Episode 2緑グループグループリーダー
私は木々の中を颯爽と走り抜けていく。
もちろん私は森や林の中を走ったことはないし、それに類似した体験もしたことはない。
しかし、それでも世の中に得意不得意があるように、私は森の中を走るのは得意なようだ。
木が生えている場所を確認し、危険度を判断する。危険度がより少ないところを通り、目的地に向かっていく。
走りながらそれらが行えれば、貴方も一流の森林ランナーになれるはずだ。
数分後、私は無事に物品供給塔と思わしき塔にたどり着いた。
しかし、私は『しくじった』と思った。
物品供給塔には私の仲間の緑グループがいる、しかし私はそこの誰とも会ったことがない。
幸いまだ朝4時半頃なので、寝ているとは思うが、寝ていなかった場合、私は他の色のグループと思われ攻撃される可能性がある。
慎重に近づいて行く、誰かの話し声が聞こえた。
最悪だーと嘆きつつも、落ちている葉っぱに身を潜め、四つん這いになりながら、物品供給塔に徐々に徐々にと近づいていく。
幸い葉っぱがカモフラージュになっていて、誰も気が付かない。
「何してるの・・・おっちょこちょいなのかしら?」
とそんな声が聞こえてきたが、私には関係ないとばかりにそのまま進んでいく。
「ねぇ聞いてるー?・・・全然聞く耳持たないじゃない」
誰か話を聞いていない人間などいるのだろうか、グループならば人の話を聞き自分で行動しなければならないのに・・・
「ちょっとお仕置きしなきゃダメみたいね、痛いかもしれないけど、グループリーダーだったらこれぐらい、いいわよね?」
何かの悪寒が体中を走り回った、私はすぐに葉っぱから飛び出し、近くにある木に身を潜める。
「あらようやく出てきたのね、緑グループ最後の1人、黒川瑞樹ちゃん?」
目の前にいたのは、妙齢の女性40代とはいかないものの、下手したら50代ぐらいにも見える60代の女性だ。
「なんで私に気づいたの?それになんで私の名前を?」
私は言葉を強くして、その女性に聞く。
下手な答えだった場合、麻酔弾ぐらいは撃つつもりだ。
「何でって?・・・簡単よ。シンク?だったかしら、このバトルロワイアルの主催者、その人から連絡があって、すぐに物品供給塔に行くだろうから、物品供給塔の前で待ってればいいって」
悔しい、何が悔しいかと言ったら、シンクに動きが読まれているのが物凄く悔しい。
「それに監視塔からも連絡あったしね、緑グループの一人が奥の方にいるって」
監視塔というのはやっぱり、自陣のグループメンバーも確認できるのか・・・・・・それに、これでいくつかの疑問も氷どけした。
ICチップを着けるのは、位置を確認するのではなく、その時々の状況をシンクが知るためだからだ。別に知らなくても問題はないはずだが、また何かの事情があるんだろう。
「・・・・・・ちょっと聞いてる?瑞樹ちゃーん?」
考え込んでいたからか、女性の言葉が耳を左から右へ通り抜けていたらしい。
「いえ、聞いていませんでした・・・」
「ちょっと、おばさんの話も聞きなさい。ぶつぶつ独り言を言ってるだけじゃ、嫌われちゃうぞ?」
そんなにぶつぶつ独り言を言っているつもりはなかったのだが・・・・・・それに嫌われちゃうぞは余計だ。
それに今の会話でどんどん時間が過ぎて行っている、物品供給塔に行かなければならないのだが・・・・・・
「・・・・・・早く物品供給塔で、ICチップを手に入れないと・・・」
「ん?ICチップだったら、もう身に着けてるけど?」
いつの間に!ICチップを付ける時間なんて与えなかったはずだけど?
「それじゃあ自己紹介しましょ?・・・私は池田葉子、趣味は裁縫かな?好きな食べ物はお寿司で、シンクちゃんにグループリーダっていうのをやらせてもらっているわ!」
快活な女性だ、しかもいちいち小うるさい、こんなのがグループリーダー?・・・冗談じゃない。
しかも何故か私が気づかないうちに、勝手にICチップ着けられてるし・・・・・・しかも名前なら知っているはずだが・・・
「・・・黒川瑞樹です・・・・・・」
別にここで自己紹介など行わなくても・・・なんでこんな人の目線が集まるところで・・・
「瑞樹ちゃんそれじゃあダメ。趣味とか好きな物とか言わないと、それじゃあ名前紹介じゃない!それにもっとハキハキ喋らないと」
面倒だ、とても面倒だ。こんなグループリーダーとやっていける自信がない・・・・・・しかし・・・ハァ
私は頭を押さえ、無難な自己紹介を考える。
「・・・黒川瑞樹です、高校二年生です。趣味は・・・読書?で、好きな物は別に・・・」
よし、個人情報をほぼ漏らさない最適な自己紹介、最高の出来だ。しかし池田さん的には満足が行かなかったようで・・・
「もっとハキハキ、できれば異能も教えてくれると助かるんだけど、どう?」
異能も教えろと?・・・ふざけるな!と言いかけたが、もちろん堪える。
「そちらの異能も教えてくれるならいいですよ?もちろんそっちが先に」
異能は私の生命線だ、おいそれと教えるわけにはいかない。交換条件を持ちかけたが、乗ってくるか?
「いいわよ。私の異能は【自然】って言って、木とか花とかを動かせるの、もちろん地面も動かせるわ」
シンクの言っていたことから考えると、操作系という奴だろうか?
葉っぱなどが宙に浮かんでいくのを見て、池田さんが嘘を言っていないことを確認した。
だが、1st seasonのバトルフィールドには植物などはなかったはずだ、ならどうやって勝利したんだろう?
「1st seasonはどうやって勝利したんですか?」
「ファーストシーズン?が何かは良く分からないけど、この服とかって麻でできてるのよ、麻は植物だから、このカーディガンを糸にして、グルグル巻きにしたら勝利ってことになったの、もうカーディガンに戻らないかな・・・と思っていたら簡単に戻ったから良かったわ・・・で、あなたは?」
ちょくちょく話が逸れるが、内容は大体分かった。しかし植物などを操れるのだったら、罠などを造り放題だな、とも思った。
私も自分の異能について答える。
「私の異能は【武器創造】です。文字通り銃とかを生み出せます。」
そして私は拳銃とナイフを戦闘服から取り出す、嘘はしっかりと吐いたが、私の心が痛むことはない。
「分かったわ、それじゃあ緑グループの生活拠点を案内してあげる。私の後ろに付いてきて!」
私は緑グループグループリーダーの池田さんに、生活拠点を案内してもらうこととなった。全く嬉しくない。
黒川瑞樹、緑グループフィールド物品供給塔前、『TALKING』




