Episode 30決戦の前
赤グループ
「俺たちは絶対に勝利し、緑グループを潰す。文句がある奴は殺すし、邪魔立てする奴も殺す」
「作戦は?・・・ヒィッ」
作戦はないのかと聞いた男性には、刺すような鋭い視線が浴びせられた。
「作戦なんて必要ねぇ、ただ殺すだけだ。まぁ・・・そうだな、左から行くか右から行くかは個人の自由だ。だが、ビビってる奴は必要ないから殺す。それだけだな・・・」
「灰崎さんは、どうするんですか・・・?」
「すぐに参加するさ、雑魚相手ならお前らで充分だろ。それでも失敗するなら、お前らも殺すか・・・?」
「いつ出発するんですか・・・?」
「アァァ、今に決まってるだろ?それとも2分以内に行かねぇ奴は、殺すか?」
男の返答を待たずして、赤グループの面々は一心不乱に走っていく。その哀れな姿は、まるで大型の肉食獣に追われている様でもあった。
しかし、罠の張り巡らされた場所へと向かっていることに、誰しもが気づいていなかった。
青グループ
「巻き込んでしまってすまないな、本当ならば私一人で片を付けるべきなのだろうが、私一人では人手が足りない。結果的に君達を死中に送ることになってしまったこと、申し訳ないと思っている」
小汚い服を着た男は、話している間中終始謝っていた。
「そんな・・・頭を下げないでください。俺達が参加するのを望んだんです、俺達が死んだって雲櫟さんが責任感じることだってないんですよ」
「そうだよ雲櫟、確かに君が誘ったかもしれないけど、私達1人1人が参加することを望んだんだ。それで君が責任を感じることも、責任を負うこともない」
「そうか・・・いや、そうだな。私は良い仲間に恵まれたようだ。それに私が守りたいものも多くできてしまった、見て見ぬふりもできなくなってしまったな」
男は目頭を押さえ、涙ぐんだ表情を見せないように上を向いた。
「見て見ぬふりなんて、するつもりもない癖に・・・冗談も上手くなったの?」
「ハハハ、霧峰。君こそ冗談が上手くなったんじゃないのか?」
「フン、だ」
大声で笑った男を変な物でも見た、という表情でそっぽを向く全身を布で覆っている少女。しかし、そんな和やかな時間は長くは続かない。
「生きるか死ぬか。なんてそんなことはない、絶対に生きて帰ってくるぞ!」
「オォォォーー」
そして、青グループの彼らは、他者のために死地へと踏み込んでいく。
黄グループ
「我々の役割は、分かっているな?」
「問題ない、全員準備はできてる」
「しかし・・・本当に作戦通りに進むのだろうか?」
「大丈夫だ、とまでは言わないが、信頼するしかないだろう?彼らも自らの命がかかっているのだから」
「死者など出してたまるものか。俺たちは人殺しをするのではない、このふざけたゲームから人を救うために行動するんだろ?」
黄グループの中の会議室で、彼らは語り合っている。それは単純な正義を語り合っているのではない、人を救うため、人を殺させないために語り合っている。
「まぁ、作戦上では人は絶対に死なない、誰かがミスでもしなければな」
「・・・この中の誰かがミスをするとでも言いたいのか!?」
「そうではない、ただミスをすれば人が死ぬ。そういうこともあるだろう、そうならないように細心の注意を払わなければいけない」
「然り、だが我々がミスなどするはずもなし。気を引き締めろと言っているのだ」
「・・・無駄話もそろそろ終わりだ。さて、我々も向かうとするか」
「我々にも矜持があるからな。矜持を守るためならば緑グループと参戦することもやぶさかではない」
「そうだな・・・行くぞ!!」
黄グループのメンバーたちも、死地へと向かって行く。そして彼らは自らの力を以って決戦に大きく介入していく。
緑グループ
「決戦まであと1時間半というこの重要な時間に皆さんに集まってもらったのは、他でもない決戦の作戦を話すためです」
「それはいいが、池田さん。あんたの作戦に従うかどうかは、こっちが決めさせてもらうぜ」
決戦だというのに、グループリーダーを支持していない者も多くいることを示すような男の発言に、賛成するように頷いた者も多くいた。
「それは・・・構いませんよ。あなた方が作戦に関わらなかったことで私が死に、あなた方が死亡しても私は何も思わないし、あなた達も何も思う必要はないです。ただ、私達両方が死ぬ。という可能性を考えないのであれば、是非そうしてくださっても構いません」
「そっ・・・それはっ・・・すいませんでしたぁ!!」「すっ、すいませんっっ!」「こんな時に・・・ごめんなさいっ」
般若の形相というのがこれほど似合う顔もないだろう。というような怒りの表情は、反骨心を見せていた彼らを謝らせるには充分で、彼らが謝ったと同時に女性の般若の形相は消え去っていた。
そのため謝った者の中には「幻想を見ていた」というように認識した者も多かった。
「別に謝ってくれれば気にしないわ。じゃぁ作戦を説明するわね、皆には危険がないような作戦だから、安心して聞いてちょうだい。それでも嫌だったら、強制はしない。ただ、勝率を上げるためにできるだけ沢山の人に参加してほしいの。それだけは、分かって頂戴」
グループリーダーの女性は、瞳に涙をためて、そう言葉を切った。
数分後、作戦を聞き終わった緑グループのメンバーたちは、作戦で自分たちが死ぬ確率が低いのを認識したためか、一様にやる気を出し始めていた。
「そんぐらい、やってやるぜっ」「俺達にそのぐらいできなかったら、なにすんだよ!」「俺達だって、そのぐらいはできるさ、なめられてるわけにはいかないんだよ」
そして、緑グループの集まっていた彼らは、大量の銃を持って戦場へと向かって行く。
彼らが銃を持って並んでいる姿は、まるで長篠の戦いの織田信長・徳川家康連合軍の様だろう。3段撃ちでも馬防柵もないが、彼らは銃を持って立ち並ぶのだから、似たようなものだろう。
黒川瑞樹によってさらに大量に生み出されたアサルトライフル100丁と、マガジン300個はほぼ全てが彼らに託されることになった。(彼らは作戦で重要な役割を果たすことになるのだが、それはまた今後の話だ)
そして、全てのグループの準備が整った。
2nd season最後の“決戦”が始まる。
全グループグループフィールド全体『DECISIVE BATTLE』
遅れました、本当にすいません・・・




