Episode 1 2nd seasonの始まり
休憩場所に届いた荷物には、毎回一つの封筒が入っていた。
封筒には2nd seasonについてという見出しがついていて、私は中に入っていた紙を何度も繰り返し読んだ。
内容には特におかしなところはなかったものの、わざわざマーカーペンを届けてもらって確かめたことがある。(マーカーペンにも同封で封筒が届いた)
そして今、私の戦闘服のポケットの中にも封筒の中身が入っているため、暇つぶしに一応読んでおく。
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2nd seasonについて
既に2nd seasonが始まってしまっています、2nd season内では、
今後一切のルール説明を行いません。よって、一応説明用紙を同封し
ておきます。
2nd seasonでは、赤、青、黄、緑の4グループに強制的に分かれて
もらいます。
もちろん分けるのを決めるのは、私シンクです。
そしてグループのメンバーと協力して、勝利を目指してもらいます。
赤は岩場、青は廃工場、黄は洞窟、緑は森林のフィールドを自陣とし
て、戦ってもらいます。
フィールドには、監視塔と、物品供給塔と、生活拠点の3つの建物が
設置されています。
それぞれの建物に自陣のメンバーが常に存在していることで、12時
間ごとにそれぞれの建物ごとの、ポイントがそのグループに手に入る
こととなります。
ポイントは使用して、物品と交換してもいいですが、500ポイントを
貯めて勝利をすることも可能です。
監視塔は1ポイント、物品供給塔も1ポイント、生活拠点は3ポイン
トで、他のグループから建物を奪い、奪った建物分のポイントを強奪
することもできます。
フィールドの中央には中央塔があり、中央塔のポイントは10ポイン
トとなっています。
そして皆さんには常にICチップを着けてもらいます、腕輪型の物
や、チョーカー型の物など、種類は豊富です。物品供給塔に行けば
何種類か置いてあります。
今この時(バトルフィールドに入ってから)5時間以内に着用が認め
られなかった場合、ルール違反として処分します。
ICチップを勝手に3分以上外した場合も、ルール違反として処分
します。
2nd seasonの勝利条件は、前文に記載されている500ポイントを
貯めるか、他のグループのリーダを殺すことです。
他のグループのリーダーを殺した場合、殺されたグループは全員死
にますので、グループリーダを殺すのはギリギリの状況になった場
合のみにしてください。
では2nd seasonの御武運をお祈りしております。
Byシンク
P.S.瑞樹ちゃんはグループ緑だよ(*'ω'*)
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文面はすべて同じため、コピーした感が大分強かった。というか(*'ω'*)はなんだ、顔文字なんて今どき学生も使わない。
分かっていることと、分かっていないことを整理しよう。
分かっているのは、まず2nd seasonは4つのグループに分けられるということだ。
235に私も入れて236人が、4つのグループに割り振られる。単純計算で1つのグループには約60人いるということだ。
森林というのは、この戦闘服の迷彩が活かされる可能性が高いのでありがたいのだが、洞窟と廃工場というのにも少し惹かれてしまう。
分かっていないのは物品供給塔と、監視塔だ。
物品供給塔というのは何となく、あの何でも宅配便の匂いがするのだが、監視塔は全く分からない。ただ上から見て監視するだけなのか、それともICチップが何かの役割を果たすのか?
いや、ICチップであれば何度も体に埋め込むチャンスはあった。それではなくICチップを着けるよう命令するのだから、ICチップを勝手に外すことを望んでいるような気がする。
グループリーダーについてもよく分からない、リーダーを選ぶのはシンク?それともグループのメンバー?今の状況では何も分からない。
それに勝利条件も何かあやふやだ、500ポイントを貯める、グループリーダを殺す以外にも方法があるような説明だ。
全グループが戦い合わず500ポイントを貯めれば、全グループが勝利するような、甘いバトルロワイアルではないことを私は知っている。
シンクと会話したことで、彼女の性格はある程度は分かっているつもりだ。
まぁおいおい知っていけばいいだろう。この2nd seasonは、最大で100日間は続くのだから。
私は予定通りの森林の、しかし予定とは違う暗闇の中でそう思った。
暗闇の中というのは、休憩場所の扉からから出て来たら、未だ太陽が昇っておらず。夜中の3時頃だったからだ。
いや、太陽が昇ってないというのは正確ではない。今私の頭上に浮かんでいる上弦の月も、キラキラと輝く星々も、全て現実の夜空を映像として映し出されたものでしかない。
私が倒れかかっているこの広葉樹は本当にあるようだが、この森林のせいで月の明かりが地面を照らすことがないのは、まったくの皮肉でしかない。
暗闇の中の森林を歩くという考えは私にはない、これが人の手で作られた森林であっても、自然にできた森林であってもそれは同じことだ。
私が見るに、人の手で作られてから、数年置いたようなこの森林は、昼でも迷えば大人でも迷子になるだろう。
(迷子なのに大人・・・プフフと笑ってしまったのは、私の生涯の秘密だ)
明るくなるのを待っている私は、暇つぶしに、できるだけ物音を立てないようにして、トレーニングを始めた。
腹筋マシーンは何故か持ってこれなかったので、1人で腹筋したが、機械とは比べ物にならないほど大変だった。
数時間後、バトルフィールドに朝日が昇った、そしてその光景は森林の中であってもだからこそ幻想的で美しかった。しかし映像だと分かっている私の心は冷めきっていた。
私は朝日によって望めるようになった、2つの塔を目指して走っていく。
最初の頃は木の根っこに転びそうになったりしたが、途中からはマシンで走るのと同じぐらいのスピードで走ることができた。
しかし黒川瑞樹には、一度生活拠点へ行って、そこで紹介を受けてから、物品供給塔に行くという考えは存在しなかった。
黒川瑞樹、2nd season『START』




