Episode 26宣戦布告
「・・・やっと1人覚醒したー!!・・・多分私が最初だよねっキングに褒められる!?」
無数のモニターが囲んでいる部屋、その中に1人だけいる人間の少女は、その可憐な顔立ちを最大限喜悦に歪ませていた。
「電話しよーっと・・・でも、キングに怒られたら・・・まぁいいか」
そして、ノートパソコンのモニターに表示されたのは、鮮やかな金髪の男だった、そして頭には王冠を冠っている。さらに金の玉座に座っている男は、モニター越しでも大きな威圧感を放っている。
『No.6。いや、シンクか・・・どうした?緊急以外での通話は禁止にしたはずだが』
「充分緊急ですよ。うちの第6支部の中の参加者1人の異能が覚醒しました」
『・・・そうか、早かったな・・・シンク、お前には期待している。今後も励んでくれ』
「はい、わかりました」
モニターの映像がプツリと途切れる。
その瞬間に、張りつめていた威圧感は消え、少女は深い息を吐きだした。
「やっぱ電話しない方が良かったな、メールで十二分に良かった」
少女はデスクチェアに乗って、腰の位置を探る。
「よっし、なんで異能が覚醒したのか、調べなきゃいけないからね。ナノカメラが上手く働いてくれていればいいんだけど」
そう言って少女は多数のモニターとpcを操り、状況の解析をしっかりと行っていく。彼女の仕事はなかなか終わることがない。
「また失敗しただと、どうなってる!?」
暗闇に包まれた部屋には、怒号が響きわたっている。部屋に付けられた無数の傷は、どんどんと増えていく。
「どうなったもこうなったもないわよ。あのあっし野郎は見つかった挙句に捕らえられて、今は捕まってるのよ」
「だが、奴にはあの異能があったはずだ。奴は誰にも詳細を語らなかったが、体を液体にする異能だったことは知っている。それで抜け出すことは出来ないのか?」
「連絡は取れないことはいわ、あのあっし野郎に小型のトランシーバーを渡してるし・・・・・・連絡は取れるでしょうね・・・」
少し哀愁漂う様子の口調の女性は、男に睨まれ見咎められた。
「俺をからかうな、お前が既に連絡を取っているんだろう?・・・で、どうしたんだ」
「話にならないわ。慣用句的な表現じゃなくて、言葉通り話にならないのよ」
「どういうことだ、あいつは口調は変だったが会話できないわけではなかっただろう?」
「あの、な、やんす、あっし口調は変だったけど、会話は出来た。けれど、今はもうできないわ」
「今は、ということは会話を制限されているとかか?」
「違うわ。奴らあのあっし野郎が会話ができなくなるぐらいにまで、精神を壊したと考えた方がいいわ」
「そうか・・・そうか!!」
「キレてるとこ悪いけど、私はお暇させてもらうわ。で、何か用件でもある?」
男が近くにあった物を叩き壊し、部屋の奥にある破損物の山に投げ込まれる。
女性は、さっさと部屋を出てしまいたいという風に、体が扉の方に向いている。
「緑グループに宣戦布告をする、戦闘できる奴を集めろ。それと宣戦布告の言葉を伝えるための異能使いもな」
「宣戦布告ぅー?まぁ逆らわないけど、そんなことして意味なんかあんの?」
「意味なんて必要ない、必要なのは緑を潰したという結果だけだ」
「緑には家族もいるんじゃないの?別に踏み込むわけじゃないけど・・・」
「家族だとは言っても、ここ数年は一切会っていない。情が消えるには簡単なことだ」
「まぁいいわ、私たちが勝てばいいだけだし。それで、灰崎。あなたも前線に出るつもりなの?」
「当たり前だろ、他人に任せて失敗するんだ。俺がでなきゃ意味がない」
「私としてはグループリーダーに先頭には出てほしくないんだけど、そういうわけには行かないわよね?」
「当然だ、そうじゃなきゃ意味がない」
「わかったわよ、じゃぁまた」
そう言って女性が出て行った部屋には、静寂だけが残される。
3時間後、完全に準備が整ったため、男が数週間ぶりに外へと出る。
そこには、赤グループのメンバーが全員集まっていた。彼らは完全武装をしていて士気も上々、すぐにでも攻め込みそうな勢いだ。
その中を男は堂々と歩いていく、そこには王の風格とでも言うものが備わっていた。
用意された壇上に立った男は、様々な異能によって、その声をグループフィールド全体に届けるマイクとスピーカを見て、大きく息を吸い込んだ。
「我々赤グループは緑グループに対して、宣戦布告を行う!!」
バカでかい声が、グループフィールド中に広がっていく。
スピーカーに最も近い赤グループの面々が大丈夫なのは、事前に用意された耳栓を装着しているからに他ならない。その耳栓を外せば彼らの鼓膜は呆気なく吹き飛ぶことになる。
「大義名分も、理由も必要ない。これはバトルロワイアルであり、戦う理由など欠片も必要ではない」
スピーカーから放たれる声は一層大きくなり、それは赤グループの鼓膜を破壊しにいっていると言っても過言ではない。グループリーダーの男が耳栓を付けなくても大丈夫なのは、耳の周囲の空気だけ【■■】しているからだ。
「邪魔するグループは赤グループが徹底的に潰す、潰されたくなければ自フィールドで大人しくしておくことだ。別に同盟を結んだって構いはしない。我々に潰されたくなければ無駄な事は控える方がいい」
その声は憐れんでいるようで、挑発しているようでもある。
しかし、強い威圧感は変わらず存在していた。
「今回の戦いには、赤グループのリーダーである俺も出る。必ず緑グループリーダーを殺し、緑グループを完膚なきまでに叩き潰す!」
緑グループリーダーが死んだら、緑グループは全員死にます。などと発言をする者はいない、そんなことを言えば、体を八つ裂きにされた挙句に塵になるまで【■■】されるだろう。
「俺の異能は【分裂】だ。今から見るものを見て、戦うか野垂れ死ぬかを選ばせてやろう」
マイクには、【拡散】という異能と【遠距離】という異能がかかっていた。補助異能としては最高レベルの効果を持つ【拡散】は、運悪く【分裂】にも効果を発揮してしまった。
そして範囲を10メートルに制限されている分裂の効果範囲を、【遠距離】は莫大な距離まで上げた。
そして、男の異能によって中央塔が真っ二つに【分裂】させられる。しかし、【拡散】の異能が効果を発揮した【分裂】の異能は、さらに中央塔周辺の地面を、赤グループから緑グループまで一直線に【分裂】させた。
一連の動作を眺めた男は、何ら問題はない。という顔をして、話を続ける。
「体を分裂させて死ぬか、あいつに殺されるか。自分たちで3日後までに選ぶんだな」
そう言って、男は話を終わった。
????、赤グループグループフィールド『DECLARATION OF WAR』
すいません、1日遅れです。




