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俺がヒトを辞めるまで6

暗闇・・・・目を開いているのか、閉じているのかわからないほど何も無い暗闇・・・どこかで同じような事があったような・・・


俺は・・・死んだのか?


果ての見えない暗闇の世界で何が起きたのか俺は考えた


確か、空から落ちてきた子供を抱えて・・・狂暴化したプーさんに追いかけられて・・・崖っぷちで絶対絶目のピンチになって・・・


そうだ!俺は何をどうしたのかわから無いが、魔術と科学が交差するとき物語が始まる的な電磁的な砲をアレして、心に刻んだ未来さえ置き去りにしてプーさんをソレして・・・


ダメだ!あれは本当に俺がやった事なのか?記憶はあるけど、どうしたらあんなレベル5みたいな事が出来たのか全く思い出せない。


大丈夫だ、冷静にまとめてみようじゃないか、まず・・・どんなに走っても疲れないどころか息切れしませんでした。


今までの俺ではありえないスピードで森を駆け抜けました。


手が変形して大砲みたいになりました。


目にも止まらぬビームがプーさんの上半身を吹っ飛ばしました。


その後プーさんからでた煙みたいな何かを吸い取ってなんかして戻したら生き返りました・・・うん・・・よし!何が起きたかは覚えてるみたいだ。


でもどうやったのか、何をどうしたら手が大砲になるのか?あんな事ができるのか?まったく過程が思い出せない。


今同じ事をしろと言われてもどうしていいのかさっぱりなのだ。


あれはなんだったのか・・・俺はいったいどうなってしまったのか・・・我が身に何が起こっているのだ、古より流れる伝説の血脈が目覚めたのか?

はたまた、超文明から大いなる意思によって選ばれしモノだったのか・・・


なんて事を考えながら、俺は顔のにやにやが止まらなかった。


・・・キタ・・・良くわからないけどキタ!・・・キーーーー!ターーーー!ずっと俺のターーン!!ブルーアイズなんちゃら!


こんな訳の分からない事態に陥っても、俺のラノベ脳はヒートアップをやめない、君が、泣くまで、やめない!


苦節37年、家族からは心配を通り越し呆れられ、いつ家を出て行くのかと遠回しに弟夫妻にチクチク言われ、食事の時も気まずくて自分の部屋に閉じこもり1人寂しく食事をし、邪魔者扱いされるのが嫌で顔を合わせる事も出来ず、アニメの視聴もヘッドホンで音が漏れない様に細心の注意、夜中のトイレはスニーキングミッション。


彼女いない歴は当然のように=年齢!何一つのロマンスの一欠けらも無い。


合コンなんて都市伝説に呼んでもらえるわけがない、そもそも友人と呼べるのは、ラインハルトなんたらやジェットもごもごを名乗る本名を知らない会った事もないネットでのつながりのみ。


同窓会の通知なんて初めから来たことが無いし、学校ではいつも・・・いや!これは辞めておこう、封印せし忌まわしき魔の記憶だ、開いてはいけない地獄の門だ、命に係わる。


そんな俺、現代日本において下から数えた方が早いぐらいのカースト最下層に位置する嫌われ者・・は言い過ぎか!勘違いされやすいこの俺が!


ついに、つーいーにー主人公として覚醒する時が来たのだよ!

異世界!美少女!未知なるパウワー!これこそ俺の望んだエターナルフォースエキセントリックファンタスティックメガフィーーールド!


「・・・あー、失敗したー・・・」


我が意を得たり!これから俺は王道ハーレムイチャイチャ冒険活劇の果てに伝説的な・・


「・・・はーあ、やっちゃったよ、あーあやっちゃったよ・・・」


今日から俺の事は昴では無く昴mark2、もしくはZ昴と呼んでいただこう!

何せ変形できるからね!やり方知らんけどね!


「・もしもーし・・・」


しかし自分で発動できないってことは、命の危険にのみ反応するのか?でも危機っていうほど切羽つまってなかったよな?

何がトリガーとなっているのか分からないが、だがこの力!いつか自在に操ってみせる、後悔しても遅いぜ、もう巻き方を忘れちまったからな、的な!


「・・・・・・気付けボケ!!!」


急にドスの利いた声で叫ばれた俺は、うるさいな~今いいところなんだから邪魔するなよ、と思い声のした方を振り向く。


なんだ?なんかさっきから変な声が聞こえるなとは思っていたが。

そこにはどっかで見たことがあるような光につつまれた神々しい何か?が居た


「このボケナス陰険デブの毛の生えた饅頭が、無視ぶっこいて調子のってんじゃねえぞ!」


ええーいくら無視されてたからってそんなん言います?

なんだこの超絶に口の悪い神々しいなにかは?不思議な既視感を感じながら俺はひいていた。


「せっかく器に適した魂の形してたから俺の駒にしてやろうと思ったのに、迷い込んだ時は肥溜め以下の存在だったゴミが、まさか魔王と繋がって、俺に対抗しようとしていたなんてな・・・」


苛立たしそうに何かは続ける


「全ては貴様と魔王の描いてた通りか?私から器だけかすめ取ろうとしたんだな」


声は小さいが怒りの大きさが声音に込められていた


「しかもフゲスの器にケトニアの泉を注ぐなんてな・・・人間が耐えられるわけがない、その意思を感じ取られただけで、魂もろとも爆散するはずだぞ・・・貴様はなんなんだ、何故存在できている!」


なんかぶつぶつ言ってて正直怖い、なんなんだと言われても正直に

「何かに目覚めた37歳独身メタボリック街道まっしぐら、その名もν昴」

としか言いようがないんだが。


何とかして逃げれないもんかと周りを見渡すが、光に包まれたナニか以外は真っ暗闇の宇宙みたいなところだ、逃げ道は皆無。


「とにかく、毛!貴様はすぐ駆除してやるから骨片一つ残らず消滅しろ」


なにむちゃくちゃな事言ってんだこいつ、しまいにゃ毛かよ!毛に骨片あんのかよ?

などと考えている間に、神々しい何かは光っている指?をこちら向けた。


向けられた指先に光の粒子が収束していく。

あ、これやばいやつだ、死ぬやつだ、本能が危険だと警鐘を鳴らす


(現在剣持昴の魂はファズ空間に囚われてます、回避と同時に脱出を試みますか?)


何だ!また謎の声が頭に響く、だが迷っている暇はない!今はイエスだ!


(了解しました、ディレイ機能解放、臨界超過、起動します)


「毛がなに小細工してんだダボが!塵芥ひとつ残さず消滅しろ」

恐ろしく口の悪い神々しい何かの指?から黒い光が放出される


(超高密度に圧縮されたブラックホールです、触れた瞬間、過去・現在・全ての時間軸からも消滅します)


おっふ!良くわからんがこれ以上ないくらい消滅させられるという事はわかった。

まさかこんなところで死ぬのか?


黒い光が到達する瞬間、圧縮ブラックホールを俺は両手で優しく包んでいた。


何をすればいいか、最適解が俺の頭に流れ込んでくる、いや!頭からあふれてくる!


優しく包んだブラックホールを掌で多いながら、つぶしていく。

回転するブラックホールの地平面、光でさえも到達できない箇所の中心、全ての質量が凝縮された特異点。


小規模の惑星なら造作もなく飲み込んでしまいそうな力の結晶を、俺は両手から吸い上げて違う次元へ回帰させていく。


その力の流れの先をイメージし、神々しい口の悪い何かが形成した世界にヒビを入れるようにする。


(座標固定・時間軸特定・脱出します)


そう謎の声が頭に流れたと思ったら、包んでいたBHに俺の身体は吸い込まれていった。


「まさかそこまでの力を・・・それは貴様のような次元に存在する者に・・・人間が持っていられるものでは無い、貴様はいったい・・・!」


昴が消えた後、静寂の中神々しき邪悪な何かはつぶやいた

『あれは危険だ、この・・・を壊しかねない・・・』






・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「はっ!」

俺は気絶していたのか?なんかとんでもない夢をみていたような感じだが・・・


倦怠感が抜けない頭であたりを見回すと、ぷーさんが穏やかな寝息を立てて鼻ちょうちんを膨らませている。


改めてプーさんの無事を確認できて俺はほっと胸をなでおろして先程起きたことを思い出す。


プーさんを救った力・・・あれはなんだったんだろう?


俺にスーパーパワーが宿った事は嬉しいが、浮かれる前に知っておかなければいけない事がある。


どうしたら同じことが出来るかわからないし、リスクもあるかもしれない・・・疑問は残るが今考えても答えはでない、後で魔王様に相談してみよう。


そういえば、あの少年?少女?の姿が見当たらない。


周りを見渡しても、音もしないし気配も感じない、いったいどこに行ってしまったのだろう?

同じような事がまた起きるかもしれない、早いところ確保して皆の眼に触れないようにしないと。


「おーい、怖くないからでておいでー」


こんな職務質問されるような男に説得力はないかもしれないが、一応優しい声音で語りかけながら周りを散策する。


「いない・・・」

自分がどの程度気絶していたのかわからないが、日の明るさからそんなに時間は経っていないと思うのだが・・・


少年?少女?の事は心配だが、いつまでもここにいるわけにいかない。


すやすやと寝息をたてるプーさんも、本当に無事なのか容態も気になる。

一度魔王様に見てもらわないと不安ではある。


それに結界が張ってあると言っていたから、魔王様ならあの子が何処に行ったか分かるかもしれない、そう思った俺はプーさんを担いで森を後にした。






「ふむ、結界を破って侵入してきた者がいるのは察知していたが、そんなことがあったのか」


俺はその後村に戻ってプーさんを魔王様に見てもらい、無事を確認してから事の顛末を説明した。


魔王様は少しだけ驚いたが、相変わらず美しい顔にちょっとだけ眉間にしわを寄せて何かを考えている、そんな姿も萌えだ。


「並みの人間には入る事はおろか島の存在を感知する事もできないのだけどね、その空から降ってきた子供とは何者なのだろうね」


「とにかくほっとく事もできないが、他の魔物たちだとその子供を襲ってしまうから、探させるわけにもいかないね、昴君、すまないが散策は君にお願いしたい、いいかな?」


「もちろんです、あと、あの森の周辺にはみんな近づかないように知らせてもらっていいですか」


「大丈夫、既にみんなには情報を送ってあるから」


後で聞いたのだが、魔王様はテレパシーみたいなもので、この島の魔物達に情報を伝達できるのだとか、しかし一方通行で送信しかできないらいしい。


「あと魔王様、先程お話したんですが、俺の身体はどうなってしまったのでしょうか?凄い力があるのは嬉しいんですが、自由に使えないみたいだし、何より危険があると怖いんですが・・・」


そうなのだ、万が一力を使うたびに寿命が減るとか、記憶が無くなっていくとか、リスクがあるなら知っておかないと怖すぎるのだが。


「・・・・・・・・もごもご」


ん?魔王様がなにか言っているがよく聞き取れない、なんか冷や汗とかかきながら目が泳いでいる、あやしい。


「君に起きた体の変化なのだが、実はちょっと心あたりが・・・もごもご」


なんか後半よくきこえないのだが?


「?魔王様よく聞こえないのですが、俺はどうなってしまったのでしょうか?」


「もごもごもご・・・」


消え入りそうな声で魔王様はなにか言っている、なんか嫌な予感しかしないのだが。


「魔王様、申し訳ありませんがもちょっと大きい声でお願いします、心当たりがあるんですか?」


そう伝えたら、魔王様は意を決したようにこちらをむいて、説明しだす。


「あのー、実はー、助けたときにー」


なんか日本のギャルみたいな語尾になっているが・・・


「私のー、魔物をー、創造する力でー、昴君のー、欠損した箇所をー、補おうとしたらー、なんかー、すごいキャパシティーのー、魔力とかー、貯蔵できるみたいなー、力がー、昴君にはあってー」


・・・


「バラバラで、もう助かんないのかもって思ってー、それならー、せっかくだからー、無尽蔵にー、私が創造した力をー、吸収できるもんでー」


・・・・・・


「こんな事はじめてでー、調子に乗ってー・・・今までにないぐらいー・・・つめられるだけ力をー・・・注ぎ込んでー・・・身体の欠損した部分はー私の魔物を創造する力でおぎなって改造しちゃった!ごめんなさい!」


・・・・・・・・・


「でも、でも、昴君の器が大きすぎて全部詰め込んでも全然空きがあったのね、それに目覚めても力の片鱗すら感じ取れなかったから、おかしいなーとは思ってたのね、正直どうして急に発動したのかもわからないし、さっき聞いた消滅した魔物を再生したりするような力は見たことも聞いたこともないの」


ドジっ子のようにあたふたしながら説明する魔王様、まあ、萌だ。


「私が知る限りだと昴君の力はこの世界に今まで無かったものだと思うのね」


うん、うんと頷く魔王様をしり目に俺はある結論にたっしていた。


「あのーそれって・・・もしかして・・・」


「はい」


「治してもらうために魔物の力をありっけ俺に注ぎ込んだんですよね」


「はい」


「身体の欠損した部分はー私の魔物を創造する力でおぎなってとおっしゃてましたが、体の損傷って心臓の穴だけではなかったんですか?」


「実はね、あまり知って気持ちのいいものじゃないから言わなかったんだけど、死因は胸を刺されたことによるんだけど、その後昴君はめためたに切り裂かれてね、バラバラになったところを蟲とかにたかられてね、暖かかったのもあるんだけど、発見したときに君半分以上腐りかけてたのね」


・・・


「だから昴君の元の身体は・・・5%くらいかな」


おっふ、衝撃の事実だ、俺ほとんど原型無いじゃん、じゃあなんでイケメンに変えてくれなかったんだろうか・・


「それって、5%以外はもう原型無いって事ですよね」


「・・・はい」


「・・・95%はなんでできてるんでしょうか?」


「ま・も・の、かなー」


・・・・・・・・・


「それって」


「はい」


「俺は限りなく人間じゃないってことですか?」


こくり、そう頷く魔王様の上目使いは天使のようだった。

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