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Episode 8赤との激戦【ⅰ】

私は木々の中を他の戦闘員達よりも早く、颯爽と走り抜けていく、これは森の中を走るのが元々得意なのと、日々のランニングトレーニングの成果だろう。

けれど、私に追いついてくる人もいる、そういう人は日頃からジムにでも通っているんだろう。と勝手に推測するが、そこまで外れているわけではないだろう。(空中に浮かんで進んでいる人を除く)


私達は数分後には中央塔付近と、緑グループ自陣フィールドの堺まで来ていた。(自然の緑が途切れている場所)

生活拠点からここまで約2キロ弱あるのだと考えれば、恐ろしい行進速度だと思う。しかも、荒い息をしている人はいるが、何処かに寄りかかったり、地面に倒れている人はいない。

普通の運動をしていない会社員であれば、2キロも山道を走れば息は絶え絶えになり、そこらにある木なんかに寄りかかってしまうだろう。 


『緑グループ戦闘員に告ぐ、これから中央塔制圧作戦を発表する。作戦の内容は・・・・・・』

作戦の内容は、幾分か小難しい言葉が並んでいたが、要約すればこうだ。

・まずは中央塔付近にいる赤グループを一斉に倒す。

・その後戦闘員は8チームに分かれ、4チームは北口、南口、東口、西口から中央塔のエレベーターを昇り、残りの4チームは北口以外の侵入経路と、エレベーターがある中央塔内部を守る。

・チーム編成は中央党付近の赤グループを倒した後で、トランシーバーによって連絡する。


よく考えれられているような作戦だが、注意してみれば穴があることに気づく。

例えば、8チームに分かれるところだ。チームメンバーの異能の相性が悪ければ、攻撃力は相殺され、悪ければ相打ち、良くても隙を突かれる事態になる可能性がある。

それは全てにおいても言えるので、仕方がないと言えば仕方がないのだが・・・

それに中央塔の上に昇った4チームが全て倒されれば、どうするつもりなのだろうか?

まぁどうにかするのだろう『上の人たちは戦場を知らないのだ』という有名なセリフも、私の口から飛び出すことはない。トランシーバーの向こう側にいる人たちも1st seasonを生き抜いたのだ。戦場を知らないなんて、私の自分勝手な言葉を口に出すわけには行かない。


私はその作戦を聞き、吟味した後、すぐに緑グループの陣地から飛び出した。私が飛び出したことで、他の人たちも付いて来てくれた。

私には見られているという不快感が襲ってきたが、頭を振って戦闘に集中する。


中央党付近は流石に何もないわけではなく、某青いタヌキが出てくる漫画で、空き地の真ん中にある土管ではなく、隅っこに蓋つきであるドラム缶のようなものがそこら中に転がっていた。

もちろん片方の蓋は空いているので、入ろうと思ったら入れるのだが。

私はそれらに身を隠しながら、周辺にいるという赤グループの影に目を凝らす。


ズガガガガガガガッッ

アサルトライフルの銃声が、私の銃ではなく他の戦闘員が持つ銃から聞こえてきた。既に交戦中のようだが、あのアサルトライフルがあれば、絶対に問題はないと確信している。

人間の習性として、音のする方を見てしまうのは、普通のことだ。しかし、私にはそれが当てはまらない。

銃声がしたって戦場に身を置いている者ならば、反応もしないはずだ、もしくはチラとは見るが、自分に関係がなければ、すぐに目線を戻したりだ。

ここに軍人が入れば、証明できたのだろうが・・・あの軍人には正直言って2度と会いたくはない。

あの軍人は私に少しトラウマ的な物を与えたからだが、別にトラウマで私が銃を撃てなくなるわけではない。

今この場で会ったとしても、私は麻酔弾をあの頭に大量にぶち込んでやるぐらいは簡単にできる。


いた・・・暢気に鼻歌を歌っている男・・・これはアサルトライフルだが、あの巨大なスコープが付いた試作品だ。ホップアップ機能をゼロにし、頭に照準を当てる。100メートルほど離れていたが、私のスコープの照準限界はもっと長い。


パスッ

追加で付けていた消音機(サイレンサー)が思わぬ効果を発揮してくれたらしく、まるでエアガンのような銃声だったが、男はスコープの向こうで倒れ伏した。


男とチームを組んでいた他の男が、急に倒れた男を見て、慌てて物陰に隠れようとするが、すでに遅すぎる判断だ。

私のアサルトライフル、通称スカーが男に向かって火花を噴いた。

パスッ

男は物陰に隠れようとした瞬間に、そのまま崩れ落ちた。ドラム缶の向こうなので詳細な情報は掴めないが、私には確かな手ごたえがあった。


私はドラム缶に隠れながら、次の標的を捜していく、ほふく前進ではないが、それに近いスピード、いわばカメのようなスピードだ。

現実のカメは結構なスピードが出せるので、兎と亀の物語に出てくるカメぐらいのスピードだと、思ってくれればいい。

一メートル進むのに数秒かかるが、別に普通に走ってもほとんど問題はない。なぜならば戦闘服の迷彩自動切り替えによって、中央塔付近の灰色に合わせた迷彩になっているからだ。

1人だけズルをしているような気分だが、別にズルをしてはいけないとは言われていないので、全くの無問題だ。



数分後、私は赤グループを5人倒すことに成功していた。誤って同じグループのメンバーを撃ってしまったこともあったが、(もちろん冷や汗でだらだらになった)幸いにして同じ緑グループのグループメンバーには、麻酔弾の効果がないという仕様が上手く働いてくれたため、そのメンバーにも気づかれることなく、私のミスは私の心の中と、私の記憶の中だけに残ることとなった。

集中するために外していたトランシーバーのイヤホンを耳に付けると、中央塔付近の敵はほぼ一掃されたことが報告された。緑グループの戦闘員たちも全員生きているらしい。

しかし、緑グループの戦闘員の3人が、赤グループのフィールドに近いところで、ほぼ同時に気絶しているらしい。


私は危険だと思ったが、トランシーバから流れてくる命令には逆らえない。逆らえなくはないが、今後に差し支える可能性があるので、できるだけ逆らいたくはなかったが・・・・・・

一度中央塔に集まってから確認しに行くらしいが、『他のメンバーと協力して・・・』などと言う機械から流れてくる、私の全く知らない合成音声にバカみたいに従うのも、私の癪にも感にも障る。


私はトランシーバーの音量をゼロにして、耳からイヤホンを外す。

そして中央塔へ向かうのではなく、中央塔を横に見ながら、赤グループのフィールドの方へと一直線に走っていった。


黒川瑞樹、中央塔付近『BATTLE』

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