第5話 まだ先は長い部員集め
マシンデバイス部に関しては三崎が改めて話をしにいくという事で俺は坂神真美と話をする為に嶺衣奈と共に彼女が放課後にいつもいるという場所へ向かった。
廿六木女学園に通う子達の多くは家元を離れ寮生活を送っている者が多く坂神もその一人だそうだ。
なお、学園寮で生活をしているほとんどは良い家の娘なのだが彼女は高等部を中途編入で入ってきているかなりの変わり者であるらしい。
実家は中流一般家庭だとデータで見たが、どうやら彼女の母方の祖父母が実業家でかなりの金持ちらしい。途中編入してきた理由の記載に関して詳細は無かったがかなり強引な方法で編入させられたような記述があったのは記憶している。家庭環境か何かの問題でもあったのだろう……。学費関連でも色々と妙な記載があったし。
嶺衣奈が言うには『繊細な子』らしい。
廿六木の家の娘が『繊細』では生きていけないだろうな。と、俺は思いつつ嶺衣奈の後を付いていく。
学園の敷地はかなりの広さがあり、小中高と校舎があり体育館や講堂なども複数存在する。講堂にはカフェや自習ルーム、学園経営の文具店などもありちょっとした商業スペースになっている。
「この学園自体がひとつの町みたいな雰囲気だな」
「確かにそうですね。学園都市とも呼ばれてますから」
と、彼女は淡々と言う。
そして、カフェの中に入っていく。
「お茶でもするのか?」
そう俺が言うと彼女はあからさまに冷たい視線を向ける。
「何を言ってるのかしら? あなたが案内しろというから案内してあげただけなのだけど……」
「確かに坂神がいつもいる場所に案内して欲しいと言ったな……にしても、カフェでお茶でもしてるのか?」
と、言うと彼女は『何を言っているの?』という顔をする。
「はぁ、説明するのが面倒なので……」
彼女はそう言って近くの店員に声を掛けて坂神真美がいるかどうかの確認といたら読んで欲しいと伝えていた。
「なるほど、ここでバイトしているのか」
「そうよ。学園はバイト禁止だけど、学内施設に関しては学生のバイトを認めているのです。ただ、バイト代はたいした額では無いそうですわ。一応、一部学費の免除対象だとかなんとか……」
「なるほどな……って、いうほど学費に困っている生徒がいるのか?」
「さぁ? 私は知りませんわ。そもそも他人にあまり興味がないですもの……」
彼女はどこか寂しそうな表情をしながらそう言った。
あの家に生まれたのだから仕方ない、と俺は思いつつもそこに現れた少女に目をやる。
「驚いたな……」
と、思わず口に出してしまう。
データで見ていた映像と比べ、まさに美少女という言葉がよく似合う娘で特に流れるような黒髪は清楚なお嬢様にしか見えない。
まぁ、ここにいる嶺衣奈も負けてはいないレベルの美少女なのだが嶺衣奈の場合は日本人形のような可愛らしさと言った感じだろう。
「廿六木さんがワザワザ私に会いに来るなんて……何かあったの?」
彼女が放った言葉はどこまでも普通ではあったのだが、なんというか……とても冷たく感じる。
「私は特に用事は無いのだけど、どうしても貴女と話をしたいという人がいたから案内しただです」
彼女の言葉もまた常にどこかとても冷たいモノを含んでいる。
たぶんだが、彼女達はお互いに特に興味が無いということなのだろう。
「この人が私に用事? 私、特に男の人と話す用事なんてないんですけど?」
「君に無くても、俺にはあるんだよ……」
まさに訝しげという表情で俺のことを見る。
どうにも俺の周りにはこういった冷たい視線を放つ女があまりにも多い気がする。
現在、部に在籍しているメンバーでいえば三崎が特殊なのかもしれない。
「あの、まだバイト中だから手短にお願いしたいんですけど……」
「ああ、すまない。君は模擬戦闘競技部に所属していると記憶しているのだが……」
俺の言葉を聞いて嶺衣奈の方をチラリと見る。
嶺衣奈の表情は変わらないまま、あまり興味を示してはいない。
「一応、在籍は……」
と、彼女が言ったところで嶺衣奈が口を挟んでくる。
「やっぱり気が進みませんわ……彼女は私が内申の為に部に在籍しておいた方がいいって無理矢理に入部させただけなのですから、興味の無い人に無理させるのは私的にやめて頂きたいところです」
嶺衣奈は力強い瞳で俺にそう言った。
「内申の為?」
「ええ、そうよ。基本的にクラブや委員会活動に参加している、してないで内申の評価がかなり変わるっていうよく分からない伝統があるです。この学園には……」
「今時珍しいな……そんなの百年以上前に無くなったものだと思っていたよ」
と、いうかそんな面倒な決まりを作ったのはアイツだな……と、俺は脳内である男の影を思い浮かべつつ小さな溜め息を吐く。
「なるほど。ちなみに坂神は俺の事を知っているか?」
「ええ、全校集会で登段されてた……あ、部活の監督……」
「そうだ。ちなみに色々と困った事情があってね……」
「廃部にでもなるんですか?」
彼女は不思議そうな顔をしてそう言った。
少し、天然なところがあるのだと俺は思わずほくそ笑む。
「いやいや、そうじゃない。まぁ、もしかしたらそういう結果になる可能性もあるんだが……理事長の方から一年で団体競技のインターハイで優勝しろと命令されてるもんでな」
俺がそう言うと彼女は『いったい、何を言っているの?』と、言わんばかりの表情を浮かべた。
佳那「そういえば、嶺衣奈ちゃん」
嶺衣奈「どうしたの、佳那?」
佳那「如月選手って、どこにいたの?」
えっ!?(´・ω・) (・ω・´)え?