ミルフィーの冒険 2
僕の名はミルフィー。かわいい黒猫だ。今はケンちゃんのお家に居候をしている。
ケンちゃんたちが住む世界はちょっと物騒だ。もう少しで三回目の世界大戦が始まる。なんでも、頭のおかしいアメリカ大統領が宣戦布告をしたらしい。このままだと核戦争に発展して、世界が滅亡してしまう。人間はおっかないなあ、もう。
朝からケンちゃん家が大騒動だ。お母さんは、核シェルターに逃げましょうよ、と叫ぶ。お父さんは、シェルターに逃げても外が放射能に汚染されたら結局外からの食糧が届かない、意味がない、と怒鳴る。だったらどうするのよ。もう世界は終わりなんだ。物が飛ぶ。夫婦喧嘩。時と場合を考えてほしい。
僕はケンちゃんの部屋に行く。ケンちゃん、携帯型ゲーム機で遊んでいる。勇者が大魔王を倒す有名なRPGだった。
「ミルフィー、来てくれたの」
ケンちゃんが寂しそうに僕に抱き着いてきた。ゲーム機は床に落ちて壊れた。ケンちゃんは怖くてゲームに逃避していたみたいだ。僕はケンちゃんの頬を舐める。大丈夫だよ。安心して。ペロペロ。
「ねえ、死んだらどうなるの。みんなどうなるの」
死んだらリセットされて、また新しいプログラムを植え付けられて、生まれ変わるんだよ、だから安心してよ、と言おうと思ったけど、あいにく、人間の言葉は喋れない。
怖がりのケンちゃん。僕をギュッと抱きしめる。痛いよ。ケンちゃん。
遠くでまばゆい閃光がひらめいた。核戦争が始まったのだ。ケンちゃんを含めたすべての物が消えた。僕は寂しい。
だから、また違う世界に行く。今度は平和な世界がいいな。