三次元にはヒロインなんて存在しない
高校一年生になり、一か月・・・・
「ねぇ。とも君、好きだよ。」
「俺もだよ。しおり。」
そんな会話が俺の耳に飛び込んできた
そのカップルは人目も気にせず、白昼堂々とイチャついていた
「何なんだあの二人は!あんなセリフは二次元キャラが言うから良いわけで、断じて現実のカップルが言っていい言葉ではない!!」
「おー、また三次元を否定してんのか。和弥。」
「なんだよ!誠別にいいじゃないか!」
「いや、別にいいんだけどね・・教室でそういう事言うから俺以外の友達ができねーんじゃねーか。」
誠は呆れた顔を浮かべる
「へっ、別にいいもんねーだ。俺には二次元がある!」
和弥は拳を高く振り上げ言い放った。
「大体、三次元のどこがいいんだか・・」
和弥がネチネチと三次元を否定していると
「おい!和弥外見てみろって!四季才美がいるぞぉーー!」
誠が顔を窓に押し当てながら言った
「それにな、三次元にはヒロインが・・ん?、なんだ誠?四季才美ってのは。」
疑問に思った和弥が誠に尋ねる
「はぁ?お前知らないのか?うちの学校の四人の有名人を!!」
和弥が首をかしげる
「まず、一番右の明るい茶色いミディアムヘアの子が桜庭春乃。身長150センチ
胸はまぁまぁだが、人当たりも良いし誰にでも優しい性格、それにどこかほのぼのとさせる雰囲気で、四季才美の中でも人気が高い。」
誠が暑苦しいくらいに熱弁を始める。それは、和弥の三次元否定なんか霞むほどである。
「次は、水色の短い髪の子。小麦色の肌に、白い八重歯を見せる、青空夏海。男勝りの性格と、誰にでも壁を作らない喋り方、時々見えるシャツからの水着焼けで、数々の男から人気だ」
「へーそうですか。」
和弥は誠の話をテキトーに聞き流す。
「次は、身長130センチ、白い髪の、秋野紅葉。幼い顔立ちと、恥ずかしがりやな、性格から、一部の男子に人気だとか。」
「へーロリっ子ねー。」
「次は、黒い髪を腰まで伸ばし、男子にも女子にも、突っぱねた性格だが、男女ともに人気が高い、
白雪真冬」
「へーまるで、アニメやゲームみたいだな。」
和弥は、窓に肘をつき言った。
「そうだろぉ?お前も少し興味がわいたんじゃないか?」
「かもなー。さしずめお前は、ゲームやアニメに出てくる情報提供だけが取り柄の主人公の親友キャラだな。」
「おいおい、それはひでーな。」
「お前なんてそんなもんだろ」
そんな会話をしていると始業のチャイムが鳴る。
二人はそそくさと自分の席についた。
-放課後-
高校生として一日の義務を終えた和弥は、帰り支度を済ませ教室を出ようとする。
と、
「おーい、和弥一緒に帰ろうぜー」
誠が和弥を呼び止める。
「じゃあ早く来いよ。」
急かす和弥、それと同時に帰り支度を終わらす誠。
「わりぃ」
軽く謝る誠。
教室を出て下足箱まで、向かう二人。
下足箱に着く直前、
「やべ、忘れ物したわ。ちょっと取りに行ってくるわ」
「分かった。早く来いよ。」
「おーけー」
誠にカバンを預け、そそくさと教室に向かう
和弥たちの教室は下足箱から真反対の位置。
普段は部活棟を抜け、教室に向かうが、午後5時以降は部活棟を通り抜けできない。
時刻は4時58分。
「まだ、大丈夫だな。」
部活棟を抜ければ教室までは、そう時間はかからない。
和弥は部活棟を抜け教室付き忘れ物を取り教室を出る。
と、その時。
5時を知らせるチャイムが誰もいない教室に響き渡る。
「5時か、まぁ、鳴ったばっかだし、通ってもいいだろう。」
和弥が部活棟を通っていると、向かい側から教師が歩いてきた。
「やべっ、何処か隠れねぇーと。」
そう言うと和弥は、今は、使われていない教室へ逃げ込んだ。
ドアを少し開け教師が通りすぎたのを確認し、和弥は安堵のため息をつく。
「危なかったー」
和弥が、教室から出ようと立ち上がりドアに手をかけた時、
「誰?」
和弥はビクっとし、声がした方を振り返る。
「っは」
和弥は思わず声が出る。
そこには朝、誠が言っていた学校の四人の有名人。四季才美がいた。