当て馬悪役令嬢だからといって、わたくしは仕事に手を抜くつもりは毛頭ない。

与えられた役割をきっちりと演じきり、覚悟を持ってして職務を全うする所存なのである。


クラウス様、わたくしがいるからには貴方の輝かしい未来は約束されたも同然ですわ!





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― 新着の感想 ―
作品の雰囲気的に、エリザベータとクラウス様が結ばれて、ヒロインもちゃんと幸せになってって気楽に読んでたけど… 精霊王となると、複雑なことになりそう どうなるんだろ〜
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