一、誘い
「あぁ~死にて~。」
毎日のように口にしてきた言葉を今日もまた発する僕は松場木 薊。
俗に言う陰キャというやつの典型的な例だ。体は細く運動は苦手で髪は癖毛、ファッションに興味もなく家から出るのは登校する時くらいなもので、唯一の救いと言えば眼鏡をかけていないことだろうか。
中2でいじめのターゲットになったのを機に友人に逃げられ,彼女にまで捨てられ、人間不信・コミュ障・人見知りを患い現実を捨ててゲームとネットに溺れてはや3年。高校に入学して環境が一新してもその生活が変わることはなく、授業中以外は延々とスマホを弄び友達など無論おらず、クラスで完璧に孤立してた。
だが、それを全く気にも止めず僕はただただ目標も生き甲斐もない堕落した人生を浪費していた。
そんな状況は家に帰っても変わらない。家は何の変哲もない賃貸のアパート。3階建ての2階というなんとも言い難いところだ。
母は専業主婦。という名を借りた半ニート。買い物以外は滅多に家を出ずタブレットでゲームをしながらTVを見て一人で喋ってる。だから家に帰るといつも
「アハハハハ、あっおかえり。」
と、この調子だ。だが僕は母ともう何年も口をきいていない。いや正確には受験のときに“ここ受ける”くらいは言ったかもしれないが日常会話なんてものはない。
おかえりの一言は虚空に吐き出され、居場所を失ったように無へと帰着する。それが我が家の日常だ。
――さて
学校から帰った僕は自室に直行する。この世で唯一僕が安らげる場所、それが「ドアと窓を締め切って誰もいない」自室だ。
さして広くもないし暖房も冷房もなく古いちぢれた絨毯に堅いベッドと、小1から変わらない学習机があるだけの居心地の悪い部屋。その居心地の悪さにはうんざりするが、誰もいない、誰にも何も言われない、誰のことも考えなくていいこの空間程落ち着ける場所もなかった。
――今日もJoutube見るか~
そう思ってワイヤレスイヤホンを起動しながらベッドに寝転ぶ。
「うっ……」
頭がベッドのあまりの堅さを感じるが早いか。
――眠い……。異様なまでに唐突に、かつ猛烈に、それが何故かを考える間もなく眠りに吸い込まれていった。