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二、ゲーム

「ここは……どこだ?」

 目覚めざめてみるとそこは見事なまでの暗闇くらやみだった。一寸先いっすんさきは闇どころか自分の体すら見えない。

 (これは……誘拐?いや夢だな。)

 現実とするにはあまりに暗すぎる。しかも暗順応あんじゅんのうも起こらない。突然眠気とつぜんねむけに襲われたことも含めて恐らく夢とみてまぁ間違いないだろう。ゲームできたえられた情報収集力と判断力によってそう判断する。

 「最近徹夜(てつや)してないんだけどなぁ。……」

 昼間の寝落ちにそうつぶやいたはいいものの真っ暗闇でどうしたものか。とりあえずほほをつねってみる。

 ――いってぇなぁ、おい。

 そんなことをしているとほんの少し視界が明るくなった。光源を探して振り返ると一つの炎が背後に灯っていた。青くうすい炎。だがお陰でその炎が台座の上にあること,そしてその台座が奥にもう1つあることが分かった。

 「ハイハイそっちに進めばいいんでしょ。」

 進む先を炎が先導せんどうしてくれる。RPGの定番ネタだな。

 案の定、2つ目の台座に近付き、初めの炎の光が弱まってきた頃、2つ目の台座にまた青く薄い炎が灯る。

 ――ド定番すぎて見飽きたよ、その演出。

 そうやって次々と灯る炎に沿って進むこと100m程だろうか前方で炎が円を描くように灯り祭壇さいだんのようなものが現れる。祭壇自体が地面より数段高い位置にあって、周りには大きな板が等間隔とうかんかくで浮いている。そのどれもが綺麗きれいな一枚板で出来ていて青い炎に照らされ孔雀緑くじゃくみどりに光りその重厚じゅうこうさを演出している。

 「で、次はどうすればいいのさ!」

 ド定番を愚直ぐちょくに行う面白みに欠ける夢に腹が立ってそう叫んでみる。

 「祭壇の前へ。」

 「うおぉ!返事すんのかよ。ってか誰だよ。」

 声は大体40代の男と言ったところだろうか。低くて渋い、聞いたことのない声だ。夢のわりに新しい声を出すとは随分ずいぶんったものだ。周りを見渡すが姿は見えない。

 「私はそうだな……。神,とでも呼んでくれ。」

 フッ。神って(笑)。自分が夢に神を登場させるほど厨二病だったとはと笑みがこぼれる。

 「祭壇の前へ。」

 自称神は繰り返す。

 「あーはいはいわかったわかった。お待たせしてすみませんねー。」

 祭壇へ近付くとその中央に石で作られた右手の手形がある。

 最早ここまで愚直に来られると困ったものだ。だが迷う余地もない。僕はその手形に自分の右手を合わせる。まるで僕の手形のように右手は手形にすっぽりとはまる。

 一瞬人差し指の指先にチクッと痛みが走った気がしたが気のせいだろう。

 「盟約は交わされた。さぁ、ゲームを始めよう。」

 「は?ゲーム?唐突すぎんだろ。どういうことだよ。」

 と外面は落ち着いて見せるが内心ないしん、興奮を抑えるのに精一杯せいいっぱいだ。

 全く我ながらゲームには目がない。ゲームのためならなんだってする。どれだけずるくてもどれだけ危険でも知ったものか。全てはゲームのため、ゲームが出来ればそれでいい。

 「ほら、どんなゲームなんだよ。」

 興奮を抑えきれずそう急かすと目の前に女子2人,男子3人、計5人の顔が浮かび上がる。きょうざめだ。

 その5人は見覚えがある。いや、忘れる訳がない。僕がいじめられるようになるきっかけを作った

5人だ。最早過去のことだが二度とつらおがみたくない5人でもあった。

 「この5人を知っているだろう。」

 「あぁ知ってるs。」「コロセ」

 「……え?今、なんて……」

 「殺せ、と言った。」

 ――は?いや、待て待て。いくら夢とはいえ殺せってどういうことだよ。確かに昔は殺したい程憎んでたけどさ。もう過去の話。忘れようとしてたってのに。

 「君には武器を用意した。5人は既に場所に移してある。丁度そろそろ目が覚める頃だろう。さぁ行きたまえ。」

 神の説明は至極当然しごくとうぜんの様に淡々としていた。

 僕は何かそこに嫌な雰囲気を感じた。

 ――まぁいいか。夢だし。

 「分ぁったよ。やってやろうじゃん、そのゲーム。」

※暗順応・・・簡単に言えば明るい所から暗い所に行った時にちょっとづつ見えるようになるあれです。

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