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Episode 1黒川瑞樹

プロローグはまだ続きます。

黒川瑞樹は、普通の女子高校生だ。――いやだった。というべきか・・・

この非―常識的な空間の中に、普通の女子高生は似合わないだろう。

500人以上が寝かせられていたこの部屋には、今も熱気が部屋中を充満している。

予想外にむんむんとした暑さに襲われ顔を顰めながら、彼女は自分がなぜここに居るのか?ということを考え始めた。

それは遅すぎる判断だったが、彼女の周囲にいる思考放棄した大人たちよりは、幾分かまともな選択だった。


黒川瑞樹は1人っ子である、故に慈しむ兄弟もいなければ、口論をする姉妹もいない。

黒川瑞樹は裕福な家に生まれた、しかし両親が研究者だったため、家族が1年に何回も揃うこともなく、会話らしきものは皆無だった。

そして、彼女に残っている家族らしきものの記憶は、6歳のときに家族で行ったピクニックが最後だった。


黒川瑞樹は名門私立女子高校である、白艶美女子高校にその足で通っている。

今日の朝も適当に冷蔵庫の中に入っている物を片付けて・・・主に冷凍食品などだが、冷蔵庫の中に入っている冷凍食品も数を減らしてきていた。

そして電子レンジのタイマーをセットし、鼻歌を歌いながら制服に着替えをすませ、電子レンジの中で、回転する冷凍食品を眺めることが、黒川瑞樹の日常だった。


日常が非日常へと変化したのは、制服を着替え終わり、朝食を食べ終え、近くの駅に向かう為に家から出てから数分後、黒川瑞樹の日常は謎の人物によって、非日常へと変化させられた。

黒川瑞樹は眠らされて、黒色のハイエースに連れ込まれたのだ。

勿論クロロホルム(CHCl3)などという、薬品をハンカチに吸い込ませたものではない。ケタミン(C13H16ClNO)という強力な麻酔薬を注射で打ち込まれたのだ。

それによって意識が落ちた黒川瑞樹は、周囲に全く人のいない状況の中、黒服の人達に簡単に連れられて行ってしまった。

そして黒川瑞樹のその日最後の記憶は、注射を打ち込まれた首筋に、鋭い痛みを感じて悲鳴をあげかけた瞬間というものになっていた。


瑞樹の意識は急速に戻ってきた、暗い室内、何処かのホールのようだが何かが違う。

息を潜めるようにして呼吸する人々の息遣いが、生々しく聞こえてくる。

皆、壇上に立つ『シンク』と名乗っていた少女と、目を合わせないようにしている。


「今ここにいる皆さんは、私達から異能を授けられました。異能の種類は様々ですが、強力な超能力と思っていただいて結構です。」

異能という言葉には馴染みがないが、強力な超能力を発動できるというのは分かった。実際に炎出していたわけだし、科学的には証明できるが、科学でやったってなにも意味がない。

つまり私を攫ったのは誘拐などではなく、何か異能を開発した科学組織か、異能という超能力を他者に与えられるどこかの組織だろう。

組織だと断定したのは2つ理由があるのだが、今さら言う必要はないだろう。

そうなってくるとここが日本であるかも怪しい。シンクは金髪で白人なので、欧米人のようだし・・・・・・・・・


「皆さんには、異能を使って、生き残りをかけたバトルロワイアルを行ってもらいます。」

そう言われた瞬間に、私の体は蛇ににらまれた蛙のようにピクリとも動かなくなった。

それはどこからか強い視線を感じたためだったが、それについて黒川瑞樹は認識できていなかった。

しかし、体が動かなくとも脳は動く。バトルロワイアルという単語に、瑞樹は大きく反応した、戦闘という単語よりも、戦いという意味を表している言葉だと、瑞樹は感じた。


「おいおい、何、適当なこと言ってんだぁ?・・・異能だかバトルロワイアルだかなんだか知らねぇが、俺らを元の場所に返しやがれ、さもないと・・・なぁ」

「ふむ、コード5431、名前は源田直也、年齢は32歳、職業は土木作業員・・・そして異能は身体能力3倍ですか・・・まぁ雑魚ですね・・・・・・ですがステージ上では、異能が使えますから、異能で強化された身体能力でも使って、私に対抗してみせてください。」

売り言葉に買い言葉だと瑞樹は思った。戦いをするにしても男性の体は大きく、シンクの体は小さい。それだけでも分析が得意ではない人でも、簡単に男性の方が有利だと分かる。

しかし、シンクが戦闘に強い異能を持っていた場合、男性が敗北する可能性も存分にある。


戦闘はすぐに終わった、理解できない異能という武器を駆使して戦ったシンクと、己の拳にただ異能を乗せただけの男性では、男性に勝ち目は存在しない。

空中で、異能によって突如止まった男性の拳、瑞樹が推測するに、先程出した炎は摩擦によるもので、今拳が止まったのも、摩擦を操り拳を止めさせたのだ。本気になればもっとすごい攻撃を放てるだろうに、距離が制限されているのだろうか?


人が燃える匂いは、牛や豚などとは違い、強烈な悪臭が漂う。

汗の匂いは人の焼ける悪臭と混じり合い、鼻という五感の内の一つの器官を破壊する。

気を失うことで人間としての心を保とうとしたのか、気を失いそうになっている人も出てきた。


シンクはさらに男性を燃やし、灰にしていく。摂氏3,000度の炎は男性を確実に灰にする。

祖父母の火葬のときに匂った嫌な匂いが、鼻を犯してくる。


「私と戦いたかったらどうぞ、ですがこの男と同じような目に合うことを、覚悟してくださいね!」

シンクはそう言うが、男性のようになりたくないので、そんなことをするバカはいないだろうが・・・

今やこの場の全ての主導権は、シンクが握っていると言っても過言ではないだろう。


「皆さんの異能は、皆さんのポケットに入っている封筒の中に記載されています。」

周りにいる人たちはそれぞれのポケットへと手を伸ばす、しかし瑞樹はポケットへと手を伸ばそうとはしない。周りに人の眼がある以上、ここで封筒を出すのは得策ではないと考えたのだ。

しかし、周囲を伺うようにすることもしない。

黒川瑞樹は姑息なことが嫌いなのだ、まぁそれほど誠実というわけではないが、自身が生き残るために考え、必死にはなれる人間だった。


そして自身の右の手の平に書いてある369という数字に従い、369という番号が書いてある扉の前に順番に並んだ。

そして黒川瑞樹は扉の中の暗闇へと吸い込まれた。


そして黒川瑞樹は、長く続く戦闘へと巻き込まれていった。


バトルロアワイアル、1st season『START』

戦闘は次回から・・・お楽しみに!

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