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第36話 悪役令嬢の家族

奉奠祭当日。

一年最後の一日を、(ヒイラギ)の樹葉と実を庭先に飾り、精霊に祈りを捧げながら静かに過ごすのがイドニア王国の慣習だ。


カルラとカミラに付き添われ、フィーと一緒に町娘風ファッションを装い(変装ともいう)奉奠祭に向けて賑わう城下町を散策したのはつい先日のこと。

立ち並んでいた屋台も今日は全て片付けられ、外を歩く人影もない。王都全体が静粛な空気に包まれていた。


「お忍びお祭り探索なんて、そんな面白そうなこと、どうしてお母様も誘ってくれなかったのぉ!?」


王都全体が静粛な空気に包まれているが、我が家の中はそんなでもなかった。


アルヴァハイム侯爵家別邸の2階談話室(サロン)

家族へのお土産にと城下町の屋台で買った木彫りのオーナメントを手に非難の声を上げるのは、わたくしエリザベータ・フォン・アルヴァハイムのお母様だ。


アルヴァハイム侯爵夫人、アダリーシア・フォン・アルヴァハイム。

浅紫(あさむらさき)色の髪を高く結い上げ、おっとりした少女の様な外見は実年齢よりもかなり若く見える。


「お母様は王都にいらっしゃれば何かとお忙しいでしょう?あの日だってアルブレヒト公爵夫人のお茶会のご予定がおありでしたし」

「教えてくれたらお茶会なんてお休みしてお母様も一緒に行きましたのにぃ!」


公爵夫人のお茶会をドタキャンなんて、許される筈ないでしょう。何を言っているのかしらね、この人は。


しかしそれを本当にやりかねないのがお母様だ。

だからこそフィーや侍女達と相談して、こうして事後報告という形をとった訳なのである。


「あ、あのあのっ、お土産はどうでしたか?姉様と相談して、お母様には〈風〉の意匠のものにしたんです!」

「とぉーっても可愛いわ!リーゼちゃん、フィーちゃん、ありがとう!お母様、大事にするわね!」


フィーの言葉にお母様の意識が手元に移る。

フィー、ナイスアシスト。そしてお母様、チョロい。


下げ紐の付いた小さな木製オーナメントには、お母様が適性を持つ〈風〉の精霊をイメージした文様が彫刻されている。

これを買った屋台では全属性、属性(ごと)にも様々な文様のものが売られていたので、フィーときゃあきゃあ言いながら、適性に合わせ柄違いで家族全員分買ってきた。

お父様とわたくしは〈火〉、フィーは〈水〉で、カートお兄様は〈風〉のものだ。


因みにカートお兄様、現在既に王都には居ない。


身重の為、今年は王都へ来るのを見合わせたお義姉様の出産が差し迫っているという事で、必要最小限の挨拶だけを済ませたお兄様は「王都にいる間に産まれてしまったら一大事だ!」と騒ぎながら、王都を訪れ僅か3日で領地へとんぼがえりして行った。どうやら出産に立ち会うつもりらしい。


王都から領地のアルヴァハイム侯爵家本邸まで馬車で一ヶ月。この季節、途中の山間部は積雪もあるのでもっとかかるかもしれない。


お兄様は単騎、更に〈風〉の〈魔術〉で風の抵抗を減らして一週間で領地に帰るつもりだ。

王都へ来る時もお父様達とは別々に、そうやって来たらしい。

馬が可哀想だとは思わないのだろうか。


そしてお父様だが、お父様は祭礼行列に参加するので毎年この日は屋敷にはいない。


祭礼行列というのは、イドニア国王が精霊に祈りを捧げながら、神輿で一日かけて王都を廻るというもの。

王太子であるクラウス様も毎年同行している筈だ。


「あ!雪が降ってきましたよ!」


嬉しそうなフィーの声に窓を見ると、外には雪がちらちらと舞っていた。






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