プロローグ
「グギャァアア!!」
燃えるような真っ赤な鬣を靡かせ炎獣ファイヤーパンサーを前にPT四人はその咆哮に耳を塞いで相対していた。
「そろそろ疲労も限界に近い一発逆転を狙うぞ!」
そう言って俺、成平令和はダイスを振る。
「賽は投げられた! 【ダイス】いい出目出ろよ!!」
令和のユニークスキル【ダイス】は出目によって効果が異なる一発逆転スキルである。
設定は予め決めることが出来るが、プラスの効果を決めると裏側の目に対応するマイナス効果が自動で割り振られる。当然プラスの効果が高ければ、低い目が出たときにきつくなる。
今回の設定は六面ダイス1個、その出目によって一定時間効果が現れる。
1.敵が60秒間無敵状態になる
2.敵の攻撃力が60秒間2倍になる。
3.敵の防御力が60秒間2倍になる。
4.自分の防御力が60秒間2倍になる。
5.自分の攻撃力が60秒間2倍になる。
6.PTの攻撃力が60秒間2倍になる。
勢いよく転がりサイコロが転がる。目は六!
「よし、最高の目が出た。みんな畳みかけるぞ!」
「「「おお!」」」
掛け声も終わらないタイミングでファイヤーパンサーは咆哮の後、口から燃え盛る火を噴きだす。
「ウォーターカーテン」
PTメンバーのカケルがすかさず水の煙幕を張り炎を軽減させる。
炎が消え蒸気が立ち込める霧の中を俺と虎の獣人アルタイルが突入して敵に接近する。
「ウインドカッター!」
令和の手から数本の風の刃が敵に向かって飛んでいく。最後の刃の着弾と同時にアルタイルの黒光りする大型の槍が右の脇腹に突き刺さる、
「食らえ!!タイガーストライク!!」
横腹に大ダメージを受けたファイヤーパンサーの叫び声が終わるのも間もなく俺のサーベルがその首を目掛けて振り下ろされる。【ダイス】の効果によって攻撃力が二倍になっているその斬撃はファイヤーパンサーの首を両断させることに成功した。
「やったぞ!!俺達が一番だ!!」
令和はドロップアイテムの大きな炎の魔石を手にして魔導瞳にピースを送る。
普通の会社員として普通に暮らしていたおっさんが、なぜ魔法を放ちダンジョンで戦っていたのかと言うのは二か月前にさかのぼる。