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Episode 6朝食と愛情と・・・

Episode 6朝食と愛情と

食堂の内装は何故か手抜きだった。この食堂を表すには社員食堂や、学生食堂などを思い浮かべてもらうしかないだろう。

プラスチックの机が10台ほど並び、緑色の丸椅子が乱雑に置かれている。

自動販売機には炭酸飲料や水やお茶、コーヒーなどといったものが、種類も季節も関係なく販売されている。

カウンターの向こうには池田さんがいたが、他には誰もいないので、池田さんは私が来るまで待っていたようだ。

「瑞樹ちゃん朝ごはん食べてないでしょ?ちゃんと食べなきゃ成長しないわよ」

成長期は既に過ぎているのだが、そんなことは関係ないらしい。しかも胸を見て言われるのだから、ムカつく。

確かに胸が、私の推定ではDかEの、池田さんほど大きくはないが、それでもBはあるのだが・・・・・・


「瑞樹ちゃん、胸のサイズAでしょ?・・・ちゃんと食べないと私みたいに大きくならないわよ」

池田さんはそう言って胸を張る、やっぱり胸は大きい。しかし、私は余計なお世話だ。と言おうと思ったが、私の心はバーニングしたらしく、真顔のまま池田さんに向かっていく。

扉を勢いよく開けると、小動物みたいに縮こまったが、私の怒りは止まらない。


「瑞樹ちゃん何するつもり・・・・・・アッ、アーーーー」

声は少し変な感じだが、別に卑猥なことなんて全くしていない。ただ頭を冷やせとばかりに、頭をグリグリしただけだ。


・・・閑話休題


池田さんに少し説教らしきものをした後、私は用意してあった朝食を食べる。

鮭の塩焼きに、ただの味噌汁、そして白米。それだけの簡素な朝食だったが、それらが私の口に入った瞬間、私の目からは涙が零れ落ちた。

「瑞樹ちゃん?どうしたの!」

池田さんが駆け寄ってくるが、私は反応しない。

口に入った朝食は少し冷たくなっていたが、けれどそこにある、人間の温かい感情を私は感じたのだ。

冷凍食品や、自分で作るご飯、それらは温かく、味は美味しい。けれどそこには、愛情は込められていない。

いくら美味しくても、愛情が込められていなければ、いくら食べても何も感じないのだ。

『1人で食べるより、皆で食べる方がいい』そういう内容の本を、昔読んだことがある。

しかし私には、一緒に食べる親どころか、その食事を作ってくれる人さえも、居なかったのだ。


この朝食は、普段食べている冷凍食品よりも、美味しくはない。けれどそこには確かな愛情が込められている。

人の事を想って作られたこの朝食は、理屈ではなく、確かにとても美味しい。



気づいたら、池田さんに背中をさすられていた。隣に座っている池田さんの目は温かく、私をじっと見つめている。

「気づいたのね、急に泣き出すから、どうしたのかと思っちゃった・・・いつか、私に泣いた理由、話してくれるわよね?」

「いやです、絶対に嫌です!」

今は優しかったが、私にとってはこの人は天敵みたいなものだ。弱みを見せると付け込まれかねない。それに・・・こんな話、誰かにしたって、信じてもらえないどころか・・・・・・いやなんでもない


美味しい朝食を食べた私は、未だ分かっていない情報を掘り下げてみるために、池田さんに質問を行う。仮にもグループリーダーなのだから、ある程度の事は知っているだろう。

「池田さん、ちょっと教えてほしいことがあるんですけど、いいですか?」

「もちろんいいわよ。瑞樹ちゃんなら大歓迎!」



「・・・・・・ハーッハァッーー・・・」

今、食堂の床で四つん這いになって、息を荒くしているのは池田さんだ。

私が質問攻めにしたことが原因なのだが、私に良心の呵責は一切存在しない。

それに池田さんを質問攻めにしたことによって、ある程度の情報を得ることができた。

最初に聞いたのは監視塔についてだ。池田さんが言うには、自陣のフィールドに入って来た他のグループの居場所や人数を探知できるらしい。さらには中央塔も同じことができるらしいので、中央塔を占拠し、ポイントのを一気に集めるのは、結構なハイリスク、ハイリターンだろう。

それに、自分のグループメンバーの居場所も探知できてしまうらしいので、監視塔を奪われれば、取り返すのは容易ではなくなってしまう。


次に池田さんに聞いたのは、ポイントの交換についてだ。何でも宅配便が関わっていると推測していたのだが、具体的な事は何も知らなかった。

ポイントでは食料、武器、装備などからお菓子や生活用品まで様々なものが交換できるらしい。1ポイントで梅、2ポイントで竹、3ポイントで松と言った風に分かれているらしい。

食料であれば60人の3日分、武器や装備だったら3人分、という風になっているらしい。

食料で表すと、梅は美味しくない、竹は普通、松は美味しい。という風になっているらしいが、今日の朝食は梅だったらしいが、普通に美味しかったので、調理をする人間によって差が出てくるのだろうと思った。


次に池田さんに聞いたのは、水などのインフラについてだ。今まではほとんど気に留めていなかったが、よく考えればおかしなことに気づく。

人間一人が1日生活するのに必要な水は約3リットル前後。60人もいれば、1日に使うのは水の量は約180リットルほどになる。それが4グループも居るのだから、1日およそ640リットルほどは必要になる。さらにお風呂なども入れれば、1日だけで1000リットルを軽く超える水を使用していることになるだろう。


1000リットルよりも、1トンと聞けば水量が理解できるかもしれない。25メートルプールは約360トンの水を貯めこむことができる。しかし、それがすべてきれいな水かどうかは保証できない。

もし、屋外に設置されているプールの水が、人が飲み水に使えるほど綺麗だと言う人がいたならば、私はその人に対して、プールの水をがぶ飲みさせる。

もちろん新しく入った水ならば、それほど問題はないだろう。しかし、プールの水は往々にして徐々に汚くなっていくものだ。冬になり、何かの水鳥が泳いでいるプールの水を飲んで、腹を壊さなかったなら奇跡というものだろう。


話を一旦戻す。池田さんが言うには、全て問題ないらしい。水は蛇口を捻れば出てくるし、電気は勝手に流れる、ガスも普通に使える、とのことだ。しかも配電盤なども生活拠点にあるらしい。

他にも池田さんにはいろいろと聞いたが、それほど重要ではなかったのもあれば、分からないと答えられたのもある。

私は食堂を出て、自室に帰ってトレーニングを再開した。


黒川瑞樹、生活拠点『INFORMATION』

愛情を表現してみました。

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