表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/47

Episode 4緑グループ会議

「え~まず紹介するのは、私の後ろに立っている黒川瑞樹ちゃんでーす。はい拍手して」

パチパチパチパチと拍手の音が、会議室の中で響く。

私に視線が集まるのを感じたが、あまり気にしないように努める。

「彼女は緑チームのメンバーだから、よろしくね」

学校の先生が仲良くしてあげて、というのを味わっている気分だ、私は常に見ている方だったから、何も感じなかったけれど、結構精神的にくるものがある。

「グループリーダー、それはこの子も戦力に換算していいってことですか?」

「東坂さん。グループリーダーじゃなくて、池田さんって呼んで?・・・それに戦うかどうかは瑞樹ちゃん次第でしょ」

強面の男性が私のことを戦力に換算していいのか?と聞いたということは、戦力になっていない人もいるのだろう。

それは当然だ。異能を使えるからと言って、精神が成長したわけではない。精神が幼稚な人間が、いきなり人殺しをしろと言われて、そう簡単にできるものでもない。

むしろできたなら、それはサイコパスなどの精神疾患を患う可能性が高い。


「瑞樹ちゃんどう?・・・できないならできないって言ってもいいんだよ?」

池田さんが不安そうな目で私を見るが、私はもちろんできる。両親を助けるには、人を殺すことだって厭わないつもりだ。どれだけこの手を汚したって、両親だけは助けてみせる。

「私はできますよ、ただ死ぬつもりは毛頭ありませんがね!」

強面の男性に向かって、その言葉を放った。池田さん以外は感心したような目を向けてくるが、池田さんは何か同情するような目線を送ってきた。


「続きまして、戦闘ができる人数と、戦闘ができない人数について纏めました。お手元のタブレットをご覧ください」

会議室にいる人の中でも比較的若い青年が立ち上がり、説明していく。私の手元にはタブレットはないため、池田さんのタブレットを盗み見る。

「現在の状況ですが、戦闘員は先ほど来た黒川さんも含めて、40人弱というところです。残りの約20人はサポートをしてもらうことにします。サポートとは具体的に・・・・・・」

話が続いていたが、私はそのまま考える。

戦闘できる人間と言っても、私のように攻撃に特化していたり、あるい防御に特化していたりする人はあまりいないだろう。

異能は人によってランダムだが、それが強いかどうかは人次第だろう。軍人なんて1人だけで1つのグループを勝ちにも負けにも導くことだってできるはずだ。


「現在、ポイントを使って個々人の武器を交換しているが、それだけでは足りないどころか、ポイントが枯渇し、食料が確保できない状態に陥るかもしれない、もちろんそうなならないようにするが、異能が強力ではない戦闘員が敗北し、死亡しない事を目指すならば、武器の確保が急務だ!」

いつの間にか青年から、強面の東坂さんに話す人が入れ替わっていた。

考え込んでいて、周囲のことが意識から外れてしまうのは、私の悪い癖だ。もちろん、治すつもりは一切ない。

「いや、食料が足りなくなることに比べたら、武器はあとでもいいと思う。まだ大規模な戦闘が始まったわけじゃないんだし、食料の確保の方が重要だと思う」

会議というのは意見のぶつかり合いだ。ぶつかり合う意見は多数決などで決めるのが日本では一般的だが、外国ではコイントスなども使われている場合もある、が結局はどちらかが我慢しなければならないのだ。

どちらかが意見を押し通せば不公平だともう一方が言い、逆に意見が決まらなければ、どっちかが折れる。そして世界には必ず泣きを見る人間が出るのだ。

公平だとは言いながらも、結局不公平になるのは、人間社会の真理だと、私は思う。


「・・・それじゃあ瑞樹ちゃんに、武器を造ってもらいましょうよ」

ここで池田さんが余計なことを言わなければ、2人の意見は平行線のまま進んでいき、会議室には険悪な空気が流れることとなっただろう。

しかし、一度切り替わった空気は、そう簡単には元に戻りはしない。

みるみるうちに、私にまたもや視線が集まる、ある人は興味深そうに、またある人は胡散臭い物を見るような目で私を見る。

「ほら、瑞樹ちゃんって、武器が造れるのよね?あれ、違ったかしら?」

私が真顔でいるからか、自分の記憶をも疑いだす池田さん。別に池田さんは認知症ではないのだが、このままシラを切ると池田さんが可哀そうなので、仕方なく頷いてあげる。


「やっぱり・・・ねぇちょっと出してみてよ」

衆人監視の下やれと?、と怒声を放ちそうになったが、これでも私のグループのグループリーダー、私の異能がバレるのは嫌だが、仕方なく従ってあげることにした。

私は候補の中からアサルトライフルを生み出すことにした、候補の中と言っても、拳銃とアサルトライフルだけなのだが、拳銃ではカッコよく見えないだろうし、何よりも落胆される可能性がある。

見栄というのは重要だ、私のは見栄ではないが、勝手に自己完結されて、勝手に落胆されるよりは幾分かマシだろう。

イメージするのはM4A1、俗に何々とも言われるそうだが、そちらは別に、イメージに組み込まなくてもいい。

アサルトライフルであればスカーという銃の方が有名らしいが、どっちもどっちだろう。どんぐりの背比べ。という奴だ。


黒い重厚なフォルム、予備マガジンは無し、スコープも無し、オート切り替え可能、総重量1.2キログラム・・・・・・


時間をかけたからか、いつも以上に精巧な銃が出てきた。艶消しのブラックの色は、会議室の少し暗がりの中だと、目を離せば消えてしまいそうだ。

ウっとくる重みに耐えた私は、会議室の人たちの目に、希望の光が宿ったのを見た。

パチパチパチパチパチパチ、私の紹介のときからの2度目の拍手だが、今度は大きさも長さもけた違いに大きい。

そういう観点から見れば、人間というのはいかにたやすい生き物なのだろうか。だまされやすく、だましやすい、私は別に騙したわけではないが、この人たちに銃を生み出すのには、少しの時間がかかると思わせることができた。

情報というのは鮮度と正確さが重要だ、この中から裏切り者が出たとしても、私が狙って出したニセの情報を掴むことになるだろう。

いわば、私が私で銃弾が切れれば攻撃するチャンスが来ますよ。と言ったのと同じなのだ。裏切者が出るかは分からないが、できるだけ用心する必要があるだろう。


黒川瑞樹、生活拠点『precaution』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ