Episode 5武器生産
「ふむ・・・ということは君の銃は量産できる。ということかね?」
「はい・・・まぁ1個生み出すのに1分はかかるし、冷却時間もあるので、1時間に20個造れればいいところですかね・・・それに人殺しに加担したくはないので、実弾ではなく麻酔弾ですけど」
「それでもいい、早速80丁ほど造ってくれ」
銃の単位ぐらいは知っているようだ、これも年の功というやつだろうか。
嘘を交えたのは、単に信用できないからだけではない。それだけならば別に『造らない』と言うだけでいいはずだ。
しかし、私が誤情報をわざと流すことで、私の情報を誤解してくれるかもしれない。そうなれば私の有利性は揺るぎないものとなる。
先を見て二手三手打っておくことで、いずれはバレるかもしれないが、それでも簡単に負けることは無くなる。私は両親を助けなければならない。
私は部屋に籠って、アサルトライフルを造る作業に熱中した。というのは建前で、本当はトレーニングに勤しんでいた。もちろん部屋に鍵をかけているので、誰も入っては来れない。
最初の数分で銃はすべて完成したので、腹筋や背筋、腕立て伏せなどの機械を使わないトレーニングをしながら、【銃】という異能に、どこまでの自由度があるかを確かめていた。
アサルトライフルではドットサイトなどの、標的を赤い点で狙うものが主流だが、狙撃銃などでは、よくゲームに存在する8×スコープや6×スコープなどの、十字線が入っていて、十字の線の中心を狙うスコープが一般的だ。
ではアサルトライフルには、8×スコープや6×スコープは付けられないのだろうか・・・?いや、そうではない。別にアサルトライフルに6×スコープを付けているゲームだってあるだろうし、逆に言えば2×スコープをスナイパーライフルに付けているゲームだってあるはずなのだ。
銃をどうするかは、全てイメージのはずだ。この異能というシステムは、イメージが大きく活きてくる。
つまりグレネードランチャーや、ロケットランチャーいわゆるロケランなどは、イメージがしっかりとしてあれば、造れるはずなのだ。危険なので、造ろうとは思わないけれど・・・・・・
脱線してしまったので、話を戻す。
完璧なイメージがあり、銃に関係するものであれば、何でも造れる。そう考えた私は、アサルトライフルに、スナイパーライフルのスコープを付けるイメージで、アサルトライフルを生み出してみることにした。
スナイパーライフルはまだ造ったことがないので、成功するかは五分五分以下だが、何故か私は成功するような気がしていた。
思い浮かべるのは、スカー。スコープを取り付けるところに、バカでかいスナイパーライフル用のスコープが付いているようなイメージで、スカーを生み出す。
黄土色と黒のフォルム、予備マガジンは無し、スコープはスナイパーライフル用、オートの切り替え可能、総重量約2.3キログラム
そして出てきたのは、何かの漫画に出てきそうな、ゴツいスコープ付きのスカーだった。
最初は実験が成功したことを喜んだが、私はすぐ、なぜ成功したのかを考える。不確定要素ほど危険な物はないからだ。
拳銃にも同じことをやってみるが、成功しないどころか、ただの拳銃もでてこない。ということは何かを選んでいるような節がある。
私は次に行ったとき、必ず成功するという保証がなければ、私は2度と、このスコープ付きのアサルトライフルを生み出すつもりはない。出そうと思ったときに出せないのでは、咄嗟のときに出せない可能性がある。それでは私にとっては無意味なのだ。
拳銃とスカーの違いは何だろうか・・・1番は大きさだろう。拳銃は大きくてもアサルトライフルほど大きくははない。
銃弾は同じのを使う場合もあるし、速度だって改良すれば同等にならなくもないはずだ・・・・・問題なのは連射性だが、電動であればそれもクリアできるはずだ。
では何が違うのか、スコープ部分を見ればそれは一目瞭然だった。
スコープが取り付けられる場所を、俗に何々と言う。それが拳銃には存在しないのだ。
それは当然だろう、なぜ拳銃にスコープを付ける必要があるのか?近距離、いや超近距離武器の拳銃は、軽くて使いやすい武器だ。スコープなどという重い物を付けて、わざわざ狙いを付ける必要性は皆無なのだ。
そのことに気づけたのは良かったが、少し頭の柔軟性が悪くなっているようなので、今後気を付けなければいけない。
数時間後、私は予定通りにアサルトライフルを80丁渡した。もちろん銃弾は全て麻酔弾に変更されている。麻酔弾は私のイメージによって、緑グループを撃っても効果がない、となっているので、仲間割れが起こっても問題ない。
私は結構な汗を流していたが、それはトレーニングで出た汗もによるものだった。私としては異能行使による疲れだと認識してくれれば重畳なのだが、これが吉と出るか凶と出るかは分からない。
私に対する誤情報が入り混じっていれば、正確な情報もかえって裏目に出やすくなる。ただし味方もだますことになるので、そこは注意が必要だ。
しかし、80丁のアサルトライフルに、300個の予備マガジンとは、そこまで数が多いわけではないが、グループの人数は約60人、戦闘できるのは約40人だとしても、1人に2丁。
建物に置いて置くのかもしれないが、それでも少し多いような気がする。まぁ緑グループには効果を為さないのだから、問題ないと言えば問題ないが・・・
しかし、緑グループの戦力が一気に急上昇したのは間違いない。
銃を持った集団と、銃を持っていない集団、勝つのはどちらかと問われたら、ほぼ全ての人が銃を持った集団と答えるだろう。
それだけ銃は強力なのだが、緑グループが武装集団となることについては別に構いはしない。
自分のグループが強力になればなるほど、私の目標へと近づくのだから。
池田さんの『瑞樹ちゃん、ご飯よ~~』という声が聞こえてきたので、私は汗まみれの戦闘服を脱ぎ、もう一つの戦闘服をクローゼットから取り出して、すぐに着替える。
着替えた私は、自分の部屋を出て、中央部を通り、食堂と書かれたプレートがかかっている、ドアの前に立った。
黒川瑞樹、生活拠点『MOVEMENT』




