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Episode 23黄グループの強さ

その日、人間は初めて岩を創り出した。

岩を創る、それは普通の人間には不可能どころか、考えることすらしない愚行。

人間に岩が創り出せるはずもない。という全く常識的なことを言うだけで、そんな夢想は簡単に崩れる。

確かに岩が使われている建物は多く存在している。だがそれは、元の巨岩を切り出して作られた偽物に他ならない。

その日、その男は、岩を無から創りだした。

その巨岩は、今も黄グループのフィールドの一部を覆っている。


「行くぞ、誰も死なせないための戦いを」

「俺たちは利を取るわけではない。ただ死の運命にありそうな人たちを救うだけだ」

「誰にも認められない戦い。カッコいいぜ、ノってきましたよー!」

「調子に乗りすぎだぞ、バカが。だが、緊張しすぎないのはいいことだ」

「それじゃ、行きますか?中央塔に」

「そうだな・・・俺だけは遅れそうだが」

「奥の手ですよ厳太さんは、最悪中央塔を壊すことにもなりかねませんから」



「黄グループが動いた?今の中央党の防衛力ではギリギリだぞ?」

「こんな時に・・・会議を行うしかないが」

「あぁ、疑心暗鬼ほど怖い物はない」

「だが、仕方がない。か・・・」

緑グループの会議室に集まった面々は、大分疲弊しているようだった。それはそうだ、何をするにも疑いの目を向けられる。そんな中で人間が疲弊しないわけがない。


「早く裏切者が名乗り出ればなぁ~」

深い感情が込められたその言葉には、会議室のメンバー(一人以外)が思っていたことを代弁していた。

「夜もなかなか寝付けないし、かといって起きていれば疑われる。どうすればよいのでしょうかね」

「仕方があるまい。それより黄グループの話だ」

「9人、ですか・・・多いわけではありませんが、倍以上の人数に勝てると思っているということは、中々の精鋭でしょうね」

「弱ければ弱いほどいいのだがな・・・そういうわけにはいかんだろうね」

「あちらも命がかかってますからね、それにしてもグループリーダーは何をしてるんですか?」

「また変なことをやって無ければいいのだがな」

そして会議室では、議題から遠く離れたグループリーダーの女性への愚痴が、数十分にわたって交わされることとなった。



「麻酔弾も当たらなければどうってことないってな、って聞こえちゃいないか」

「彰吾、殺すなよ。お前が快楽殺人など起こされては、たまったものではないんだぞ」

「俺、死なないですからね、痛みは感じますけど・・・それにしてもあいつ、緑グループに入ったのか?」

「あいつって誰だあいつって、あの3回戦で戦ったやつでもいたのか?」

「このマシンガンあるじゃないですか、多分あいつが創ったんだと思いますよ」

「なんだ、負けたのか」

「仕方ないじゃないですか、麻酔弾だなんて予想できませんよ」

「お前は死なないだけだからな」

「うっせ、でもこれ使えませんかね?」

中央塔の下部は、すでに黄グループによって制圧されていた。だが、制厚された緑グループに死傷者は出ていない。


「しっかし、上に行った奴ら、どうしてますかね?」

「さあな、だが全員攻守が整ってる。うちの中でも精鋭ぞろいだ」

「厳太さんもまだ到着しそうにないし、どうします?」

「待つしかあるまい、それが俺たち志願組の仕事だ」

「撤収するための準備でもしときますかね」

傍から見れば暢気に会話しているようにしか聞こえないだろうが、素早く手を動かしている。


数分後、上部と下部を繋げているエレベーターから人が出てきた。

「おう、終わったぞ」

「銃に頼りっきりでしたね、だから私たちの盾を破ることもできない」

「しかたねぇさ、あんな武器があるなら調子に乗ってもおかしくはねぇ」

「別に調子に乗ったわけではないと思いますけど」

エレベーターから出てきた彼らは


「あっ厳太さん、遅かったですね。もう終わっちゃいましたよ」

「俺が出ないのは良いことだ、誤って人を殺しかねないからな・・・さて、目的は達したし、帰るか」

「そうですね、あまり長居しても無駄ですし、緑の奴らを運んでから帰りましょうか」

「ここに留まられても面倒だしな、まぁ天災みたいなもんだと思ってあきらめてくれればいいが・・・」

「欲をかきすぎなければいいんですがね」

彼らは個人的な欲で行動しているわけではなく、「人を死なせない」という目的の下で行動している。

それは中間の位置にいるということであり、中間にいることは難しい。中間というのは、いざというときに他を御せる武力がなければ意味がない。

しかし、武力があれば応じて人は振るいたくなるものだ。だがこの黄グループは武力を持っていても横暴な振る舞いはしない。それは、真の中間に位置していると言えるだろう。

そして、この黄グループの行動によって、2nd seasonは大きく様変わりしていくことになる。


『全体放送、これにて全てのグループが中央塔に入りましたので、2nd seasonのルールが一部変更になります。つきましては、これから始まるシンクの放送をお聞きください』

機械によって作られた合成音声、少し不気味なその音声が、グループフィールド全体に広がっていく。3回にわたって放送され続けたのは、誰も聞き逃すのは許さない。という少女の意向による物だろう。


『はろはろ~シンクだよ~。みんな久しぶり~、緑グループの一部の人以外は大分久しぶりだね~』

暢気そうな声が、血と死にまみれる戦場に広がっていく。

それは変なようであって、正しいようでもあった。

『さっき聞いたと思うけど、ルールが改変されま~す。まずは、中央党のポイントが跳ねあがりま~す』

その言葉に対して、聞いたほとんどの人は、訳の分からないことを聞いたような顔をした。だが、グループを束ねるグループリーダーは、それぞれの反応を見せる。

赤グループのグループリーダーの男は獰猛に嗤い。青グループのグループリーダーの小汚い服を着た男性は、困ったような表情を見せる。緑グループのグループリーダーの女性は何とも言えないような顔をした。そして黄グループのグループリーダーの大柄の男性は拳を机に叩きつけ、それは怒り心頭という感情を表していた。


『それから~中央塔の構造もちょっと変わりまーす。ちょっとした迷路のようになってるから、楽しそうでしょ?・・・聞きたがってる人も多いとは思うけど、中央塔のポイントは10から30ポイントに上がったよ。だからね、今まで占拠してきた緑グループには200ポイントの追加してあげるよ。あれ~みんなもっと喜べばいいのに、変なの~。クスクス』

そして少女は、その残虐性をさらけ出した。戦闘を過激化させるだけのルール改変の説明は、数分後、何事もなく終わった。

少女の手腕はまるで、操り人形を巧みに操る操演者の様だった。


シンク、全体放送『PUPPET MASTER』

何が変わるというわけでもないんですが・・・戦闘が過激化するだけです。

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