プロローグ
この話は実話です。ノンフィクションです。
2000年6月、そう梅雨前線が九州に到来したころだろうか。当時中一の著者は…というか著者一家は、大きな問題を抱えていた。
母親が外国人(台湾)で母子家庭の一家、著者と4つ下の弟の3人暮らしのこの家庭内ではよくあると言われがちだか、中一の著者が反抗期を迎えていた。小一の頃からの母子家庭だからかなりも苦労もあった。中三までnitendo64がうちの最新家庭ゲームだったし、完全に日本育ちの著者(以下俺)は日本語がたいしてうまくない母親に宿題の相談もできないし、離婚したばっかの頃は、意味もなく俺にあたったりもしていたし、弟にはかなり甘くしていたし、長男は何かと苦労が多い。まぁ保身はこれくらいにしておいて…。
だいたい小六ぐらいの頃かな、身長も母を越し、いつの間にか筋力も付いてきたころだな。当時俺へのしつけ方針はは主に昭和脳の親がありがちな、物を買い与えない、体罰も辞さないだった。まぁ弟には俺の五分の一ぐらいだけどな。その日も何か怒られたんだな、何か忘れあけど…。その時いつものように母は手を振り上げたんだ。俺は目を瞑り両手を前に突き出したんだ。両掌には何か触れた感触と二の腕には俺の認識では軽い力がかかった。その格ゲー時間で30フレーム後、『海のない湘南地区』にある築40年超のボロ借家の砂壁に肉体がぶつかる音がした。ぶつかったのはここまで書けばわかると思うが母だ。俺が目を開けて見た光景は、砂壁にもたれかかり座ってワンワン泣いている今まで『怖い』存在であったの母だ。その後の俺の行動はまったく覚えてないがこの時何かが変わったんだ…。ちなみにこの時母の肋骨にヒビがはいっていた。背中からぶつかって肋骨にヒビがはいることもあるんだね。どうでもいいが。
まぁもともと性格的に合わない二人だ。それからしょっちゅうぶつかり、しばし手が出ることもあった(顔は殴らなかった)。小六の二月頃には児童相談所に相談していたしね。
そしてめぐりめぐって中一の六月。俺すらも『これ以上一緒にいたらこの人を殺してしまう』と思ったころ、児童相談所に保護された。
そこで、児童相談所に初めて行った日から、児童相談所に保護されるまでの流れを説明しよう。
2000年に入ってすぐ俺小六の時、「ツナミのころ」とでも名をつけておこう。母親に連れられ、初めて児童相談所に行った。藤沢の山のほうにある『神奈川県中央児童相談所』だ。
門から入ると車が60台くらい停められそうな広い駐車場の奥に、薄い紫色のタイル貼りの設計者のこだわりを感じられる建物がある。その建物が児童相談所で建物の2、3階には小児科、アレルギー科の病院も併設されている。差別主義者だと思われたくはないが適切な言葉が思いつかないので気を悪くした方にはあらかじめ謝っておくが、こういう施設なので障害者を持った子供が沢山目につく。
児童連れの親子の利用施設の大半が2階病院だ。
しかし、目に着かない場所では、いろいろな相談がされている。15ぐらいの個室があり、親はケースワーカーと呼ばれる役職の職員と話し、子供は、心理と呼ばれる役職の職員といろいろな遊びをしながらカウンセリングをする。実際俺がしたのは、バウムテスト・IQテスト・その他は思い出せないが、きっと心理学に関係することだろう。バウムテストの結果は教えてもらなかったが、テストを受けた小6当時のIQなら書類を覗き見したのでわかるが、今この場では必要ないことなので伏せておくことにしよう。
月1ぐらいで通い始めて四月頃、俺は中学校に入学した。明確な基準はないが、いわゆる思春期の真っ只中の俺は、更に母親に対しての接し方がうまくいかなくなった。母親の性格上、自分に非があっても決して謝ることはしない。これが台湾人の気質なのか?。わかったことは、血の繋がりが無ければ会うことはなかっただろう。
2日に1度はケンカをするようになり、全く俺に意見を聞かない時は、肩を殴ったり、太ももに蹴りを入れることもあった。まだ自分なりに手加減をしていたはわかる。
しかし、六月頃。いつものようにケンカをしていると母親が台所にあった包丁を持ち出して、俺に向けてきた。その時に俺の中で何かが崩れ去った。
初めて母親の顔面を殴った。一発だけ。母親は床に倒れ、ある話を思い出した。
俺の母親は俺を産む前に、脳内出血を起こしている。その時は、オヤジが休みだったから、生命には関わらなかったが、後遺症を残した。具体的な症状は説明しにくいが、日常生活には何も問題ない。元来の性格と相まって、今の母親の性格なのだろう。
床に倒れている母親を見て、ある種の恐怖が湧きあがる。
『いつかこの人を殺してしまう・・・』
その後、母親の脳しんとうを病院で確認し、公衆電話で俺は児童相談所に連絡した。
俺の話を聞いたケースワーカーは、その後母親と話し、俺はその日のうちに児童相談所に保護された。六月の下旬の事だった。
つづく




