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Episode 15奇襲(する側)

何かおかしい・・・


中央塔まではあと数十メートルの距離もないのに、話し声はおろか、物音ひとつしない。

同じグループメンバーの異能で、音を消しているのであればいいが、周囲を警戒しているはずのグループメンバーの姿すら見えない。


何かが起こっている・・・。そう判断するには十分すぎるほどの異変だ。


中央塔の外からは、中の様子を伺うことは出来ない。

灰色のガラスは中の様子を映し出すことはなかったが、中央塔の中が荒れていることは理解できた。

中央塔の中にあるはずの物が散乱していて、中央塔の外まで飛び出していれば、「わかるな」と言う方が無理だろう。

中に何のグループがいるかは知らないが、近くに倒れ伏している同じグループのメンバーがいることだし、中央塔の内部にいる人間が私に友好的だとは考えにくい。


今すぐにでも緑グループのグループフィールドに帰りたかったのだが、このままでは緑グループの戦力が著しく下がってしまう・・・・・・。多少なりとも中央塔の内部にいる他グループの人員を削っておかなければ・・・・・・。


私は中央塔の内部をしっかりと確認するために、4つしかない常時開いている扉へと近づいていく。

『私は赤グループのフィールドの方から来たため、緑グループのフィールドの方の扉とは真反対になってしまうが、逆に考えれば赤グループは撤退したらしいので、中央塔の内部にいる他グループの奇襲をつけるかもしれない』


しかし、近づきすぎて気が付かれでもしたら奇襲どころではなくなってしまうので、中央塔の外壁から数十メートルは距離を置きつつも中の様子を伺う。


中には軽く見ただけで十人程他のグループのメンバーがいる。数十メートル離れているということで表情などは分からなかったが、何か話し合っているようだったが、異能で隠しているのか、話し声は耳を澄ましても一切聞こえてこない。

私は気づかれてはいないようだが、あの人数で襲ってこられたらひとたまりもない。

中央塔の防衛をしていたはずの同じ緑グループのメンバーと倒された赤グループのメンバーは、ほぼ全員が地べたに倒れ伏していた。

ほぼ全員と言うのは、物陰などに隠れているグループメンバーが他にいる可能性を考えたのだが、もうそんなグループメンバーは残ってないような気もする。


とにかく今が奇襲を行いやすいタイミングと言うのには間違いはないはずだ。

まずはアサルトライフルにどれぐらいの弾が込められているかが分からないので、マガジンを交換する。


マガジンに込められているのは弾数は30発なので、1人につき3発以上は絶対に当ててはいけない。もちろん時間をかけて撃ってしまえば簡単なのだが、そこまで時間をかければ対応されてしまうだろう。

あとはシールド系の異能を持っている人がいなければ完璧なのだけれど、高望みしすぎだろうか?

常に異能を放出していると疲れるらしいし、いたとしても今は止めていてほしいものだ。


うつ伏せになり、スコープに目顔を近づける。

正確に狙う必要性はないが、ばら撒いたとしても効果は得られない。てきとーではなく、適当に。

下半身、それも足を狙う。

すでに消音機(サイレンサー)は外している。銃口が伸びることで飛距離が伸びるという利点は、今の状況では必要ない。

私は息を吐いて頭を空っぽにする、銃を撃つのに感情は必要ない。気分的には1人戦場に残された兵士というところか・・・

そして私は・・・・・・引き金を引いた。


ズガガガガガガガガッッッ


一瞬だったが、弾を出し切った感覚は残っている。反動が筋肉から骨へと伝わり、体が内側から揺れているが「やった」という高揚感にも似た感覚が私を襲う。

足元を狙ったためか、他グループのメンバーがいた場所には粉塵が舞い散り、白い煙となってその場所の様子を伺え知ることができなくなっていた。

麻酔が効いてくるまで少しの時間がかかるだろうから、まだ安心することは出来ないが、私は元から警戒心を失くすつもりはなかったため、すぐに予定通り弾を出し切ったマガジンをアサルトライフルから抜き取り、新しいマガジンをアサルトライフルに挿入する。


引き金を引いてから・・・2秒。

スコープで白い煙の向こうを覗いてみようとするが、やはり人影は写らない。

麻酔弾はいつもより多少強力なものを使用したけど、数瞬の間に眠らせるほどの効果はないはずだが・・・・・・?


引き金を引いてから・・・5秒

何か嫌な予感がする。何かを見落としているような気味悪い感覚も・・・・・・それはさしずめ痒いところに手が届かないような感覚だった。しかし煙が晴れるまではその気味悪い感覚の理由を突き止めることは出来ないため、私は待つことしかできない。


引き金を引いてから・・・8秒

スコープ越しに白い煙がようやく引いていったのを確認した私の目には、たった1人の少女だけが倒れている光景が写りこんできた。


私は混乱した。

そもそも他グループと思われる少女一人だけが倒れている。なんていう状況には不明点が多い、他にいたメンバーがどこに行ったのか分からない上、そもそも少女なんていなかったはずだ。


一旦落ち着け。そうやって自分自身の心に平静をもたらす。

しかし、全ては手遅れだったと、数十秒後の私は悟ることになる。

けれど、その時の私は考えを巡らしていたため、そんなことには全く気づきはしない。


少女一人だけが倒れている。この状況になる可能性としては・・・・・・

1.何らかの理由で少女一人だけに麻酔弾が当たり、仲間には見捨てられた。

2.あの場所には最初から少女しかいなく、少女の異能で幻覚などを見せられていたが、少女だけが麻酔弾に当たった。

3.少女が異能で助けに来たが、仲間を助けたところで麻酔弾が当たった。(転移系の異能)


1番と3番は有り得なそうだ。

理由としては、1番は煙に揺らぎが見えなかったからで、3番は転移なんかじゃ銃の速度には間に合わないということだ。

人が何人も移動すれば煙は揺らいで、不規則な軌道を見せるはずだし。銃が発射されてから転移なんか間に合うはずがない。


つまり、消去法で残った。2番のあの場所には最初から少女しかいなく、少女の異能で幻覚などを見せられていたが、少女だけが麻酔弾に当たった。ということだ。

しかし、それであれば私は銃を撃つように誘い込まれたということになる・・・そこまで思考した私は、拳銃を腰のホルスターから一気に引き抜いた。


「よく気づいた。だが・・・遅すぎるな」


黒川瑞樹、中央塔直近『SURPRISE ATTACK』

14話と15話、書く時間に3週間ぐらいの間が空いてます。

ちょっと病気になってしまいまして・・・

コロナで良かった。かも・・・

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